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報告 ※イディス視点

「報告を」

「はっ。

 本日は午前のうちに発見。対象はそのことに直ぐに気が付き、逃走しました。そこからはいつもと同じよう撒かれるのですが……部下が一名、単独で行動し、交戦しました」

「その者は無事ですか?」

「はい。かすり傷程度です。その者は処罰はいかがなさいますか?」

「父に意見を仰いでから下します。それまでは謹慎をさせるように」


 将来は領主を継ぐことになるのでそのための経験を積むということ、護衛には否定したが私用目的も少しはあることから、父からは彼女の同行を調べることについて任されている。

 しかし判断に迷うことがあるときや重要なことについては父と話しあったりしなければならないので、命令を破った処罰は追々下すことにする。



「警戒が強いですね……。彼女の情報も人付き合いが限られているので少ないですし」

「裏社会で生きていますからね。それに侵入してきたときのように、集団で行動することは稀のようですし」


 公爵家に侵入してきた者達の雇い主は未だ判明していない。

 派閥関係で敵対している貴族だろうとは分かってはいるが、その者達が多すぎて絞り切れない。


 侵入者で捕縛している者から情報を聞き出すが彼女が話したような人物ではなく、小物臭漂う者から依頼されたようだ。

 雇い主の子飼いの者が混じって侵入していたようだが、腕がいいようで殺されたり捕縛されずに逃げられている。

 相手の方が上手のようだ。

 だがこちらも切れ者の父がいて本格的に動いているので、そうそう負けたままではいないだろうが。



「そういえば、彼女への依頼の取次役がいて仲が良いそうですけど、人質とかにして情報を得るというのはどうでしょう?」

「可愛らしい顔してえげつないこと言いますね」

「そんなの貴族令嬢でもしていますよ。僕だけではありません」


 貴族には必要な能力だ。

 相手に隙を見せないためにも常に心がけて笑顔でいる。

 それに童顔なことを気にしているのだから、止めてほしい。


「……それでその案はどうなんですか?」

「無理。その一言に限ります。その取次役は裏のボスが庇護していますから。敵に回して公爵家を潰したい訳ではないでしょう」

「そうですね。では別の者を人質にするのは?」

「難しいですね。強いものを好むようで、捕らえるだけで被害が出ると思います。弱い者もいますが集団で行動しているようですし」


 そこからほかの案をいろいろと考えるが、良い案は出てこない。


「イディス様、あの暗殺者にそこまでこだわる必要はないと思いますよ。それに私や強い部下を数名で殺す気でいけば命と引き換えに情報が得られるかもしれませんし、なぜそうしないのですか?」

「……」


 その手があることは分かっている。

 だが彼女は傷つく可能性があるし、王都以外の拠点に移ってしまうかもしれない。

 そうなるのはなんだか忍びないと思った。

 最近はよく自分の気持ちも分からなくなってきた。


「……少しの部屋から退出します。それまで考えをまとめるのが良いと思いますので」


 そう言って、護衛は他の者も引き連れて出て行った。

 軽く息を意識的に吐く。

 僕一人なので、はぁという音は耳にまで届いた。



「隊長ー!あれ?いない。イディス様、隊長知りません?」

「ついさっき出ていきましたよ。それより、ノックはするように」

「あっすみません!次から気を付けます」


 礼儀がいろいろとなっていない女の魔道士を注意して、要件は何だったのかを聞く。


「えっと、お店に例の暗殺者がいるのを発見したので、どうすればいいかを聞きに来たんです。また見つかってしまうと逃げられてしまいますし」

「取次役がやっているお店ですか?」

「そうです。仲良さそうに男の人と話していましたよ。イディス様、私もそろそろゆったり休める時間が欲しいのです」

「まだ弁償代分、働いていませんよね?あと庭師が未だ落ち込んでいるようですよ」


 笑顔で言うと、魔道士はしゃきっとして隊長を探しに行った。

 熱心に働いて、いいことだ。

 それに僕は魔道士の話を聞いて新しい案を思いついたので、今度こそ誰もいなくなった部屋でにこりとほほ笑んだ。

 黒い笑みだったのは間違いなかった。

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