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10.お客様の中に解決策をお持ちの方はいらっしゃいませんか。

病んでる疑いのある顔の良い兄貴分に、今なら騎士としての忠誠心で済ませてやれるが、そんな立場から逃げるつもりなら、容赦せずに結婚を前提にさらうぞ、と言われた時の対処法を知りたい。


…そんな相談したら、ベッド入って8時間寝てから、顔洗ってもう一回質問文読み直せって言われそうな感じの字面だよね。知ってる。


あれだけやりこんだのに対処法がわかんないのかって?


正直10年も前にやったゲームなんて、よほど繰り返しやり直さないと、割と詳細がふんわりしない?マップのどこに宝箱があったか覚えていても、中身がうろ覚えとかそんな感じで。


特にローエンみたいに原作通りにはなるまい、って安心したキャラって、片っ端から危機感忘れるから余計にだ。


もうコネ作るのにあれこれ突撃したから、登場キャラも大分ふんわりしてきているんだよ。


下手すると、誰が病むのかも忘れかけてるから始末に負えない。


だって王様が普通にいる文化の違いのせいか、個人主義の現代っ子には皆そこそこ様子がおかしく見えるもの。


最近じゃ慣れちゃったけど。なんだったらローエン、関わりのあるひと達の中じゃ一番まともだったのにこうだもの。何も信じられなくならない?


とりあえずどっちもお断りだよ、もしくは帰る手段探しに旅に出るから私の騎士解消でいいよ、って言っちゃダメなのだけはわかる。


曖昧に持ち上げてのお断りで、確実に言質取ってくる兄貴分なのも知ってる。


ではこういう時はどうするか?


「兄貴ー、後ろ後ろ」


「……っ!!」


正解は他力本願である。


ローエン君。余程油断していたのか、足音を忍ばせた相手の接近には気づかなかったらしい。騎士だからねー。荒れた戦場に突っ込む分には強いけど、城下街の平民仕様じゃないとこういう時の索敵が弱い。


ごおん、とローエンの鎧から、寺の鐘でもついたような音がする。脇腹を抑えてその場に膝をついたから、もろに一撃が入ったようだ。気の毒に。


案外病んだおひとってのは、シチュエーションにも執着するようだから、こんなかっこ悪いのを見せた後じゃ、しばらく口説いてくることはないだろう。幸いなことに。


ただ、もうちょっと手の込んだ真似を仕掛けてきそうだから、今のうちに警戒しなければ。


まあ鎧着て槍振れるように体幹鍛えてるから、大したことはないでしょと思ったけど。そのまま立ち上がれないから、そこそこ殺意があったらしい。声も出ない様子である。


…この人ならば無理もない。基本ローエン君とは逆で、感情のままに突っ走るお人だ。


「こぉら!ローエン君!…ちょっと目を離した隙に何やっているんだいお前は」


のんびりしたテンションのトルドー氏によるフレイル…何かえげつない形状の鉄塊がついた棒による一撃である。


何で彼がここにいるのかは知らないけど。とにかく、見た目だけは穏やかな苦労人の、糸目な吟遊詩人がいた。


「うっわ鎧へこんでる。大丈夫兄貴?肋骨いってない?」


「心配しなくていいよ、シャロン。彼は強い子だ。手加減はしたし、きっと明日には治っているさ」


「雑が過ぎない…?」


うん、落ち着いているのは見た目だけね。どちらかというと、騒ぎを収めるよりひっかき回すトラブルメイカーだ。


銀の鎧自体は結構ローエン君の髪と目の色が浮いていたから、作り直す方がむしろいいんだけど。


骨はつくまで時間がかかるし、庇って変な癖がつくと抜けるまでがかかるのが困る。あと下手すると肺まで刺さるからね。あんまりやんちゃはしないでほしい。


助けてもらった身でそんなことは言えないけど、ほんのり顔に出たらしい。今年で30代後半の吟遊詩人が、あからさまにつんつんし始めた。


「悪いけど、シャロンに言われても謝らないよ。いい加減おいたがすぎるんだよ、この青二才は。誰もそこまでを許した覚えはないよ」


「ふふ、うん。そうだね……ありがとうトルドーさん」


まあ不意打ち物理じゃないと、口喧嘩じゃローエン君に負けるお人だからなぁ…。


開幕監禁エンドを免れたのは、確かにこの人のお陰なのでお礼はちゃんと言う。


「……もちろんだシャロン。君のためならば」


そう言って、心底嬉しそうな顔になる。


…………うん、何かさっき久しぶりに幼少期を思い出したから、すっかり忘れていたけれど。今のトルドー氏を見てると、すっごく頭が混乱するね。


何でこの人こうなったんだっけ。やっぱり、あのエアマンドリンの一件からなのは確実である。

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