とある整備の苦悩
戦車の大敵と言ったら何だろう?
航空機? 所有の戦車で勝てない敵の戦車? 地雷? どれも違う。
一番の大敵は“故障”だ。
戦車は重い。とにかく重い。
車体を支える転輪、駆動輪、履帯、シャフト、エンジンなどの駆動系統に負担がかかる。
これらの故障で後方送りとなっている車輌は数知れず。
今日も一輌。後方に送られてきた。
「げッ……まさかのこいつかよ……」
「ヒル。諦めよう。こいつは修理なんてレベルじゃない」
「ガランド……とりあえず、故障報告書をくれ。ここに来た以上やらなきゃいかん」
「まぁ、そうなるな。ほれ」
報告書を確認する。
車輌はエレファント重駆逐戦車。エンジン部分の火災、湿地帯で動けなくなり牽引車で引き揚げ時に火災発生しエンジン部分焼失。牽引車二台も牽引時にシャフトが折れる、オーバーヒートしたため修理へ回す。
というもの。
この戦車はモーターを使用したハイブリッド車だが、過大な重量で負担がかかりやすい。
しかし、欠陥というわけではない。
むしろ、好評ということも聞いたことがある。
だが、一度火災を起こしてしまうとエンジン部分はすべて取り換えねばならない。
そのためには、エンジン部分の天板を外して、邪魔な砲身も取り外してしまわなければならない。
で、一気に引き抜く。
二基のエンジンを載せているが、どうしても砲身は取ってしまわなければならない。
理由は寿命だから。
撃ちすぎなのと、エンジンの火災による焼けである。
牽引車に関してはまだ楽。
そっちの二台は別な班がもう持って行ってしまっているから、自然にこいつの修理が回ってきたのだ。
「わかった。やるしかないだろ」
「だな。人とモノを取ってくるよ」
「わかった。少しでも作業を続けとく」
こうして修理を開始。
その直後、大型牽引車に引かれて来た戦車が一輌。
「げッ……ティーゲル」
「すまん! 地雷踏んで転輪とシャフトがイってるかもしれん」
「ああ……終わった。もっとひどいヤツが来た」
この日の整備は終わることは無かった。
夜遅くまでかかり、終わらず。
次の日も続々と戦車が回収されて来た。
戦争なんて早く終わっちまえ!