遥彼方の物語〜その4+エピローグ〜
いよいよ完結です。
短編のはずが長くなりすぎてしまいました。
反省です。
遥の向かった異界では・・・
「えっとー・・・どうしたらいいのかしら・・・」
異界に無事に辿り着いた遥であったが、着いた途端に魔物達に囲まれるという状況になっていた。
銀色の狼の様な魔物や紅い眼をギラギラさせている人型の魔物等が遥の行く手を阻んでいたのだ。
「すんなりと通してくれそうな感じじゃないわよね。」
魔物達は遥を威嚇するかのように牙を剥き唸っていたり、睨み付けていたりしていた。
明らかに敵意を持っており、歓迎されていないのは一目瞭然だった。
「こんな時、カナ君はどうしてたかなぁ。確か・・・」
遥は異界での彼方の行動を思い出していた。
この世界に来たばかりではあるが、今の遥には、この様な世界で生き抜いてきた彼方の知識があったのだ。
この位で慌てる事は無いのであった。
「えーと、力を集中して、周りにぶつけるような感じだったかな?」
遥は彼方の行動を頭に浮かべながらイメージを固めていく・・・
「あっ、この感じって【人ならざる者】を倒した時と同じだわ。それなら!」
遥は牽制のつもりで周辺に軽く力を放ってみる。
すると・・・
『グガァァァーー!ギャァァァーー!ギェェェーー!』
遥を囲んでいた魔物達が断末魔の叫びを上げながら次々と倒れ、消滅し、沢山のキラキラと光る石が魔物達の居た場所に散らばっていったのだった・・・
「えっ?あれっ?倒しちゃった?」
キョロキョロと周りを見渡しながら、周囲の様子を確認する遥だったが、そこに魔物達の姿は無く、動いている者は遥一人のみであった・・・
当然の結果である。
遥の力は、この世界に居る彼方とほぼ互角であり、その力は紛れもなく世界最強クラスなのだ。
残念ながら、遥にその自覚は無いのだが・・・
「あれってどう考えても魔石だよねぇ。取り敢えず拾っておいて損はないわね。」
遥は倒した魔物達の場所に散らばっていた魔石を拾い集め、収納した。
「流石ねー。カナ君が使ってた無限収納、こっちでは使えるのねー。想像していた以上に便利ね。」
彼方が使用していたという前例と、彼方の為にと読み漁っていたラノベのお陰で当たり前のように無限収納を使用していた遥だが、この世界で無限収納を使用出来る者は、遥と彼方の二人だけなのであった。
「さてと、私がこれから暮らしていくこの世界の様子を確認しなくちゃね。取り敢えず・・・街ね。街を探さなくちゃ。」
遥は目を閉じて意識を集中している。
どうやら人の気配を探っているようだ。
「村っぽい所が何ヵ所とー・・・ちょっと遠そうだけど街みたいな所も在るようね。じゃあ街に向かいながら、途中の村にお邪魔してみようっと!どんな所かなぁ?楽しみー!」
遥は一人でブツブツと呟きながらも、嬉しそうに街に向かって駆け出し、異界での第一歩を踏み出したのであった・・・
そして・・・
遥がこの世界に来てから約半年が過ぎようとしていた。
この世界に来てからの遥の暮らしは、女神から貰った二つの神器の力で、目にする物の詳細が判ってしまう鑑定能力や言語能力、無限収納等のサポート系能力と、身体強化や状態異常への耐性強化等の強化系能力に恵まれ、それに自身の持つ強大な力まで加わって困る事など無いはずだった。
だが、実際はトラブル続きで落ち着く暇など全く無く、ドタバタした日々を過ごしていたのだった。
まず、街に向かった遥が一番始めに辿り着いた村では、大量の魔物達に襲われている真っ只中だったり、次に向かった街に着けば、今度はドラゴンの襲撃が起こったりと、行く先々でトラブルに巻き込まれてしまっていたのだ。
日本に居た時も遥の力は【人ならざる者】を惹き付けてしまっていたが、こちらの世界でも同様に魔物や邪な力を持つ者を惹き付けてしまうトラブル体質のようで、定住先を見つける事が出来ずにいたのであった。
とは言うものの、遥自身はそんな事は気にしなかった。
それは遥の持つ力や女神から貰った二つの神器、彼方から受け継いだ知識のおかげで、生活には苦労しなかった事も要因の一つではあったが、それよりも夢の中で出逢う彼方の存在が大きく影響していたのだ。
遥にとっては、夢の中で彼方に逢えさえすればそれで良く、それこそが全てであり生き甲斐だったのだ。
だから、自らの置かれている環境など関係無く、問題外なのであった。
恋する乙女はトラブル体質ではあるが無敵なのである。
そして、その遥は今、どうしているかというと・・・
ドラゴンに乗り、空からこの世界の最南部を目指していた・・・
遥が調べたところ、日本の扉を抜けた先はこの世界の最北部だった。
定住先が見つからないまま各地を転々としていくうちに、いつの間にか世界の中央部に辿り着いたのだが、そこで耳にしたあの歌が、遥を動かしたのだった。
【通りゃんせ 通りゃんせ ここはどこの 細道じゃ 龍神さまの 細道じゃ
ちっと通して 下しゃんせ 御用のないもの 通しゃせぬ
行きはよいよい 帰りはこわい こわいながらも 通りゃんせ 通りゃんせ】
「えっ?どうして?」
遥は耳を疑った。
多少の違いはあったが、紛れもなく【通りゃんせ】だったのだ。
彼方と遊んだあの神社で流れていた童歌であり、この世界では遥しか知らないはずの歌なのだ。
歌っていたのはトカゲの様な尾と、頭に生えたツノが特徴の亜人種で、竜人族という種族であった。
「まさか・・・他にも日本人が?もしかしてカナ君?・・・でもそんな事って・・・調べてみる価値はあるわね!」
遥は歌っていた竜人に駆け寄り、驚く竜人の両肩を捕まえて、なりふり構わずに質問攻めにしたのだった・・・
そして・・・
「この世界の最南部にあるドラゴニアス連合国かぁ。行くしかないわね!」
竜人の話を聞き終えた遥は最南部のドラゴニアス連合国を目指す決意をしたのだった・・・
竜人から聞いた話によると・・・
この歌はこの世界の最南部に位置するドラゴニアス連合国で数年前から流行り出した歌だった。
ドラゴニアス連合国は、最南端にある伝説級の魔物達や強力な魔物達が生息していると伝えられている【深淵の地】の北部に、古代龍等の高位のドラゴン達が棲み家としている山を挟んで隣接している国である。
ドラゴンは強大な力を持っており、ドラゴニアス連合国からドラゴンの棲む山を抜けて深淵の地に行く事は出来ないが、ドラゴンは魔力の高い強力な魔物達を主食としているので、ドラゴンの棲む山が強力な魔物のドラゴニアス連合国侵入を防ぐ防御壁になっている為、【龍神様のお山】として親しまれているらしい。
だが、この国は深淵の地に近いせいだからだろうか?魔物の数は他の国よりも多いので危険も多い所らしい。
中央部からは山脈を越えた先にあり、獣人族やエルフ族、ドワーフ族や人魚族等のラノベではお馴染みの様々な種族が多数住んでいる事で知られている。
それ故に、様々な種族の子供が誘拐され、他の国へ連れ去られる事件が多発しており、長い間問題になっていたそうだ。
しかし、数年前から奇妙な出来事がドラゴニアス連合国で起こるようになったらしいのだ。
一つは、普段は全くと言って良いほど人里に姿を見せないドラゴンが頻繁に目撃されるようになり、ドラゴニアス連合国内の魔物まで捕食するようになった事だ。
お陰で魔物達に襲われる村が激減したようだ。
二つ目は、夢の中で不思議な歌を聞いたという子供達が増え始め、子供達が朝目覚めると、皆、五角形面を持つ形状の小さな白い結晶の付いた首飾りを首から下げており、夢の中で龍神様に貰った御守りで、【イシス水晶】というものだと子供達全員が同じ事を話す事だ。
このイシス水晶の付いた首飾りは、触れれば誰にでもあの【通りゃんせ】に似た歌が頭に響いてくるだけでなく、子供達から首飾りを外しても、いつの間にか持ち主の首に戻ってしまうという不思議な力と、持ち主が誘拐されたりすると、イシス水晶が輝くと同時に周辺に歌が響き渡り、誘拐した者の意識を奪い、子供達を護ってくれるのだ。
【通りゃんせ 通りゃんせ ここはどこの 細道じゃ 龍神さまの 細道じゃ
ちっと通して 下しゃんせ 御用のないもの 通しゃせぬ
行きはよいよい 帰りはこわい こわいながらも 通りゃんせ 通りゃんせ】
誘拐犯の話では、子供を誘拐しようとすると、この歌がまるで忠告するかのように頭に響いてくるらしいが、そのまま構わず犯行に及べば、突然目の前が霧に包まれ細い小道が現れるという。
その先には龍神らしきドラゴンが待ち構え、誘拐犯を飲み込み、罰を与えるかように苦痛を与え意識を奪うらしい。
そんな話が広まって、それが噂ではなく真実だと知れ渡ると、ドラゴニアス連合国での誘拐事件は今では皆無となった。
それで不思議な力を持つ龍神の御守りのイシス水晶の首飾りと通りゃんせに似た歌は、ドラゴニアス連合国では知らぬ者が居ない程になったという事らしい。
竜人の話はここまでだったが、遥にとっては大収穫だったようだ。
「ドラゴンにイシス水晶、通りゃんせ。カナ君が異界に着いたばかりの子供時代に困っていたのは、村だと魔物達に襲われる事、街だと人さらいが多い事・・・だったわよね。ドラゴニアス連合国で起きた事ってやっぱりカナ君が関係してるとしか思えないよ。」
遥はブツブツと呟きながら考え込んでいた。
結論から言えば正解であり、全ては彼方と親代わりだった古代龍が仕組んでいた出来事であったのだが、遥が知るのはもう少し先である。
そして、遥は何か閃いたのか、両手をポンと叩くと明るい表情になった。
「この世界の最南部にあるドラゴニアス連合国かぁ。行くしかないわね!」
そう言って、遥はドラゴニアス連合国を目指して旅立ったのであった・・・
遥のいた中央部はまだ北部寄りの場所であり、ドラゴニアス連合国までは馬車を利用しても一年近くはかかるだろう。
そこで遥はドラゴンを利用する事にした。
人目の届かない森の中で、無限収納から緑色の水晶球を取り出し魔力を注ぐ。
この水晶球は遥がこの世界に来て初めて着いた街を襲撃したドラゴンから貰ったものだった。
街を襲撃したドラゴンは、逆に遥にボコボコにされ、ドラゴンの宝玉と呼ばれる緑色の水晶球を服従の証しに差し出したのだ。
ドラゴンの宝玉は魔力を注ぐ事でドラゴンを召喚出来るが、ドラゴンとの距離によって必要な魔力が変化するのだ。
「あのドラゴンって最北部に居るんだっけ。遠すぎるかな?」
北部寄りといっても世界の中央部に遥は居るのだから、普通の人間では魔力が足りないはずである。
しかし、遥は神に近い力を持っており、魔力は桁違いなので、本人は気が付いてはいないがドラゴンが世界のどこにいようも呼び出す事が出来るのだ。
やがてドラゴンの宝玉が激しく輝き、光の中からドラゴンが現れたのだった。
「やったぁー。成功ね。さぁ、急がないと!」
そして、現在に至る・・・
「この山脈を抜けたらドラゴニアス連合国ね。もうすぐかな。」
遥を乗せたドラゴンは山脈スレスレを高速のまま飛んでいく。
やはりドラゴンに乗り、空からドラゴニアス連合国を目指して正解だったようだ。。
ドラゴンを召喚してからまだ約二週間しか経過していなかったのだ。
一年近くかかる馬車とは比べ物にならない。
とは言うものの、ドラゴンに乗って空を飛べる人間は、遥を除くと残りは彼方位しか存在しないのだが・・・
「ここがドラゴニアス連合国・・・何て素敵な所なの!」
山脈を抜けた先には広大なファンタジー世界があった。
西部には世界樹という名に相応しい巨大な大樹とそれを囲む森林地帯が広がっている。
北部にはあちらこちらにトンネルが掘られている岩山が密集している鉱山地帯と大草原が見える。
中央部には王都とそれを囲むように城下町が、東部には海岸が広がっていた。
「流石連合国ねぇー。色々な種族が集まって暮らしているのも頷けるわ。私も気に入っちゃったわぁー!」
ドラゴニアス連合国のあまりの美しさに一目惚れしてしまった遥は、この絶景を目に焼き付けようとして、空から全体をじっくり見渡した。
「あれっ?あの南の山って古代龍の棲む【龍神様のお山】だよね?何か見覚えが有るような・・・」
遥は既視感に見舞われていた。
「この景色・・・以前にも見た事が・・・うん、間違い無いよ!カナ君の見ていた景色と同じなんだよー!」
遥がイシス水晶を握りしめながら、希望に満ちた表情で叫ぶ。
「嘘じゃないよね。扉を抜けた先がカナ君と同じ世界だったなんて・・・こんなに嬉しい事は無いよー。まさか、夢じゃないわよね。」
慌てて自分の頬を力一杯つねる遥。
「いったーい!力を入れ過ぎたわー。でも、夢じゃないわ!」
涙を流しながら微笑む遥だったが、その涙は果たして痛みのせいなのか?それとも別の要因なのだろうか?今は分からない。
「夢じゃ無いのなら、あの山の頂上にカナ君が・・・」
そう言って【龍神様のお山】を見つめる遥の顔は、既に涙でぐしゃぐしゃであった。
頬をつねった痛みのせいでは無かったようだ。
叶わぬ願いと思っていた彼方との再会が目の前に迫っているのだ。
「カナ君・・・やっと会えるよ。今行くから・・・」
遥を乗せたドラゴンが山の頂上に向かって真っ直ぐに進んでいったのだった・・・
山の頂上には太陽の光を反射して水面がキラキラと光っている大きな湖と、一軒の小さなログハウスがポツンと建っていた。
ログハウスの持ち主は、勿論、遥の想い人である彼方である。
「ん?何だろう?誰かが俺を呼んでるような気がする・・・外からか?おいで、クシイナダ。」
「キュイキュイ!」
何かを感じた彼方が肩にクシイナダという名の白い小さなドラゴンを乗せ、扉を開けて外へと出ていく。
この小さな白いドラゴンこそ、彼方の親代わりの古代龍なのだ。
本来はもっと巨大な姿なのだが、彼方と居る時は小さな白いドラゴンの姿になっているだけなのだ。
クシイナダという名は彼方が命名した名前なのだが、由来はイシス水晶をくれたあの女神の名前だったりする。
実は彼方は遥との約束を覚えていて、女神と再会した時に名前を聞いていたのだった。
「北の方角からか・・・まだ遠いからよく分からないけど、何だろう?懐かしい感じだ。」
北の方角を見つめながら自分の込み上げてくる感情に戸惑いを隠せない彼方。
彼方はまだ知らないのだ・・・遥がこちらに向かっている事を・・・
「・・・カナ君・・・カナ君・・・カナ君・・・カナ君・・・カナ君・・・カナ君・・・カナ君・・・カナ君・・・」
【龍神様のお山】の頂上へ向かっている遥の心の中は、彼方への想いで溢れていた。
今は彼方の事しか考えられないのだ。
当然だろう、彼方は別の世界で暮らしていると思っていたのだ。
しかし、夢の中で彼方が見ていた景色が遥の目の前に現実として広がり、この世界に彼方が存在している事を裏付けていたのだ。
遥はイシス水晶を握りしめながら近付く山の頂上を見つめた。
頂上には大きな湖と側に家らしき建物の様なものが見えていた。
「夢の中と同じだわ!だとするとあそこにカナ君が!」
期待で胸の鼓動が高鳴り、心臓が飛び出てしまうのではないかと思う遥だったが、頂上に近付くにつれ、建物の近くに人らしき姿を発見した。
「あれはっ!カナ君っ!」
紛れもなく、夢の中で何度も見ていた彼方の姿がそこにあったのだ。
「・・・・・・っ!」
余りにも込み上げてくる感情が多過ぎた為に、遥は声を発する事が出来なかった。
そして、彼方の姿を視界に入れていたの筈なのだが、涙で視界がボヤけてしまい、姿もぼんやりとしか見えなくなっていた。
それでも彼方に向かって微笑み、まだ届く筈もない手を真っ直ぐに伸ばす遥・・・
その微笑みは女神と見間違えてしまう程の美しさであった。
そして、伸ばした手の先には、両手を広げながら真っ直ぐに遥を見つめる彼方が居た。
出逢う事の無い筈の二人が、遂に出逢う事の出来た奇跡の瞬間であった。
「ハルカーーーっ!」
彼方の声を聞いた瞬間・・・
彼方目掛けてドラゴンから飛び出していく遥・・・
「カナくーんっ!」
溢れ落ちた涙がキラキラと輝きながら宙を舞う中、彼方の胸に飛び込んだ遥。
再会を喜び抱き合う二人・・・
二人を祝福するかのように輝いているイシス水晶。
運命を乗り越え再会した二人が離れ離れになる事はもう無いだろう。
再会した二人の人生がこれから始まる。
日本から次元を越えた先で紡いでいくのは、遥彼方の物語なのである・・・
上手く纏まったでしょうか?
個人的にはいい感じに出来たので、沢山の人に読んで貰えたら嬉しいです。
感想やレビューもお待ちしております。
つまらなかったらスルーで構いませんよ。