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薄幸ポジションだけど幽閉ルートは断固拒否します  作者: つぶあん
私が薄幸キャラなんて冗談でしょう
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実家に帰らせて下さい

文字問題に関しては、伯母さまに連絡をした所、すぐに手を打ってくれた。

家庭教師を手配してくれるそうだ。

そして王子達との授業に関しては『「自分だけ出来ないのは辛い」とよよっと泣く』方法をメアリから伝授され、なんとか回避した。

それから、幽閉回避に関しても一つの答えを出した。それは『王宮と疎遠になる』である。


ギルの会話問題もおおよそ解消したことだし、シャポーの家に帰っても良い頃だと思う。王族でもない私がこれ以上ここに居ると、ストーリーが前倒しで始まってしまいそうだし、お妃候補にならないとするならば、シャポーの家を建て直して行く必要がある。それこそ、財政的にも世間的にもだ。

そうする為には王宮住まいではなく、家に戻って状況を把握した方が良い。


とは言うものの、4人で遊んでから何故か王子達はよく私の所へやってくる。

ギルは言わずもがな毎朝来ているし、アルバートは空き時間に子供用の本を持って「この本なら読めるかな?」とやってくる。ロバートに至っては「前に見た文字を教えて」と言って図書館へ、半ば強制的に連れて行かれる。

「さすがに恐れ多いんですが」と王妃様に相談したら「皆、妹が出来たみたいで嬉しいのよ」と微笑ましそうに言われてしまった。

その妹を将来幽閉する?と聞きたいけどもまだあと10年程あってその間に何があるかなんてわからない。これ以上、関係性が深くなる前に離れなきゃいけない。



バタンと音を立てて扉を開けると、メアリは半目で眉を顰めた。

「お嬢様、扉はお静かに」

「申し訳ないわ!ねぇメアリ、相談があるの」

「またあれですか『幽閉フラグ』?とか言うものでしょうか」

生まれた時から一緒に居る(らしい)メアリには隠すだけ無駄と、私は自分が本当のロザムンドではないことを早々に白状した。

メアリは信じられないと首を横に振っていたが、私の口調や行動が変わっていることもあり、半分信じてくれている。

「私はいつまで王宮にいるのかしら?」

「特に期限は聞いておりません。お嬢様、帰りたいのですか?」

メアリの言外には「あの家に?」と言うのが感じられる。

「だってここに居たらフラグが!幽閉フラグがいつ立つか気が気でないんだもの!」

そう叫んでからメアリの方を見ると、呆れたように私を見ていた。

メアリの言いたい事もわかっている。あのシャポー家にいるよりもここで過ごした方が、教育的にはずっと良いはずだ。メアリは私が元気になったのはこの環境のお陰と思っているようであるし、第一、あの家では十分な人手もない状況らしい。


「『フラグ』と言うと、第一王子と第二王子ですか。お二人とも確かーー」

「攻略対象よ。アルバートルートに至ってはメイン故に簡単。一筋であれば基本ハッピールートよ」

「でしたらお嬢様はギルフォード王子と一番仲良しさんですから問題ないのでは」

「甘いわね。一筋って言ってもあれよ、彼に出会う前に別キャラに好感度を上げても問題ないの」

私が指を立ててチッチと否定すると、メアリは心底嫌そうに目を吊り上げる。『私のお嬢様の姿でそのような品のないことをなさらないで下さい』と言いたそうだ。私は怒鳴られる前に取り繕った仕草で、腕を組んだ。

「と、ともかく。メインルートだからイベントも多くてすぐに好感度が上がっちゃうの」

「そう言えば、アルバート王子はお兄様らしく、最近よくお嬢様の面倒を見てくれようと色々して手配して下さっていますね」

そうなのだ。本を持ってくるのもそうだし、私の部屋が夕方暗くなるのが早いからといって燭台を増やすように手配してくれたり、勉学以外でやってみたい事はないか?など聞いてくれたりしている。

兄弟達にしているのと同じように、世話を焼こうと気遣っているのがわかる。


「ロバートに至っては、全ルート幽閉よ」

「全部!?幸せはないんですか」

「ないわ。ある意味ヤンデレルートっぽいわね。ハッピーエンドでは兄に反旗を翻したロバートに私も追従して二人で永遠の愛を誓いながら処刑を待つの」

「究極の悲恋ですね」

ロザムンドを使ったハッピールートでのロバートはアルバート王子に王は勤まらないと思っており、王政ではなく共和制にしたいと主張する中々過激思想を持つようになる。冷静キャラが一変して熱い革命家になってしまうのだ。

スタッフよ、何を考えてストーリーを考えたんだ。

「ロバートの方は普通にしてたらルートには入らないし、よっぽどロバートにだけ注力してないと好感度は上がらないけど」

「ロバート王子も......最近よくいらっしゃいますね」

ロバートは文字の中でも特に漢字を気に入ったようで、あれは?これは?と言って色々聞いてくる。そして持って来た物をそのままくれる。果物とか、リボンとか、立派なペンとか。

ちなみに今は革命思想なんて微塵もない。


見つめ合って二人の間に静かな空気が落ちて、どちらともなく息を飲んだ。

「ア、アルバート王子なら別に問題ないんじゃないでしょうか」

「メイン攻略キャラクターだからイベントが多いし、ライバルキャラとの張り合いが多いの。私はそんなのに太刀打ち出来ない」

先日の勉強で気がついたが、ロザムンドとはいえ私はそのバロメーターを全く引き継いでいない。

勉強はできないし、楽器も弾けないし刺繍なんて地獄。今から学んでもきっと、ライバルにはとても敵わないだろう。

「・・・。お嬢様、頑張りましょう!」

「勿論頑張るけど、極力ルートに入らないで余裕を持って生きて行きたい」

暗く落ち込んでそう言った。

メアリもなんとなく私の程度を察してはいるようで、それ以上「努力」とは言わなかった。

「ギルフォード王子であれば、それらは関係ないんですよね?」

「多分。対象じゃないしーーでもギルとだけ居る訳にも行かないし、王宮だと何がきっかけでフラグになるか分からないわ」

「それもそうですねぇ。ーーグーピュル夫人に相談してみましょうか」


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