【異世界?恋愛?】遥彼方の物語〜その1〜
申し訳ございません。
予定より長くなってしまうので分割します。
地元ネタ入れてみたくて、入れたら長くなってしまいました。
ジャンル分けすると【恋愛】になるのでしょうかね?
通りゃんせ 通りゃんせ ここはどこの 細道じゃ 天神さまの 細道じゃ━━
「まってぇー。ハルちゃーん。」
「カナくーん。はやくー。」
通りゃんせ発祥の地と伝えられる神社で、流れている童歌をバックに仲良く走り回る二人の園児。
ハルちゃんと呼ばれていた女の子の川越 遥と、カナくんと呼ばれていた男の子の三芳野 彼方は近くの幼稚園に通っている仲の良い幼馴染みである。
「ねぇ、カナくん。このきれいな宝石ってハルたちにしか見えないみたいだねー。」
「なんでだろーね。おかしいよねー。おれには分かんないよー。」
そう言いながら、互いの首から下げている白色のクリスタルを見せ合っていた。
美しい五角形面を持つ形状で、女神の水晶とも呼ばれているイシス水晶だ。
「おともだちにもハルのパパとママにもコレが見えないんだよー。あとは、コレをハルたちにくれた女の子にしか見えないんなんて不思議ねー。」
「あー、あの鳥居の向こうが金色になった時に向こうにいたかわいい子のこと?そう言えば、なまえ聞くの忘れてたねー。こんどまた向こうが金色になったら聞いてみようねー。」
彼方はそう言いながら遥に微笑んだ筈だったのだが、彼方がかわいい子と言った直後に、遥の表情が豹変し彼方をジト目で睨んでいたのだ。
「ハルちゃん。どうしたの?」
「カナくんはハルをお嫁さんにしてくれるって言ったよねー。」
「うん、約束したよー。大きくなったらおれはハルちゃんとけっこんするんだよー。」
「でも、この宝石をくれたあの子はかわいい子でなまえを聞きたいって。ハルにはかわいいなんて言ってくれたことなんてないよねー。」
小さくても遥は恋する女の子である。
大好きな彼方が他の女の子に興味を持つのが気に入らないのだった。
「当たり前だよー。けっこんする人が一番でー、次はかわいい子かきれいな子かなー?だから、お嫁さんになるハルちゃんが一番なんだけど・・・もしかして、ハルちゃんおれのお嫁さんになるのがいやなの?」
彼方が寂しそうに遥を見る。
「ち、ちがうのー!ハルもかわいいって言われたかっただけなのー。」
「よかったー。じゃあ、ハルちゃんはおれのかわいいお嫁さんになるねー。」
「えへへー。そうだよー。ハルはカナくんのかわいいお嫁さんになるんだからねー。」
「じゃあ、おれのお嫁さんにになるまでさー、この貰った宝石をハルちゃんに渡しておくよー。こんやくっていうんだっけ?」
「わーい。こんやくだねー。じゃあ、ハルもこの宝石を渡すねー。交換だよー。」
二人は互いのイシス水晶を嬉しそうに交換したのだった。
先程までジト目の遥であったが、今ではもう満面の笑みを浮かべていた。
恐るべし、彼方。
「「二人とも帰るわよー!」」
遥と彼方の母親達が二人に声を掛けた。
「「はーい!」」
二人は元気良く返事をして、仲良く手を繋ぎながら鳥居の向こうで待っている母親達の所へと走っていった。
二人のイシス水晶が激しく揺れ動いていたが、母親達が気にする素振りはない。
二人以外には本当に見えていないようだった。
「カナくん。今日は金色の所に行けなかったねー。」
「あの子ってどこに住んでるのかなー。わかんないねー。」
そう言いながら二人は鳥居を走り抜けていった・・・
二人が神社を去った直後、鳥居がぼんやりと金色に輝き、中から二人が立ち去った方を見つめる少女が姿を現した。
この少女こそ、二人にイシス水晶を渡した張本人であり、その正体は、この神社に祀られている神なのであった。
神から見た遥と彼方の二人は、本人達に自覚はないが、本来有り得ないほどに神に近い魂を持つ存在であり、それ故に強い力を持つ人ならざる者を惹き付けてしまうのだ。
しかも、この神社は童歌の通りゃんせの舞台とも言われ、鳥居を潜れば天神さまの細道に繋がっていると言われているのだが、実際はこの世以外、つまり、異界へ繋がっている場所なのである。
事実、遥と彼方の二人は何度か異界へと誘われていたが、二人の力が強過ぎる為に何事も無かったのだ。
ただ一度を除いては・・・
【通りゃんせ 通りゃんせ ここはどこの 細道じゃ 天神さまの 細道じゃ
ちっと通して 下しゃんせ 御用のないもの 通しゃせぬ
この子の七つの お祝いに お札を納めに まいります
行きはよいよい 帰りはこわい こわいながらも 通りゃんせ 通りゃんせ】
童歌で語り継がれていて、諸説有るうちの一つであるが、神は子供が七つになるまで加護を授け、親は子供が七つまで無事に育てば、神に感謝の気持ちとしてこの神社へお札を納めていたのだ。
そして、七つとなり加護を失った子供は帰り道から気を付けていかなければという意味で捉えている説もある。
実際、帰り道で神隠しにあったという噂話も有るようだ。
子供達は加護を授かってはいるが、必ずしも万能と言えるものでもない。
遥と彼方の二人は一度だけだが、この場所で異界の神に連れ去られた事がある。
その時はこの神社の神が二人を直接助け、二人は無事に戻る事ができたのだが、本人達は助けられた事に気付いておらず、金色の所にいた女の子として認識しているだけである。
そして神は、日本では女神の水晶ともイシス水晶とも言われている神の宝玉を二人に渡したのだった。
(私が渡したあの宝玉で、二人を守る事が出来ると良いのだけれど・・・)
神はそう呟きながら姿を消したのだった・・・
【行きはよいよい 帰りはこわい こわいながらも 通りゃんせ 通りゃんせ】
誰も居なくなった神社で童歌だけが流れていた・・・
神の宝珠の効果なのか?二人の力が強かったからなのか?は分からないが、二人はすくすくと成長し、七つのお祝いのお札を奉納することができたのだった・・・
それから二年が経過した。
「そうだ!カナ君。縁結びの白い丸石取りに行こうよ。」
「水川神社だっけ?意外と近くなのに行った事はなかったね。じゃあ、行ってみよう。ハルカ。」
「やったぁー。ありがと。カナくん。」
九歳になっても相変わらず仲の良い遥と彼方は縁結びで知られる地元の水川神社を訪れていた。
ここで白い丸石を拾って持っていると良縁に恵まれるという言い伝えがあるのだ。
「あとは、この石に名前を書いて交換すると良いんだって。」
「あれっ?ハルカ。それって学校で流行ってるだけじゃなかったっけ?」
「それでもいいのー!だってこのイシス水晶っていうんだっけ?これって他の人には見えないから、誰にでも見えるお揃いのが欲しいのー!だから早く交換しよっ。カナ君。」
そして、彼方は遥の勢いに敗北し、結局石に名前を書いて互いに交換したのだった。
その時のとても嬉しそうに石を眺める遥の姿はとても幸せそうに見え、周りの人々もそれを微笑みながらそっと見ていたのだった。
「暗くなり始めたからそろそろ帰ろうか。」
「うん、楽しかったから時間過ぎるのが早いよー。カナ君。また来ようね。」
「うん、そうだね。」
二人は水川神社を後にして家へと向かっていく。
大きくなったせいか、昔のように手を繋ぎながらではないが、仲良さそうに肩を並べながら歩く姿は昔と変わっていなかった。
しかし、運命は非情であった・・・
「ハルカ!」
「えっ?」
彼方の声に驚く遥。
その直後、遥は突き飛ばされた。
「きゃっ。」
遥は驚きの声を上げながら、彼方の方を見た。
遥を突き飛ばしたのは彼方のようだった。
彼方は険しい表情をしていたが、突き飛ばされて距離の離れた遥を確認し、安堵の表情を浮かべていた。
しかし、遥は見てしまった・・・その彼方に向かって迫り来る暴走する大型トラックを・・・
「カナ君!いやぁぁぁーー!」
遥が彼方に向かって叫んだ瞬間、二人の首から下げているイシス水晶が金色に激しく輝いた。。
そして、その光は遥を包み込んでいった・・・
(・・・が無事ならいいよ。俺も助けて貰ったし。向こうで頑張ってみます。)
(君なら大丈夫だよ、女神の・・・だから・・・【扉解放】。がんば・・・かな・・・。)
(はい!)
(・・・誰か居るの?・・・良く聞こえない・・・)
金色の光に包まれた遥は、薄れゆく意識の中で誰かが話している声を聞いたのだが良く聞き取れなかった。
そして遥はそのまま完全に意識を失った・・・
「君っ!大丈夫かい?」
「ん・・・はい・・・」
声を掛けられ目覚めた遥は、ぼんやりと辺りを見渡した。
鳴り響くサイレンの音と走り回る救急隊員が何か起きた事を物語っていた。
「えっ?一体何が起きたの?」
「タンクローリーが建設中のビルに突っ込んで爆発したんだよ。それより、どこか痛い所とかは無い?」
遥を抱き抱えていた救急隊員が説明してくれた。
確かに遥の前方が黒煙を上げながら燃えていた。
かなり大きな事故だと誰が見ても判るだろう。
「特に無いと・・・思います。」
「良かった。中々起きなかったから心配だったんだよ。一応病院に行って検査するからね。」
「・・・はい。」
まだぼんやりとしてはいるが、救急隊員に連れられ救急車に乗り込む遥に大きな外傷は見られなかった。
(うーん。何か忘れている気がする・・・それに、私は何であそこにいたんだっけ?)
不思議そうな顔をして、首をかしげる遥。
遥は必死に記憶を辿るが思い出せないようだった。
忘れているだけなのか、それとも・・・遥はまだ真実を知らないのであった・・・
桜の花びらが舞い散る四月のある日・・・
通りゃんせの童歌が流れる神社のベンチに、巨大なふ菓子と沢山の駄菓子の入った袋を抱える遥の姿があった。
近くの菓子屋横丁という観光名所で購入してきたようだ。
卒業した小学校にお土産の駄菓子を差し入れに行く途中なのだ。
あの事故から三年が経ち、遥は中学生になった。
元々可愛らしい顔だったが、それに加えて身長も伸び、もう可愛い子供というよりも美少女と言う方がふさわしい位に成長していた。
(ここに来たのは三年振りだけど、凄く懐かしいわ・・・どうしてかしら?)
小さい頃はよく一人で遊びにきた程度だし、後は七つのお祝いのお札を奉納した位の記憶しかない。
なのに、遥はこの込み上げて来る感情に困惑していた。
(この感じってあの夢と同じだわ。あの男の子の夢を見た後と同じで、懐かしくて寂しくなる感じだわ。)
あの事故後から遥は同じ歳位の男の子の夢を見るようになったのだ。
あの事故で亡くなった霊に取り憑かれてしまったのではないかと思い調べてみたのだが、あんなに大きな事故だったのに怪我人は居たものの、死人は居なかったのだ。
夢の中で男の子はドラゴンに剣や魔法を教わりながら自給自足の生活をして必死に生きていた。
ファンタジーな話が大好きな男の子の霊に取り憑かれたのかもしれないと思った遥だったが、その男の子を見ていると懐かしさと寂しさが込み上げてくるだけでなく、自分も頑張らなくてはと思い勇気付けられるのだ。
そして、いつの間にかその男の子にまた恋をしてしまったのだった・・・
続きは早目にアップしますねー。