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女性の依頼

「どうか、お願いします」


 そう泣きながら暗殺の依頼をしてきたのは、美しい女性だった。

 正規の手順を踏んだ依頼ではない。

 たまたまぶつかってしまい、黒髪金目の特徴に気付いた女性が直接依頼をしてきたのだ。


「私はただでは働かないよ」

「……お金はありません」

「お金じゃなくても、後で金になるものだったらいいよ」

「なら、私の髪でもいいでしょうか」


 艶があって手入れがされていると分かる、珍しい赤く長い髪だ。

 髪をめでる趣味がある変態貴族がいると聞いたことがあるので、交渉次第では高値で売れるだろう。

 報酬が髪だということは初めてだが、仕事柄顔が広いグラマに任せておけば何とかなる。


 それにマントのようなものをまとって隠しているが、体のあちこちにあざがあるのが見て取れる。

 内側はきれいな真っ白のワンピースを着ていて、綺麗な容姿だ。

 きっと嗜虐趣味な男にやられたのだろう。

 探していたと言葉にして女である私が良く、暗殺対象も裕福な商人なのであっている。


 金がないときはよほどの危険がない限りどんな依頼でも引き受けるが、なるべくあと気味がなさそうな相手の方がいい。

 遠慮なく殺れるから。



 女性は逃げてきたらしいので、ひとまず私の拠点で匿うことにした。

 拠点を何度も変えるので場所を知られてもいいし、盗まれてもいいものは置いてはいない。

 私は女性にじっとしているようにし、準備を整えてから出発した。



 私が拠点の空き家から出ると、いきなり剣で襲いかかってきた男達がいた。

 数は三人。

 後ろで待機しているものは二人だ。


 私は剣で冷静に三つ分の剣を薙ぎ払う。

 驚きはしない。

 拠点前でウロウロしていたのを知っていたからだ。

 逃げた女性を追いかけてきただろうが、確証はなかったのでいつでも応対出来るようにしていたが、会話もなしか。

 空き家に入っていく様子を見ていたのか、女性の位置が分かるような魔道具があったからか。

 どちらでもいいが、一度戻って女性に魔道具を持っていないか確認しなければと思った。



 呆気なく倒れる想像をしていたのか、驚いている男達の内近くの一人に狙いをつけて剣で斬りつける。

 どんな武器でも使いこなせるよう訓練はしているが、こうして剣を振るとやはり使い慣れているダガーの方が良い。

 軽ければいいが、剣に振り回されそうで気を付けなければならなくなるから。


 心臓に向けて振るった剣は防がれてしまったが、体を強化してあったので男は後ろに下がっていった。

 その間にも二人の男は剣で仕掛けてくるので、細かいステップを踏んで片方はぎりぎりで避け、もう片方は剣で軌道をずらす。

 結果、体のバランスを崩したので、私は男を足技で蹴飛ばす。

 その方向は巻き添えを狙ったので男一人がいて、二人仲良く地面へ転がった。



 そこから私は待機していた男を含めて相手をした。

 今でも尾行しているような集団としての力はなかったので、一分以内で片付いた。


「応援は呼んでいないよね?」


 近い場所に女性が逃げてきた商人の家があるので心配したが、狂ったようにこくこくと頷く男を信用して、情報をいくつか聞き出した後昏睡させておいた。


 見張っていた女性が逃げたのを少し経ってから気付いたようで、商人にその事実がバレないようにこの五人で探していたようだ。

 魔道具は持っていないようで、女性には見張りだけだったそうだ。


 私は拠点前にごろごろ男達が転がっていると不都合なことが多いので、ひとまず女性と荷物を安全なところまで移す。

 もうすぐ拠点の場所を変えようと思って荷物はまとめていたので楽だった。


 *


「ぎゃあああああああぁぁぁぁ」

「うるさいなぁ」


 頭に響くほどの絶叫を上げる商人を、首を斬って声を出さないようにする。

 そして呆気なく死んだ。

 私はその亡骸を一瞥もせず立ち去る。

 商人の声を聞いて駆けつけてくる者が来る前に逃げ出したいからだ。


 依頼してきた女性と同じ境遇の者が多いせいで、見張り役の者が多い。

 ただでさえ建物に侵入するのも大変だったので、混乱に生じて帰りたい。



 その願いから、私は誰にも気付かれずに女性の元まで戻り依頼達成を報告した。

 女性は「ありがとう、ありがとう」と何回も繰り返し感謝を伝える。

 私がやったことは殺しなのにそう言われるのは、この女性に限ったことではないが不思議な気持ちになる。




 私は女性からバッサリと切った髪を報酬として受け取り、新たな拠点を目指して歩いているとまたエゾに会った。


「これで何回目?」

「さあな。いちいち数えていない」

「まあ、私拠点変えるからこれからは会わなくなるだろうけどね」

「へぇ、もうそんな時期か?」

「バレちゃったからね」


 正確には女性に自分からバラしたのだか、そんな変わらないだろう。


「仕事は終わったの?」

「まだだな」

「そんなに期間長いんだね。どんな内容なの?」

「特殊な内容としかいいようがないな」


 商人を殺したことは分かっていないと思うが、なるべく早く離れたいので、仕事頑張ってと言って別れた。

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