10年後…
放課後、窓の外から部活をしている声が聞こえ帰宅部の生徒達は我先にと出ていった教室の中、5人の女子生徒の姿があった。
「ねぇ、あんた達……姫に嫌がらせしてるんだって?そんな事して許されると思ってるの?」
悲しげに、苦しそうに眉を寄せ、長いまつげで縁取られた大きな瞳に涙を浮かべた姫希を守るように立った生徒の一人が、忌々しげに顔を歪め尖った声を口にする。
「ごめんね……どうしても辛くて我慢できなくて………親友だと思っていたあなた達に裏切られて、悲しくて……」
ハラハラと涙をこぼし、嗚咽を我慢するかのように両手で口元を抑え、姫希はその場にしゃがみこんだと。
細い肩を震わせ、声もなく涙を溢す姫希に二人は慌ててしゃがみこむ。
「姫、姫は全然悪くないよ!悪いのはこいつらでしょ!」
「そうだよ!」
「……………」
いつもと同じ状況、姿を見せられて双子は眉一つ動かす事もなかった。
いつまでこの茶番は続くのかな………
心の中で溜め息をついた椿は、横に立つ桜の手をつかんできゅっと握りしめた。
すると、同じ様にきゅっと握り返してくる桜が同じ気持ちなんだと、心が少しほっこりした。
そう、可憐な容姿で周りの者の庇護欲をかきたてる姫希は稀代の女優だった。
ぼんやりと双子が3人を見つめていると、その視線に気付いた姫希の口元が……
ニヤリ、と愉しげに歪んだ。