時間つぶしは、ここに限る
千文字に挑戦してみました。
暇つぶしのたわごとです。
ここは面白い。このハンバーガーショップは面白い。今、僕の二つ横の席に座る客のテーブルの上には……
「ガンプラ」が置かれている。
違うな。
置いてあると書くと、完成したそれを愛でながら、ハンバーガーを頬張っているかのように思われてしまうが、そうではない。
その客はテーブルの上で箱を開け、説明書を広げ、ニッパとヤスリを並べ、細くて黄色い瞬間接着剤を立て、それを組み立てている。時折聞こえる「カシャン」というランナー同士が当たる音と、「パチン」とプラスチックが弾ける音が、ジャズの流れる客の少ない店内に響く。
カフェやファストフード店で「何か」をしている客は普通にいる。ほとんどの客はこの「何か」をしにカフェやファストフード店を訪れていると言っていい。それは読書であったり、パソコンに向かっての仕事であったり、ただの時間潰しや雨宿り、勉強なんてのも有りだろう。今まで見てきた人たちは、そんな想像できる「何か」をしていて、それが僕の思い描く「何か」であるが故、深く詮索しようなんて思うことはなかった。
しかし今は違う。彼のことが気になってしょうがない。何を作っているのか。その作業がどこまで進行しているのか。ここで、この場所で仕上げるつもりなのか。そもそもなぜここでプラモデルを組み立てているのか。
彼は隣にあった二人用のテーブルを引き寄せ、作業スペースを広げた。
その彼と僕の間には客が居るわけではないが、作業を観察するにはそちらに首を向けなければならない。それは普通に気が咎める。どうしても好奇な目線になってしまうことは明らかなので、目線すらそちらに向けることも憚れる。でも気になる。気になってしまう。
チラチラと彼のテーブルに送る目線に気がついたのだろうか、その視線が気になったのだろうか、彼はランナーを整え箱に仕舞い、並べていた工具を小さなケースに入れ、トレーに乗るドリンクをズズズと音がするまで一気にすすると、コンビニでもらうような持ち手のあるビニール袋にその全てを押し入れると、そそくさと店を出て行ってしまった。
結局、僕の疑問には一つも答えることなく、彼は店を後にした。まぁ、彼が何をしようと、別の席でノートPCを開いた人と同じなのだけれど。
今日は折り紙を折る人がいる。窓際の席、光のいっぱい当たる明るい席で、何かを沢山折っている。それはノルマの課せられた千羽鶴ではないことだけは明らかだ。
やっぱりここは面白い。
人の観察が好きで、よくここでボケーっとしています。
自分の想像を超える人を見ると、その人の背景を勝手に妄想してしまいます。