王城での戦い①
夜会会場へ入るまでのカウントダウンがされ、ゼロと同時に隠れていた部屋から飛び出す。
「ドキドキするね!」
「ねー」
「……うるさい」
緊張している三人の幼い子達に合わせるために、私達は一番最後尾についた。
一人だけ私を監視するためにいたが、会場に入ったのを確認すればどこかにいくだろう。
そこまでいけば、私は必ず騎士と争うことになって容易に逃げることはできないからだ。
会場への扉を先頭が蹴破るように入っていくのに続く。
照明が壊されていて、真っ暗だった。
「視界は見える?」
「うん!」
「バッチリー」
「同じく」
夜目がきくので私はいいが、子供三人にはまだ暗いところは慣れていないので、魔法をかけてある。
暗闇が薄暗くなる程度のものだが、そのぐらいなら三人には十分だ。
現にネロとノイは走って騎士らしき者に自ら戦いに挑もうとしている。
「離れないでって、言ったよね?」
「「はーい」」
繰り返し厳命していたのに、もう忘れているのか。
どこからともなく聴こえる悲鳴の声に怯えて体が動けなくなるよりかはマシだが、勝手に動きまわるのは悪い。
首根っこをもってぶらぶらさせていると、扉の付近で突っ立っていたことで、騎士が襲いかかってきたのを体術でいなして蹴りで床に寝転ばせた。
私達の様子に戸惑っていながらの攻撃だったから、楽勝だった。
「師匠、カッコいい」
キラキラと目を輝かせているセラグはを連れ、私は周囲を確認でき安全な場所に移動する。
その際ネロとノイは大人しく揺さぶられていた。
短い時間であったが、状況は悪い方へと傾いていていた。
まず、窓や他の扉から襲撃をする者達の数が少なかった。
襲撃をする前に見つかって片付けられたのだろうか。
そして騎士の対応が速い。
魔法で光の玉をうかべ、私達襲撃者にとって有利な暗闇を明るくしてしまった。
そのせいでもうすでに何人か倒されてしまっている。
「戦いに行かないのー?」
「仕事は王を殺すこと。戦うことは必要ない」
「なるほどー?」
セラグの言っていることをノイは理解しているようではなかった。
一番幼い年齢なので仕方がないかもしれないが。
「離れないように付いてきてね」
私は窓の方へ先導して走る。
素性を隠した格好なので、私達に気付いた貴族は仮面をとって露わになっている青い顔で進路上から離れ、騎士は逆に近づいてくる。
私は三人を置いて騎士へと迫り、ダガーで攻撃する。
さすがに王城で警備をしているものなので、落ち着いた様子で冷静に対処してくる。
だが騎士というものは騎士道に反するような荒業に慣れていないことは経験上分かっているので、体術を織り交ぜれば十秒程度で床に倒れた。
「トドメ、刺さない?」
「うん。その状態のほうが、時間は稼げるからね」
足を折って動けなくさせて移動する私にセラグは問いかけた。
殺してしまうよりも生かしておいた方が、他の騎士が私達を追うのではなく助けに行くことになるので時間が稼げる。
それに騎士に遅れて魔道士が会場に到着しているので、ますます私達が不利になっている。
幸い私以外の者が依頼を達成しようと派手に一箇所に集まって王を守る人達と交戦しているので、注目を集めている今が私にとって逃げやすいチャンスだ。
しかし、そう油断しているとネロとノイが投げナイフを飛ばしまくっていらないことをして私達に気付くものが増える。
余計なことをしないようにすることは、来る騎士を相手にしなければならないのでセラグが頑張って二人を抑えてくれるのを期待するしかない。
時々危うい攻撃を「おりゃー!」と掛け声で投げナイフを投げたり、小規模な爆発させる魔道具で私を若干巻き込みながらも助けてくれるが、爆発音でまた人の注目を集めて王がいるとされる場所と同じぐらいに目立ってきた。
私がいる方は逃げることが多くて被害が少ないことから、重要度は低いようだが、それでも一人の魔道士が私達を相手にする騎士の元に駆けつけた。
つらつらと詠唱をする魔道士を魔力を消費してまで止めようとするが、三人を守りながらだと難しく、まともに魔法をくらった。
「リミー!」
雷魔法だったことで全身が痺れて痛みの声を上げることすらできずに剣で斬り込まれようとしている私を、気付いたノイが防ごうとする。
しかしそれは叶わず、立ち塞がった騎士がノイを取り押さえて失神させた。
「ノイっ!」
私はそのことを、腕に仕込んでいた防具でなんとか迫りくる剣をぎりぎりで防ぎながら見ていた。
未だ痺れた状態で、意識がノイのことでいっぱいになったことから、剣に押し負けて床に倒される。
生け捕りにするためにか、肩に剣を突き立てられた。
久しぶりの鋭い痛みだが、構わず目の前の騎士を隠し持っていた剣でやり返す。
私は追撃することはせずに、ノイを失神させた騎士の足に向かってダガーを投げ命中させる。
「ノイを離せー!」
ネロとセラグはノイを取り返そうと騎士と善戦していたので、痛みで体がぐらついた瞬間を逃さずにネロが体当たりをして奪い返した。




