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笑顔の裏で※イディス視点

「いいのですか?逃がしてしまって」


 何処からともかく現れた護衛が言った。

 余韻に浸っているのを邪魔されて嫌な顔をしてしまったが、すぐに取り繕う。


「大丈夫ですよ。次の新月の日には絶対に来ますから」


 負けず嫌いなところがあるから、来ないという負けを認めるような選択肢はとらない。

 逃げ出すことはあっても、後になって仕返しをしたりするのだ。

 経験則からそのことは分かっている。



「随分とあの黒猫に執着していらっしゃるのですね」

「……いつから見ていたのですか?」

「イディス様が女性共を撒いたころからですよ。まさかこんな日まで密会するなんて思いませんでした」


 護衛は一年前ぐらいに僕がリミと会っているのに気付いてしまった。

 確信としたものはなかったが、何か怪しいと思っていたらしい。

 僕に直接聞いてきたので、正直に話した。

 この信頼している護衛なら、僕の望みに反することはしないと分かっていたから。


「猫は気配に敏感ですから、ぎりぎりと距離をはかるのは大変でした」

「ついてこなくても、夜会の警護をしていれば良かったのでは?」

「俺は貴方様の護衛です。冷たいこと言わないでくださいよ。それに面白いものも見れましたし。満足しましたか?」


 このぐらいで満足できるはずがない。

 が、あえて口に出す必要はないだろう。

 この独占欲をにやにやとする護衛につつかれたい訳ではないのだから。



 リミは僕を異性として捉えていない。

 僕の前でよく無防備な状態でいることから明らかだ。

 信頼しているというのもあるが、友人としてしか見られていない。

 それに心が昔と変わらないままというのもある。


 リミは身長は昔と比べてそう伸びてはいないが、体つきは大人の女性となっている。

 見た目はともかく、抱きしめるとよく違いが分かる。

 柔らかく、いい匂いするのだ。

 なぜ自覚がないのだろうと疑問に思う。


 だから今日で自覚させた。

 リミ自身のことはともかく、僕に対する認識は変わっただろう。

 顔を赤らめるという初めて見るリミの表情も見れた。



「ご執着の黒猫は手に入りそうですか?」


 にやにやと笑う護衛は僕の噛まれた唇の結果から言っているのだろう。

 そんなんで、手に入るのかって。


「手に入れますよ。その為に色々な手筈を打ちましたから」


 リミが逃げようとしても、邪魔しようとする者がいても。

 全てもう遅い。


「……イディス様、いつもの笑顔が増して、怖いくらいなのですが」


 護衛に指摘され標準の笑顔に戻す。

 どうも最近は気が抜けない時間が多くて、信頼できる者の前だと気が緩む。


 僕は改めて気を引き締め、夜会の会場に戻った。

 次の新月の日にリミがどんな反応をするか楽しみにしながら。

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