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最悪

「前からあの爆弾、気になってて。だから今回の依頼の前金で、ようやく買えた。師匠の役に立って、良かった……」


 セラグから聞くにはそういうことらしい。

 私はセラグを抱えたまま、爆風で遠くまで飛ばされた。

 ちょうど木画クッションとなって、大きい怪我とかはしていない。

 肩の怪我の酷さはそのままなのだが。


 それにしてもセラグは暗殺者には向いていないかもしれない。

 騎士達と戦っているときも小爆弾を用いていて、目立つばかりだ。

 まあ助かったからいいかとお礼に頭を撫でると、「……子供扱いしないで」と顔を赤くした。



 照れ屋なセラグは置いておいて、ここからどうしようかと悩む。

 今はあの爆発のおかげで私達を追ってくる者はいないが、それでも堀の外からの襲撃者のために騎士達が走り回っている状態なので、考えて動かなくてはならない。


 取り敢えず、城の敷地内へと入れる一番大きい門へと移動することにする。

 方向からしてまだ交戦中であるので、紛れて脱出できるかもしれない。

 イディス達と合流したいが、どちらも隠れているし兵に見つかってしまうというリスクがあるので、無事を祈るしかない。



 コソコソと移動をする。

 夜で冷たい風が吹いていて動きやすさ重視の薄い服だったので「くしゅ」とセラグがくしゃみをして近くを通る騎士が気付いてしまったが、すぐさま頭を狙って落ちていた石を当てて気絶したので難を逃れた。

 それ以外は簡単に事が進んだ。


「人、いっぱい」

「少し来るのが、遅かったな……」


 門までこれたのだが、移動している間に戦いは終了しているようだった。

 もちろん城に務める者が勝っている。


「師匠、どうする?」

「難易度高めだからね……。うーん、どうしよっか」


 治療や捕縛しているので油断しているのだが、いかんせん今いるところから門まで隠れるようなものがなく距離があるので、つっきっていくのは無理だ。


「もう爆弾はないんだよね?」

「……うん。全部使った」


 相手の気を引くようなものもない。

 自分の魔力は半分ぐらい残っているのだが、放出系は苦手で練習をしていない。


「変装するのは?」

「私は猫になら変身できるけど、セラグはどうするの?」

「……猫じゃなくて、騎士とか魔道士」

「えっと、魔法じゃない変装ってこと?」

「うん」


 一人二人でいる兵とか騎士は何度か見かけたので、服ぐらいは奪えるとは思うが、私は小柄なのでサイズが合う人を探さなければならない。

 だが魔道士の服装ならゆったりとしていて折り曲げたりとかしればなんとかなるだろう。


 ではセラグはどうするのかと聞くと、捕まった襲撃者のふりだそうだ。

 こんなに幼い襲撃者は滅多にいないので目立つかもしれないが、隠すように移動していけばいけるだろう。


「じゃあ、他にはないし、変装する案にしよっか。結界が再構築される前に急がないとね」


 襲撃する関係で、城を守る結界が一部無効化されている。

 結界は強固で、再構築には高度な魔法を使える魔道士が何人も必要なので、集まるまでに時間がかかるがたくさんあるとはいえない。



「その必要はねえ」

「え?」


 服の調達のために動こうとしたところで、不意打ちで横っ面を殴られた。


「師匠!うぐっ」

「声が大きいんだよ」

「んー!」


 セラグは口を抑えられて拘束された。


 最悪だ。

 考えることに集中して、警戒を怠っていた。

 傷の痛みのせいもおるが、防ぐことなく殴られて大事な弟子を人質のようにされている。


「いい気味だなぁ。なあ、黒猫?」


 黒猫、と呼ぶその者は騎士ではなかった。

 獲物を逃さないといったギラギラの目をした、傭兵崩れのザハロスだった。

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