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「えっ……」
誰かが呟いたのが聞こえた。
「あの子達が、私のせいにしようとボールを投げたのっ……投げたの……」
興奮の為か、嘘を口にする度に本当にそうだったかのように思えてきて幼女の瞳からは涙がポロポロと溢れてきた。
「姫希ちゃん………」
泣き始めた姫希に先生も回りも慌てた。すると、花瓶の割れた場所から何故か一番遠くに座っていて、幼児の力ではそんな距離も飛ばせるはずの無い事もわかるのに…
「桜ちゃん、椿ちゃん、先生言ったよね。室内でボール遊びしてはダメだって!」
「えっ……私達やってない!」
「私もっ!つーちゃんと二人でお絵かきしてたもん!」
姫希に罪を被せられそうになった桜と椿は慌てて抗議の言葉を口にするも
「どうして嘘をつくの?人のせいにするのはダメだって先生言ったよね?」
抗議の言葉が気に入らなかったのか、先生は眉をしかめ二人を怒り始めた。
何故怒られているのか理解出来ない桜と椿は瞳に涙を浮かべ、現場を見ていたはずのクラスメイト達をすがるように見つめた。だが、そこに浮かんでいたのは先生と同じ表情だった。
「姫ちゃんのせいにするなんてサイテー……」
「ちゃんと謝れよ……」
自分達に向けられる怒りの感情に、双子はどうなっているのかわからず困惑する。
「あやまれよー」
謝れ、と詰め寄られた二人は混乱し手を取り合い、身を寄せ合う事しか出来なかった。