朝起きて美少女になってたら、実際問題恐怖だと思う
「ええええええーーーー!!!」
豪華な館の中で少女の声が響いた。
私、松佳苗は27歳の日本人喪女ーーだったはずである。
朝になって目を開けていつものように顔を洗って鏡をを見れば、がっつりとした二重に濃紺の瞳、何よりも27歳とは思えないーー言うなれば5歳くらいにしか見えないお人形のような顔が映っていた。
「え、なにこれ?」
思わずそう呟くと、鏡の中の像は自分と同時に動く。
「これ・・・私!?」
まじまじとガラスの中にいる美少女を見れば、どこか見覚えがある。何処だったかな思い出せない・・・やーねぇ年取ると記憶力が下がって・・・ってそうじゃない。なんだこれなんだこれ、あれか、最近よく見る転生ってヤツかな私交通事故とか遭ったりしてないし。
「どーなってるのーー!!」
と本日二回目の絶叫をしたーーところで女性が飛び込んで来たのだった。
まるでホテルの朝食かのような、イングリッシュブレックファースト。半熟スクランブルエッグに脂ののったカリカリベーコン2枚にサラダとトーストをもそもそ食べながら、これは夢、そう夢よ、とつぶやく。どうでも良いがこの朝食美味しいな、卵の半熟具合がそこらのビジホの比じゃないぜ。
とろりとした卵とバターの風味を口一杯に頬張りながら『落ち着け、落ち着くんだ』と言い聞かす。そして思い返すのは慣れ親しんだ自分の顔。
今時珍しい程のばっちりとした一重まぶたに真っ黒な瞳と浅黒い肌。おまけに好きでもない仕事に疲れ果てた女の顔付きと先ほど鏡の中で見た美少女を反芻する。ツヤツヤの長い黒髪に少し血色は悪いけど陶器のような白い肌、濃紺の目とそれを縁取る長い睫毛。ちなみにまじまじと鏡を見て「睫毛って影ができるんだー」と今まで知らなかったことを知れた。
ーーそうじゃなくて、我ながら悲しくなるけど共通点が一個もない。ざっつ平安顔☆という本来の顔と、どこか見覚えのある美少女なんて妄想にしても高望みすぎやしないかい?早く起きなくちゃ遅刻しちゃう、えいままよ!
そう思って持っていたフォークで思いっきりほっぺたを刺した。
「おっお嬢様!?」
先ほど私の叫び声を聞いて飛んで来てくれたメイドさんーーメアリさんが叫ぶ。
「痛っーい!!!!」
「当たり前ではございませんか!今朝はどうしたのです『ロザムンド様』」
メイドさんが心配して駆け寄ってそう言った。『ロザムンド』?あ、あれよゲーム・・・やりにやり込んだあれで聞いたことことあるじゃん。
そうなのだ、私は今朝起きたらロザムンド・シャポー、ゲームキャラクターとなっていたのである。