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異世界征服物語2  作者: COCO
第一章 天界編
19/21

#19 ベレロポーン

薄暗い部屋、アスタロトはひとりでいた。


「アテネより帰還しました。あの馬鹿もなんとか連れて帰ることができました」


彼は誰かと話しているようだった。


「ご苦労、公爵。奴は首に選ばれなかったようだな」


明らかにアスタロトではない声が部屋に木霊した。


「ははっ、全て御言いつけ通りにしましたが、よい結果には至りませんでした」


「仕方あるまい。次を用意するとしよう」


「奴を見切るのですね?」


「最後のチャンスを与えよ。それでダメなら、後はお前の好きにしろ」


「ははっ!」


アスタロトはその声に最敬礼をした。


会話はそれで終わった。


だがアスタロトはその後もひとりでその場でブツブツ何か言っていた。


(好きにしろと言われても、あんな男どうすればいいんだ?なにか使い道があるのか?)


あれこれ考えてみても思いつかない。


途方に暮れるアスタロトであった。



◇



イカロス、ユニが学校より帰宅すると、屋敷はパーティーの準備が進んでいた。もちろんテンマを主賓とするものである。


「兄さま、姉さま~」


屋敷から2人の女の子が駆けだしてきた。ガブリエルの双子の娘である。

人間なら幼稚園児くらいだろう。今日のパーティーで彼女たちは社交デビューするらしい。


「フレイ、フレイア」


ユニが2人を呼んだ。

これが彼女たちの名前である。


「兄さま~」


「姉さま~」


それぞれがイカロス、ユニに抱き着いた。屋敷にいる子供はイカロス、ユニ、フレイ、フレイアの4人だけであった。自然と仲は良く、ほとんど兄妹、姉妹の関係だった。


特にイカロスは最近の活躍ぶりから、すっかり彼女たちのヒーローとなっていた。


「2人ともいい子にしてた?」


イカロスが優しく話しかけた。


「今日はね、キレイにして、パーティーに出るのよ!兄さまと姉さまと一緒に!」


2人はよほどうれしいのかはしゃぎまくっていた。


「イカロス」


屋敷の方からイカロスを呼ぶ声、ガブリエルである。

彼はイカロスに近づいてきてた。


「イカロス、今日は給仕ではなく、こちら側の者としてパーティーに出席してもらう」


「えっ、僕がですか?」


「そうだ、頼んだぞ」


「よかったわね、イカロス」


そう声を掛けるのはユニである。

イカロスはこの屋敷で開かれるパーティーでは、いつも給仕として参加していたからだ。


「僕なんかが出席してよろしいのですか?」


[そんなに謙遜するなよ。お前はもう有名人だ。胸を張っていいんだよ。それとな・・・」


ガブリエルがイカロスに耳打ちしだした。


「今日の主賓はお前に会いたがってるんだ。だが、周りの目がある。くれぐれも話題には気を付けてくれよ」


ガブリエルはそれとなくイカロスに釘を刺した。そしてフレイ、フレイアを連れて屋敷に戻っていった。


イカロスはユニに振り返ると


「ユニ、今日はテンマが来るんだよね?僕に上手くできるかな?」


経験の少ない舞台に放り込まれるのだ。さすがのイカロスも緊張していた。


「大丈夫、アテネのときのようにすればいいのよ。それに何かあってもあたしがフォローするわ」


ユニはイカロスを安心させるように振る舞った。が内心は・・・


(テンマの思う通りになんか絶対させないんだから!)


邪魔する気満々のユニであった。



◇



薄暗い地下教会、アスタロトとシェムハザはそこにいた。


「ところで、シェムハザ、あなたあのペガサスの先祖返りと知り合いだったんですよね?その辺をもっと詳しく教えてくへませんか?これからの作戦のために」


アスタロトはシェムハザにペガサスとの過去について聞いていた。


「前にあいつと協力してキマイラを倒したことは話しよな?」


「そう、そこまでは聞きました。それ以降のことが聞きたいのです。あのペガサスとアテナの協力があるならかなりのことができたはず」


「あいつ、俺にべた惚れだったんだ。最初に会った時から。だから俺もあいつのことが可愛くて、あいつやアテナの期待に応えようと必死に頑張ったんだ。おれにケンカふっかけて来たやつらをやっつけたり、俺に従わない奴らをやっつけたり」


「ほうほう」


「で、俺に刃向かう奴らはほとんどいなくなったんだ。あいつもアテナも喜んでくれたぜ。さすがだ、よくやったって」


「そうですか、それは恐れ入りました」


「で、もう地上じゃ俺に勝てるやつなんていないだろう、なら次は天界だなと。あいつと一緒に天界に行って神をぶっ倒してやろうと」


「ほう、それはなかなか大胆ですな」


「だが、やっぱり神は強い。今まで俺が相手にしていた奴らとは段違いに強い。俺と神の戦いは一進一退 の大攻防だった。そんな中、俺に向けて放たれた神の攻撃があいつを捉えようとしたんだ。可愛いあいつに怪我はさせたくない。俺は反射的にあいつを庇ってた。俺は神の攻撃をマトモに喰らい、宙に投げ飛ばされた。あいつが落ちていく俺を寂しそうに見ていたのを、今でもおぼえているぜ。そして俺は地上に落とされたんだ。でも、後悔はしてないぜ。俺はあいつを守ったんだから。そして、気がつくと俺は天界に転生していたんだ。」


「なるほど、そうだったんですか。私が聞いていた話とは大分違いますがね---」


「えっ、どういうこと?」


「あ、いえいえこっちの話です。貴重なお話ありがとうございました。で、その話を聞いた上で、今後の作戦なんですが・・・」


その言葉に注意を払うシェムハザ。アスタロトは一呼吸置いて言った。


「さらっちまいましょう、ペガサスを」


「えっ?」


唐突なアスタロトの言葉に驚くシェムハザだった。



◇



ガサガサ茂みが揺れている。


「いくらなんでもこりゃ無謀すぎだろ?」


シェムハザがアスタロトに文句を言った。


「何を言うのです!こんな繊細な作戦ほかにありませんよ!いいですか、魔力、神力の類が一切ないこの作戦なら結界内でもお構いなしです。だれにも感知されません。この圧縮空気に押し出されたあなたはペガサスをさらい、そのまま脱出するのです。あなたに気付く者はありません。気付いた時には、あなたもペガサスもこちら側に来ているという寸法です。ああ、なんて美しい作戦でしょう」


神族は少なからずオーラともいうべき神力を身にまとっている。結界とはそれを感知し相手を見つける。ただし障壁として機能するのは神力を強力に使った時だけなのだ。


つまりこの作戦のように、シェムハザを神力以外のもので撃ち出す場合、結界はなんの障壁にもならない。シェムハザのまとう微弱な神力だけでは、存在を感知するくらいしかしないからだ。


「さあ、はやくこの筒の中に入って!ペガサスに照準を合わせますよ!うひょひょひょひょ!」


アスタロトは嬉々と作業を進めた。部下の蝙蝠男たちはせっせとポンプを押して空気を圧縮していた。


「そろそろです、必ず現れますよ、彼女(くび)が」


アスタロトは双眼鏡を片手にパーティーの推移を見守っていた。



◇



パーティーは順調に進んでいた。

テンマ以下ペガサスの有力者は、こぞって参加していた。

カナーン側も近隣の大物が集まっていた。

テンマの周りはその大物たちが、これを機にお近づきになろうとすり寄っていた。

そのためかイカロスに話しかけに行くゆとりはなかった。


(な~んだ。これなら心配することもなかったわ)


ユニはテンマを横目で確認しながら、イカロスを探した。


(いた)


イカロスは相変わらず女性陣に囲まれていた。ユニはホスト役のミカエルの娘として、招待客の相手をしなければならず、さっきまで愛想を振りまいていた。そのためイカロスとは別行動だったのだ。


「イカロス~~」


呼びかけつつ、イカロスの輪に入っていくユニ。


「フレイとフレイアがそろそろ出番なの、戻って」


ユニは仕事を盾にイカロスを引き抜いた。

2人とも笑顔を絶やさず、不快感を与えずにその場を離れた。


「ふ~~っ、疲れるね」


イカロスは慣れない仕事に少々へばっていた。


「あたし、いつもやってるんですけど~~」


ユニが多少不満げに応えた。


「あ、まあ、姉さまはこういう場は百戦錬磨だし・・・」


「こういうときだけ、姉さまなのね」


ユニのつっこみにタジタジのイカロス。


「まあ、いいわ。それよりあの子たちのエスコートよ、早く行きましょ」


フレイ、フレイアがデビューする際、一緒に手をつないで花道を歩かなくてはならない。その役目がイカロスとユニなのだ。彼らはそのまま、主要な招待客にあいさつ回りとなる。



フレイ、フレイアが待機している部屋に向かうイカロスとユニ。

会場から死角になる場所にさしかかると、ユニはだれも見ていないことを確認した上で、いきなりイカロスにキスをした。


呆気にとられるイカロス。


「さっきのはこれで許してあげる」


こういう大胆さがユニらしい。


「さっさと行くわよ」


そういうとイカロスの手を引っ張ぱるユニだった。



そして・・・


「見つけた」


会場のはずれの木のそばに、冷たいオーラをまとった女性がひとり佇んでいた。

彼女の目はテンマを捉えてい放さなかった。


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