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遥彼方の物語〜その2〜

軽く書き上げる筈が、思ったより長くなってしまいました。

「あーん、もう。あの男の子の事は考えたって居ないんだってば。現実を見ないと!私には縁結びの白い丸石があるじゃない。」


そう言って(はるか)は鞄から小さな小箱を取り出した。

小箱を開けると中から白い丸石が出てきた。

(はるか)は白い丸石を手に取り眺める。


「あれっ?何か書いてある?昨日は何も書かれてなかったけど・・・【カナタ】?・・・】


(はるか)は首をかしげた。

本当に白い丸石には昨日まで何も書かれてなかったのだ。


「誰かのイタズラかなぁー?でも、カナタってなんだろう?」


(はるか)が考え込んでいると、胸元が金色に光だした。

胸元では美しい五角形面を持つイシス水晶が輝いていた。


「何?宝石?着けた記憶無いし、こんな高そうなの持ってないんだけど?っていうか、どうして光ってるのよー。」


恐る恐るイシス水晶に触れた(はるか)だったが、その直後、(はるか)は金色の光に包まれた。


(・・・ここはどこ?なんか前にもこんな事があったような。)


気が付くと(はるか)は金色の空間に居たが、恐怖は無く、寧ろ心が休まるような暖かい所だった。


「久し振りだねー。って、今の(はるか)は覚えてないんだっけ。まあ、しょうがないよね。」


(はるか)が声のする方向を見ると、歳の近そうな黒髪の女の子が微笑んでいた。

体の周りから光が溢れだしており、まるで女神のようだった。


(女神様みたい・・・でも、何で私はここに居るの?)

「女神?そうだね。ボクはこの神社に祀られている神の一人だよ。(はるか)をここに呼んだのもボクさ。」


まるで(はるか)の心の中を見透かしたように、そのまま女神は話を続けた。


「そろそろ頃合いだからね。(はるか)はね、普通の人と違って魂がボク達に近いんだよ。実感は無いと思うけどね。だけど、そのせいで人ならざる者を惹き付けてしまうんだ。弱い者なら問題無いんだけど・・・(はるか)が成長するに従い、惹き付ける力も大きくなっているんだよ。」

「人ならざる者?」


(はるか)は不思議な顔をしていた。

神に近い魂だの、人ならざる者を惹き付けてしまうなど、いきなり言われたところで理解できる筈もないので当然の反応だろう。


「うーん。何て説明したらいいのかなぁ。こことは違う世界の者の事で、異界の者の事なんだよね。その中には力を持つ者の魂を喰らい、自らの糧にしている奴等が居てね、(はるか)は何度も狙われていたんだよ。(はるか)の魂にはボク達並の力があるからね。」

「えっ?私が?」

「そう。本当に危なかったのは二回だったね。初めはボクが助けたんだ。(はるか)の首から下げているその宝玉(クリスタル)はその時にボクがあげた一つなんだよ。実はね、その宝玉(クリスタル)は二つあってね、もう一つの持ち主が二回目の危機から(はるか)を救ったんだよ。彼はもうこちらには居ないけどね。」


そう言いながら女神は(はるか)を見つめる。


「ここからが本題だよ。ボクはもう(はるか)を助ける事が出来ないんだ。神の加護は七つになった時点で無くなってしまっているからね。」

「あっ、通りゃんせの歌と同じなんだね。」

「そうだね。でも、(はるか)は今後も異界の者を惹き付け続けていってしまうんだよ。だけど、奴等に(はるか)の魂を喰らわせる訳にはいかないんだ。だから、その宝玉(クリスタル)っ、そっちではイシス水晶だったね。それと縁結びの白い丸石に少しだけ細工をさせてもらいたいんだ。どちらにも彼の力も宿っているみたいだしね。」

「それは構わないけど・・・彼?って、もしかして・・・」


(はるか)が思い浮かべたのは、夢の中に現れる男の子の事だった。


「直ぐに思い出せるさ。(はるか)の持っているイシス水晶と白い丸石は元々彼の物だしね。ボクが出来るのはここまでだ。だから頑張ってね。(はるか)。」

「えっ?どういう事?」


イシス水晶と縁結びの白い丸石が輝いていた。

女神に問いかけた(はるか)であったが、答えてもらう前に再び光に包まれたのだった・・・





金色の光に包まれ、ゆっくりと漂う(はるか)


(何だろう?私の中に何かが流れ込んで来るみたい・・・)


それは、(はるか)の脳裏に次々と浮かび上がっては消えていった・・・


(えっ?あの男の子と私が一緒に?どうして?)


そこには、夢の中の男の子と(はるか)が居た。

神社で走り回る二人・・・

女神に助けられ、イシス水晶を貰っている二人・・・

将来を誓い合い、互いのイシス水晶を交換する二人・・・

縁結びの白い丸石に名前を書いて、互いに交換する二人・・・

(はるか)を突き飛ばして、迫り来る大型トラックから(はるか)を守り、自ら犠牲になった男の子(カナタ)・・・


「・・・カナ君?・・・カナ君!私・・・忘れていたの?」


全てを思い出した(はるか)

様々な感情が溢れ出て困惑していた様子ではあったが、その瞳は生き生きとしていた。


(カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君カナ君・・・)


金色の光に包まれながら、何度も何度も彼方(かなた)の名を呼び、心に刻み込む(はるか)は、現世に戻るまで彼方(かなた)の名を呼び続けたのであった・・・





気が付くと(はるか)は神社のベンチに座っていた。

全く時間が経っていないようだった。


「夢?なんかじゃないわ!」


慌てて(はるか)はイシス水晶と縁結びの白い丸石を確認する。

イシス水晶は(はるか)の胸元で揺れ、白い丸石には【カナタ】の文字が書かれていたのだった。


「良かったぁー。夢じゃなかったよ!カナ君。私、思い出したよ・・・うぅっ・・・カナ君・・・うぅっ、カナ君・・・うぅっ・・・」


ボロボロと涙を流し、声を立てないように口を押さえながら静かに泣く(はるか)・・・

彼方(かなた)との思い出を取り戻した喜びと、彼方(かなた)が居ない寂しさの狭間を行ったり来たりを繰り返しながら、日が暮れるまで泣き続けていた(はるか)であった・・・




それからの(はるか)の生活は大きく変化していった。

夢の中の男の子は彼方(かなた)であり、女神の言っていた、どこかの異界の一つで必死に生きていたのだ。

そう思えるのは、(はるか)のイシス水晶と縁結びの白い丸石は彼方(かなた)の物であり、それを通じて彼方(かなた)の存在を感じる事が出来るからであった。


(彼方(かなた)も私のイシス水晶と縁結びの白い丸石を持ってるんだから、私も頑張っている所を見せてあげないと!)


(はるか)彼方(かなた)に負けないように努力する事を心に誓うのだった・・・





互いのイシス水晶と縁結びの白い丸石の影響なのか?

不思議な事に、彼方(かなた)が向こうで得た知識や技術はこちらの(はるか)にも伝わって来るのだ。

とはいうものの、彼方(かなた)が覚えた魔法がこちらで使える訳ではない。

しかし、その概念を理解する事で、炎に触れても火傷をしなくなったり、怪我の治りが早くなったりするのだ。

ただし、(はるか)が他人にその概念を伝えても同じ事にはならないのだか・・・


だから(はるか)は、こちらの知識が少しでも彼方(かなた)に伝わるように必死に勉強をしたのであった。

役に立たないかもしれないが、彼方(かなた)の世界に似たライトノベルも読みまくったりしていた。


互いに言葉は無くとも存在を感じ合う事でお互いを高め合い、成長していった・・・


そんな日々は、(はるか)にとってはとても楽しく、あっという間に月日が過ぎ去り、気が付けば、(はるか)は十八歳になっていた。


次回こそ完結予定です。

当店への要望や評価も受付中で御座います。

またのご来店をお待ちしております。

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