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異世界征服物語2  作者: COCO
第一章 天界編
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#04 波乱の兆し

イカロスがミカエルの屋敷に来てから、数ヶ月が過ぎていた。

すでにユニの通う学校にも行くようになっていた。彼の才能なのか学業は転入早々にもかかわらず、トップのユニの次点につけていた。だが、どうも引っ込み思案な性格のようでいつもユニの後ろに隠れるようにしていた。そんな振る舞いだから当然周りの目は・・・


「たあー!」


ユニが模擬刀でイカロスに打ち込んでいる。


「痛い!痛いです!姉上!」


彼女の打ち込みを受けまくるイカロス。防具の上からとはいえ、ユニの打ち込みである、その威力は半端なものではなかった。


ここはミカエルの屋敷内の武道場。ユニはイカロスを鍛えようと必死に打ち込んでいた。


「イカロス、ちょっとは打ち返してきなさいよ!練習にならないじゃない!」


しかし彼は全く打ち込んでこず、ただかわし、受けるだけ。そんな彼に彼女が業を煮やした。彼をコーナーに追い詰め逃げれなくすると、容赦なく打ち込み始めた。


「姉上、ちょっとタイム!タイム!」


エキサイトする彼女に一時中止を懇願する彼。しかし、全く受け入れてもらえなかった。


「もー、そんなだから馬鹿にされるのよ!ちょっとはやり返しなさいよ!」


彼女はそう言って打ち込みを続けようとした。すると・・・


「ユニ、そこまでにしなさい」


ミカエルが彼女に中止の指示を出したのだ。彼は最近のイカロスに対する彼女の態度がおかしいことに気づいていた。それで彼女の行動に注意していたのだ。


「だって、父様、イカロスってば、ちっとも男らしくないのよ!いつもあたしの後ろに隠れてばかりで!」


彼女はミカエルに訴えた。イカロスの学校での態度が原因で自分が恥ずかしい思いをしている、もっと男らしく堂々としていてほしいと。


「そう焦るな。イカロスはこの世界に転生して間もない。まだ、自分のことがよくわかってないのだ。いずれ堂々としだすさ」


ミカエルはユニに言い聞かせた。


「お前だって知っているだろ、イカロスが素手であのケルベロスを退治したことを」


「でも、あれきりじゃない!今は全然かっこよくないわ!どうしてあの時のようにできないの?イカロスは・・・」


ユニはイカロスが本当はすごい力の持ち主であることを知っている。それだけに今の体たらくが我慢できないのだ。


「そういうな、今はそっとしておいてやろう」


ミカエルはユニにイカロスを無理に引っ張ろうとせず、そっと見守るように諭した。


「さあ、2人とも稽古はこれくらいにして夕食したらどうだ?そろそろ時間だぞ」


「わかったわ。イカロス行きましょう」


「いや、ユニ。先に行っててくれないか?イカロスは検査してから行かせるから。防具を付けていたとはいえ、あれだけ打ち込まれたんだ。どこか怪我をしてるかもしれないんでな」


そういうとミカエルはユニを先に行かせ、イカロスには防具を脱がさせた。


「どれイカロス見せてごらん」


ミカエルはイカロスの体をよく観察した。しゃべらず大人しく検査を受けるイカロス。打ち込まれた箇所は若干赤くはれていたが、大したことはなかった。


(こいつ、やられてる振りをしながら、防具の硬い部分に攻撃を誘導して、ダメージを最小限に抑えてたな)


ミカエルは、イカロスの非凡な才能を見抜いていた。


「イカロス、もういい。治療するほどの怪我はない。さあ、食事に行ってきなさい」


イカロスは早々と着替えるとミカエルに一礼して食堂へと向かった。


その後姿を見届けるミカエル。そんな彼の後ろから声がした。


「どうしたんでしょうね、イカロスは?あれだけの才能を持っているのに」


その声の主はガブリエルだった。彼も最近のイカロスの評判を聞いて心配していたのだ。


「わからん、まだ勝手が分からず戸惑っているのかもしれん。だが、もう数か月過ぎた。戸惑うにしては長すぎる・・・」


「まだ様子見ですな。それはそうと兄者、悪い知らせです。今度のオリンポス族の来訪を狙って魔界の手の者が何かしら事を起こそうとしているようです」


「なに?サタンがまた動き出したのか?」


「まだ噂の段階です。具体的なことは何一つわかっていません。しかし、訪問先の施設には十分な警戒が必要です」


「それは手配しよう。だが、奴らの目的がはっきりしなければ手の打ちようがない。引き続き調査を進めてくれ」


「わかりました」


ガブリエルはミカエルに一礼するとすぐに仕事に戻っていった。


(嫌な予感がする)


ミカエルは窓から空を見上げながら深いため息をついた。





オリンポス族、数多の神族の中でもその実力は随一と目される神族である。その一人がここカナーンに表敬訪問することとなっていた。


「ヘルメス様、お起きください。もうすぐカナーンに到着します」


従者の天使が馬車の中でヘルメスに目的地への到着を告げた。ヘルメスは不機嫌そうに目を覚まし、大あくびをしながら、従者に向かって話し出した。


「やっと到着か。面倒なものだな。一々馬車でなければ移動できないとわ」


ヘルメスは下界と違い天界では移動に制限があることが不満なようだった。


ヘルメス、オリンポスの長ゼウスのメッセンジャーと言われている神である。役どころとしては外交官、スパイというところか。

天界が移動に制限があるのは、各神族の力を制限するためである。それぞれがその能力をフルに発揮したら、天界はあっという間に地獄の世界と化してしまうだろう。移動力を制限していれば、迂闊な行動はできなくなる。天界の平穏を保つための安全弁なのだ。


「そういいますな。魔界の連中に暴れられるよりはマシでしょう。それに案外いいところそうですよ、ここは」


従者は外の景色を見るようにヘルメスに促した。


「そうなのか?」


そういいながらヘルメスは外を眺めた。そこにはカナーンの美しい風景があった。街並みは美しく整い、ゴミ一つ落ちていなかった。人々の顔からは笑みがこぼれていた。


(幸福度高そうだな)


ヘルメスがそんなことを考えていた時だった。突然、なにかを感じ外を振り返った。


「どうなさいました、ヘルメス様?」


従者が怪訝そうに問いかける。


「いや、今なにか感じたんだ。なんだか懐かしい感じだったな。危険の類ではないぞ」


そういいながら、馬車の外をキョロキョロと見渡す。しかし、それらしいものは見当たらなかった。


「長旅で疲れたのでしょう、もうすぐ宿泊先に到着ですよ」


従者には疲れのせいにされてしまった。だが彼がこの手の気配を見逃すことはなかった。


(ここにはなにかあるんだよ、きっと)


そんな二人を乗せた馬車はカナーンの街並みに消えていった。





「イカロス?どこ?」


「姉上、ここですよ!」


ここはカナーンの中央市場。ユニ、イカロスの2人は屋敷の者たちと買い物の手伝いに来ていた。


「姉上、さっきの馬車見ました?すごく豪華できれいでしたよ。周りに何人も天使を従えて」


「それがきっと今日来るお客様よ。オリンポスの偉い神様みたいよ」


ヘルメスの宿泊先はミカエルの屋敷なのだ。その歓迎の準備で屋敷はてんてこ舞いの状態だった。それで彼らまで手伝いに駆り出された次第なのだ。


イカロスは両手いっぱいに買い物を抱えていた。対してユニは手ぶらである。まさに2人の今の関係を物語っていた。


「姉上、ちょっとは持ってくださいよ~」


情けなくイカロスがユニに訴える。


「じゃあ、これからはもっと男らしくする?」


その質問には答えづらい。


「いや、でもそれとこれとは関係ないじゃないですか!」


「じゃあ、ダメ!」


ユニは笑いながら、イカロスの前を走り出した。


「イカロス、早くしないと置いていくわよ」


「そ、そんな、待ってくださいよ!」


ユニはさっさと屋敷の馬車に向かい走り出し、イカロスはよろよろとその後を追った。





2人を乗せた馬車が屋敷に戻ると、もうヘルメスの馬車は到着していた。


「あちゃー、もう着いてるじゃない」


「どういうことですか、姉上?」


「あたし、父様から今日のお客様を迎えるにあたって、父様たちと一緒にいろっていわれてたの。色々着飾って。だから買い出し終わったら準備するつもりだったんだけど、もう着いちゃってるし・・・」


馬車が屋敷前に到着すると、ユニは使用人に引っ張られるように屋敷に連れ込まれた。


「お嬢様、お早く支度してください。ミカエル様がカンカンですよ!」


使用人に尻を叩かれるユニ。


「イカロス、お前も早く支度するんだ!やることは山ほどあるぞ!」


イカロスはユニと同じ学校に通ってはいるが、屋敷での立場はあくまで使用人である。

学校では、ユニの遠縁ということになっているので、「お嬢様」とは呼ばず「姉上」と呼んでいるのだ。


その後も屋敷には続々と馬車が入り込んできた。今日の晩餐会に招かれた者たちである。

近隣の大物たちが集まっていた。

イカロスも会場では給仕としてでなければならない。

彼も大急ぎで着替えさせられ、使用人たちの中に入っていった。





晩餐会は盛大に始まった。

会場にはゆったりとした音楽が流れ、天界の各地の豪華料理がこれでもかと振る舞われていた。

主賓以下関係者や大物たちが一通りスピーチを終えると歓談が始まった。

主賓であるヘルメスの周りにはここカナーンの大物天使、神族たちが群がっていた。

だがそのヘルメスの様子がおかしかった。キョロキョロと辺りを見回し、何かを探しているようだった。


「ヘルメス殿、いかがなされた?」


怪訝に思ったミカエルが話しかける。


「いや、どうもこの地に来てから妙に何かを感じるんです。なんだかとても懐かしい感じが。はっきりと誰というのはわかりませんが」


ヘルメスはこの会場に過去につながりのあった人物がいるのではないかと思っていたのだ。


「さて、ここカナーンの天使、神族は滅多に他の地域の神と交流がありませんので。転生前の下界においてのつながりなら、ないとは言えませんが」


天界への転生前のその者の過去生を暴くことはタブーとなっている。どんな過去を持っていたとしてもそれで有利不利があってはならないというのが暗黙のルールだからだ。どこでどんな人生を送ったかまではわかるが、具体的な人物の特定はしてはいけない。それらをすべて把握しているのは天界において大神ただ一人である。もちろん、知れてしまうこともある。本人がなぜか覚えている場合だ。時々いるのである。さらに、下界でつながりの強かった者同士が何かの拍子で思い出してしまう場合である。しかし、これらは大神がなにかしら意図をもってそうしているのである。

それゆえ、ミカエルをはじめ、ほかの天使も、もちろんヘルメスも、天界にいる者たちが転生前に下界の誰だったかは知ることができないのである。


「気のせいかもしれないので、お気になさらず」


ヘルメスは気を取り直し、周りの者たちとの歓談を再開した。

それからしばらくして正面扉が開き、会場からどよめきが起こった。


「ミカエル様のご息女『ユニ』様のおなりです」


司会がユニの登場を告げた。その美しさに、周囲の視線は釘付けとなった。

ヘルメスの前に来ると丁寧なお辞儀の後、微笑んだ。それを見て驚くヘルメス。


「ミカエル殿は大変な姫をお持ちだ。この歳でこの美しさとは。ペガサス族にも同じ年頃の美しい姫がおられますが、それと同等かそれ以上かと。これからどれだけ美しくなられることやら」


ヘルメスの言に上機嫌になるミカエル。


「なあに、普段はお転婆で困っておりまする。これの旦那になる男はさぞ苦労することでしょうな」


はははっと笑うミカエル。


「もしかしたらこのかもしれませんな。私が感じていた何かとは。薄っすらと何か感じるのです」


ヘルメスは下界において彼女となにかしら関わりがあったのかもしれないと感じていたのだ。


「初めましてユニ、私がオリンポスのヘルメスです。明日はあなたの学校も訪問する予定です。この地一番の学校だそうですね」


そういうと恭しく礼をした。


「確かに美しい姫ですな。成長すればさぞよい子を産むでしょうな」


突然ヘルメスの後ろで声がした。その気配をヘルメスもミカエルも感じることはできなかった。

突然の声に驚く彼ら。ミカエルが尋ねた。


「失礼、見かけない顔ですがどちら様ですかな」


「なに、名乗るほどの者ではありません」


そういうとその者は踵を返し彼らから離れていった。


「ラファエル、ラファエル!」


ミカエルがラファエルを呼んだ。ラフェエルとは、ミカエル、ガブリエルと並ぶ大天使である。主に戦闘を得意とし、戦となれば軍団の先頭に立って戦う戦士でもある。普段は下界でいうところの警察庁長官のような役割を担っている。


「さっきの男は誰だ?見覚えがない顔だぞ」


「今、名簿で確認していたところだ。だが、名簿にはそれらしい名前が見当たらないんだ!」


つまり会場に不審者が侵入していたということだ。これは会場の警備を担当していたラファエルとしては手痛い落ち度であった。


「すまん、ミカエル。奴をすぐ探す」


「いや、君の警備を潜り抜けて会場に侵入したほどの者だ。おそらくとっくに逃げおおせているだろう」


ミカエルはその男の力量を見破っていた。


「会場や招待客に異変がないかすぐに確認してくれ。なにかしているかもしれん」


「わかった」


ラファエルはすぐさま部下たちに隠密に会場の検査をするよう指示した。


「ヘルメス様、大変失礼をしました」


ミカエルはヘルメスにこの不手際に関して謝った。


「いえ、謝らないでください。このようなこと私にとってはよくあることです。それにあの男、どこかで見たことのある顔です」


ゼウスの目であり耳である彼は各地を渡り歩いている。このように何者かに突然接近されることもしばしばなのだ。そして見聞も人一倍ある。あの者もどこかで見たかもしれないのだ。


「ただ、残念ですが、名前は思い出せません。お役に立てず申し訳ない」


「いえ、そのようなことはおっしゃらずに。しかし、何者で何が目的だったのでしょう?」


「おそらく、我々へのあいさつでしょう。相当自信があるのでしょうね」


ヘルメスはこの時点で、奴が誰かおおよその見当は付けていた。


(魔族なら思い当たる名前もあるな・・・)


しかし、余計な発言で周囲を混乱させるわけにはいかなかったので、それを口にすることはなかった。





ミカエルたちがそんなことに気を取られていたため、忘れ去られた者がいる。


ユニである。


ユニは歓談に加わらぬミカエルたちの代わりに、その人だかりの中心にいた。特に話をしなくても、おしとやかに微笑んでいれば、それだけで人々は盛り上がった。他愛もない質問にも愛想笑いで返し、それ自体が彼らの心を掴んでいた。『可愛いは正義』を地でいっていた。


しかし、ものには限界というものがある。普段お転婆なユニにとって、おしとやかにしているのは大変なストレスであった。段々、この状態に我慢できなくなっていた。


(ああ、疲れる、つまんない、だからこういうところに出るのは嫌なのよ。そういえば、イカロスの姿が見えないわね、どこにいるのかしら?)


ユニはキョロキョロと会場を見渡した。そして会場の給仕として、空いた瓶や皿を回収して回るイカロスを見つけた。すぐさま、イカロスに近づくユニ。そしていきなりイカロスの手を取り引っ張った。


「イカロス、そんなのいいからこっち手伝って」


いきなり引っ張られて困惑するイカロス。


「何事ですか、姉上」


「あたしの相手をして。ひとりじゃもたないから」


「で、でも僕、仕事が」


「いいから!」


強引に客人の輪に連れ込まれるイカロス。その瞬間、女性陣から歓声が上がった。そう、イカロスは目聡い女性たちからすでにマークされていたのだ。ちょこちょこ話しかけられてはいたが、仕事中ということでかわしていたのだが、輪に入れられたことで一斉に話しかけられだしたのだ。


女性陣からちやほやされるイカロス。ユニはしまったと思ったが、もう後の祭りだった。


かわいい、かわいいと声をかけられ、照れるイカロス。


ユニの顔がだんだんふくれっ面になっていく。


(なによ、イカロスったらデレデレして。あんな子だとは思わなかったわ)


そんな中、突然イカロスの前にヘルメスが現れた。


「こんばんわ、坊や。名前は?」


突然の質問に戸惑うイカロス。


「イ、イカロスと申します。ヘルメス様」


「私を見て、何か感じることはありませんか?」


「いえ、特に何も・・・」


答えにくそうに答えるイカロス。


「そうですか・・・わかりました。期待してますよイカロス」


「はい・・・あ、ありがとうございます・・・」


わけもわからずキョトンとするイカロス。それはユニも同様であった。


周囲の者たちもイカロスがヘルメスから直接声をかけられたことに驚いていた。



その後、晩餐会は何事もなく終了した。





結局、会場にも招待客にも何も問題がなかった。あの男の正体も目的もわからぬままだった。ヘルメスも屋敷内の部屋に引き上げていた。


「で、どうでした、晩餐会は?」


従者の天使がヘルメスに感想を聞いた。


「ひとつ収穫があったな。気にある気配がするって言ってたろ?あれが誰だかわかったんだ」


「ほう、どなたです?どこで会われたのですか?やはり下界ですか?」


「そう、聞くなよ。誰だかわかっちゃうじゃないか。特定しないのが暗黙のルールだろ?」


「これは失礼しました。でもヒントくらいは」


「ヒントか、そうだな、下界で会った子だよ。でもおかしいんだ。なんで今頃になって神族に転生したのか。本来ならとっくに天界こっちに来ていてもおかしくないはずなのに・・・」


そういうとヘルメスは黙り込み、考え込みだした。


(私の感覚が間違いないなら、あの気配は彼だろう。だがなぜ今なんだ?とうの昔に神に列せられてしかるべきなのに。女神アテナあねうえなら何か知っているかもしれん。今度聞いてみるか・・・)


そして思い出していた。彼の勇猛な戦いぶりを。


(あなたの子孫はすでに神に列せられているんですよ・・・)


ヘルメスは、なにか複雑な因果を背負っているだろうイカロスが不憫でならなかった。





カナーンの町はずれに廃棄された教会がある。だがその地下室からはわずかに光が漏れていた。

そこには神父の格好をした顔色の悪い男がおり、先ほどの男を迎え入れていた。


「おかえりまさいませ。ご無事でなによりです。公爵様」


「ああ、大変だったよ。侵入するだけで一苦労だ。とてもじゃないがそれ以上のことはできなかったよ」


「警備していたのがラファエルでは仕方ないですね。ほかにミカエル、ガブリエルもいる。さすがの公爵様でも分が悪すぎます」


「ああ、だから挨拶だけして引き上げてきた。だが収穫もあったぞ。明日のヘルメスの訪問先がわかった。それにすごい上玉もいた。あれはいい女になる、俺のいい嫁になるわ!」


「さらうんですか?」


「ああ、明日ヘルメスの訪問先にいるんでな。ついでにと思ってる。警備もあの屋敷ほどではないだろうからな」


「わかりました。部下に手筈を整えさせましょう」


「よろしく頼む」


そういうと男は不敵な笑みを浮かべていた。

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