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魔族の生き方

魔族のボス登場

 魔族領の首都、サータス。



 魔城の会議室。

「今回の議題は、解っているわよね?」

 そう問い掛けるのは、一桁の何処にでも居る子供にしか見えない少女だった。

 フルアーマーの魔族が答える。

「人間に奪われた領地、ゲシュレストの奪還」

 少女が微笑む。

「その通りよ、私の頼りになるテンカウントが四、フォーマ」

 フルアーマー、フォーマは、何の反応をしない。

 その代わりとばかりに向いにすむ虎をイメージさせる男が言う。

「そのテンカウントも、九のヴァンデストが抜けちまったな」

「五のゴーターの言うとおり、早々に欠番を補う必要があります」

 眼鏡をかけた知的な美女の言葉に嬉しそうな顔をするのは、拳銃を磨いていた男。

「八のエッグさん、取り敢えずは、欠番の九には、元、十のテンナーが入るって事で良いですよね?」

 それを聞いて女性の魅力を溢れさせる美女が妖しい笑みを浮かべる。

「あらあら、そんなにがっついちゃ駄目よ。女も地位もじっくりせめないとねそうでしょ七のセーエロ」

 ピエロの仮面を被った魔族、セーエロが頷く。

「はい、その通りです六のセック様」

「皆様、そういうお話は、全て主が決める事ですよ」

 少女の後ろに立つメイドが曇り一つない笑顔で言うと、卓についていた魔族達が怯む。

「そう、皆を怯えさせるな二のセンド」

 一見すると優男に見える男の言葉にメイド、センドが困った顔をする。

「そんなつもりは、無かったのですが、一のダン様」

 優男、ダンが苦笑する。

「君は、主の事になると一切の手加減て物をしらないからな。それより、三のサトール。ヴァンデストを倒した者について何か解ったか」

 盲目の老人、サトールが語る。

「かの者は、白牙に侵食されし者と思われます」

 それを聞いて少女が驚いた顔をする。

「嘘! あの白牙に侵食されし者なの。いやはや、死に辛いヴァンデストが塵一つ残さず消されるわけだね」

 エッグが訊ねる。

「主は、その白牙に侵食されし者をしって居られるのですか?」

 少女が頷く。

「界を越える知識を持ってる者の中では、有名よ。下位世界にも関わらず上位世界の住人を打ち倒すハチバって組織の一員で、六極神の一柱の第一使徒である白牙の力を使いすぎて侵食された、生きた世界破壊爆弾てね」

「おいおい、ずいぶんと物騒な奴がやってきたな」

 ゴーターの言葉に少女が肩を竦める。

「まあ、そう簡単には、爆発しないだろうけど、交戦する時は、爆発させないように、一気に殺しちゃってね」

「そうなるとやはりゲシュレスト奪還には、テンカウントが出張る必要があるな。だれかやりたい奴は、居るか?」

 ダンの言葉に緊張が走る。

 ヤヤの存在を懸念し、躊躇している訳では、ない。

 正反対なのだ、テンカウントの一角を潰した相手を葬り、領地を奪還するという大金星を得るチャンスをどう手にするか、牽制をしているのだ。

 その様子を察した少女が指を鳴らす。

「入ってらっしゃい」

 すると翼を生やした人の姿をした魔族が入ってくる。

「新テンカウント候補よ。その実力があるかどうかを今回の件で試したいと思うんだけどどう?」

 良い訳が無かった、テンナーなど何か意見を言おうとした程だったが、少女の隣に控えるセンドの眼光が意見を言わせる空気を破壊する。

「うんうん、皆が納得してくれたみたいだから、あんたがやりなさい。上手く奪還を成功した暁には、ヴァンデストの代わりの九とし、前線を任せるわ」

「この翼人、ルッシン。必ずや偉大なりし魔族の支配者、金色眼コンジキガン様に勝利の御報告をあげさせてもらいます」

 翼をもった魔族、ルッシンの言葉にうんうんと頷く少女、金色眼がその名が示す金色の目を輝かせていう。

「期待して待ってるわ。さて、今日もお勤めしないとね。捧げ者は、容易出来てるわよね」

 センドが頷く。

「はい、元人間領から厳選した者達を連れて来てあります」

「可愛そうな子達。でも全ては、偉大なるあのお方を喜ばす為なの。その犠牲は、明日の世界を輝く糧になるわ」

 金色眼の芝居染みた言葉にセックが微笑する。

「もう主は、自分だって大好きな癖に」

 舌を出す金色眼。

「そうね。大好きよ、年端も行かない幼女を犯し殺す事をね」

 そして金色眼の退室に付き添ってセンドが出た後、テンナーが残ったルッシンに告げる。

「新入り、お前がどんな手を使って主にとりいったか知らないが、テンカウントは、絶対実力主義だ。それを忘れるな」

 ルッシンも応じる。

「はい。ですから私は、更なる高みを目指すつもりです」

 室内をギスギスした空気が満ち溢れていくのであった。



 元魔族領、ゲシュレスト。



「攻撃が止んだね」

 ヤヤがそう告げると多くの書類に囲まれていたアナコスが答える。

「大きな奪還作戦の予兆ですな」

 ヤヤが面倒そうな顔をする。

「こっちで無用な権力争いがあるように向うだってそれは、ある筈。だからこそ先走る奴等が居た。それが止まったって事は、組織だった奪還作戦が始まるって事だけど。こっちの状況は、どうなの?」

 アナコスが外を見る。

「ニーデッド国王の尽力で他国の兵も派遣される事になりましたが、残念ですが、間に合わないでしょう」

 ヤヤが呆れ顔になる。

「この状況で出し惜しみしてなんになるんだろうね?」

 アナコスが書類を整理しながら答える。

「それでも、武器の補給などが行われている現状は、助かります」

 ヤヤも資料を流し見していう。

「ランスットの奴等、どんだけ武器を隠し持ってたんだって感じだけど」

 アナコスがいう。

「ランスットが大国である一番の理由は、保有する鉱山の多さ。それを元に多くの武器を作ることで戦争に勝利してきました。しかし、魔族との戦いで多くの兵を失って、保有する武器も宝の持ち腐れになっていたのです。そこに今回の話、武器を大量にこちらに差し出す見返りに多くの負担金を得ようとしているのでしょう」

 ヤヤが肩を竦める。

「この状況で金勘定できるんだから良い根性しているよ。まあ、それでも武器が無いよりまし。それと食料のほうだけど大丈夫なの?」

 アナコスが頷く。

「そちらは、ミータッド王国から来ている」

「ああ、カナルスさんから人材育成が間に合ってないからって詫びの文章つきの奴ですね。あの人も本当に苦労人ですよね」

 ヤヤの言葉にアナコスが苦笑する。

「カナルスさんが苦労できるのは、君が暴れまくった所為ですがね」

 ヤヤが不思議そうな顔をする。

「苦労出来るって表現も不思議ですね」

「前王が健在でしたら、カナルスさんがその辣腕を発揮することは、出来ませんでしたから」

 アナコスの説明にヤヤがいう。

「同じ理屈で現ランスット国王を潰したら駄目ですか?」

「不許可です」

 あっさり却下するアナコスであった。



 数日後。

「敵襲です!」

 監視兵の言葉にアナコスが問い返す。

「敵の規模は?」

「数は、千を越す程度、ただし全て翼をもった魔族です」

 監視兵の言葉にアナコスが鋭い視線になる。

「なるほど、そういう手で来ましたか。前線の兵士に伝達、一度後退、武装を強化、特に硬度の高い盾の装備を行い、再出撃。弓部隊は、上層部に異動、武装の不足した兵士は、弓部隊のサポートに入れ」

 命令が素早く伝令される。

「意外な展開で来たね。でもこれだったらヤヤのホワイトファングで全滅って展開もありじゃない?」

 ヨシの言葉にヤヤが手を横に振る。

「相手もそれを承知しているみたいで、かなり拡がって展開してる。撃つとしてもここぞって時じゃないと」

「はい。もし撃つとしたらこちらでタイミングを指示しますのでそれまでは、止めてください」

 アナコスの言葉にヤヤが頷く。



「早い対応だな」

 忌々しそうに戦況を見るルッシン。

 弓矢や魔法の攻撃といった一部の攻撃以外届かない位置からの一方的な攻撃、実質被害以上の精神的プレッシャーを与える予定だったルッシンだったが、アナコスの素早い指示で、多くの兵が上空からの攻撃に対抗手段を得てしまった為、想定した被害を出せずに居た。

「このままでは、悪戯に時間をかける事になってしまう。そうなれば……」

 ルッシンが一番懸念しているのは、人類側の反撃では、無かった。

 自分の親族の娘を金色眼に差し出すという外道な事をしてまで手に入れたこのチャンスをテンカウントに奪われるという不安だった。

「やはり多少の被害を覚悟の上、攻めるか」

「そういう、作戦の変更は、あまりお勧めしないよ」

 いきなりの声にルッシンが前を向くと、グリフォンの背に乗るヤヤが居た。

「貴様が白牙に侵食されし者か。お前を殺せば、テンカウント入りは、間違いないな!」

 不敵な笑みを浮かべて翼を広げ、その黒い羽根を飛ばす。

 ヤヤは、グリフォンを足場に跳び避ける。

 足場にされていたグリフォンは、ルッシンの羽根で絶命する。

「仲間殺しは、感心しないよ」

「五月蝿い、お前の足場になり、利敵行為をしたとして処分しただけだ!」

 ルッシンは、無茶苦茶な理屈で攻撃を続ける。

 ヤヤは、周囲の飛行可能魔族を足場にどんどん避けていく。

「何故、当たらない!」

 ルッシンの言葉にヤヤが嫌味をこめて笑顔で告げる。

「簡単、あちきが最初から避けるの優先して距離がある魔族の上にしか居ないから。自分の射程くらいちゃんと把握したら?」

「黙れ!」

 一気に詰め寄るルッシン。

 周囲に足場になる魔族が居ない事を確認した上、自由に空を飛べる利点を使った特攻の筈だった。

 魔族から飛びのいたヤヤが空中を蹴った。

『イカロスキック』

 空中で方向転換して一気にルッシンの背後を取るヤヤ。

『ガルーダ』

 腕のふりで生み出した強化突風がルッシンを捕らえ空中で大勢を崩させる。

『アポロンビーム』

 ヤヤの指から放たれた熱線がルッシンの羽根を貫く。

「くそう!」

 苛立ちながらもルッシンは、自ら距離をとる。

「そうそう、最初に言っておくけどあちきは、今回、ホワイトファングを使わないよ」

「そんな虚言で騙されると思ったか!」

 ルッシンの主張にヤヤが落下しながら肩を竦めるって器用な事をする。

「したくても出来ないんだよ。こっちの通常戦力じゃこの数の飛行可能魔族を倒せない。つまり、あちきのホワイトファングは、撃退の為の切り札で、あんた一人の排除に使えないんだよ」

「ふざけるな! 私が雑魚以下と言うか!」

 憤慨し、落下中のヤヤに向って回避不能と思われる程の羽根を放つ。

『ガルーダツイン』

 両手で生み出した突風で、自分に向ってくる羽根を逸らす。

 そして、ルッシンが放った羽根は、魔族に次々と命中していく。

「ご協力感謝します!」

 礼儀正しく頭をさげるヤヤにルッシンが歯軋りをする。

「手加減は、此処までだ! 我が真の力を見よ!」

 両手を掲げ空気を収束しはじめるルッシン。

「さきほどまでの攻撃とは、訳が違うぞ!」

 ヤヤは、右手をルッシンに向けた。

 その右手が白く光るのを見てルッシンは、自分がヴァンデストと同じ条件になっている事に気付き慌てて下降してしまった。

「何で人の言った事を信じないかな。あちきは、ホワイトファングを撃たなかったのにね。 『フェニックス』」

「しまった!」

 急下降の勢いを殺せずルッシンは、下降方向に飛んでくるヤヤが放った炎の塊に直撃してしまう。

『イカロスキック』

 ヤヤも下降を加速してルッシンを捉える。

『トールランス』

 電撃が篭った蹴りがルッシンに命中し、体を痺れさせ、そのまま地面に激突して絶命させるのであった。

 ルッシンの死体を掲げヤヤが告げる。

「指揮官が居なくなったけどまだやる?」

 一斉に逃走を開始する魔族達であった。

 アナコスの元に戻ったヤヤが言う。

「今日の撃墜王ってあいつだよね?」

 ヤヤが外のルッシンを指差す。

「こっちの攻撃で落せたのは、一桁未満。貴女が倒したのも指揮官のみ。しかし、地面には、百近い死体が落ちてますからそうなります」

「勲章でも贈る?」

 ヨシの軽口に苦笑を浮かべるヤヤとアナコスであった。



「勝てるとは、思ってなかったけど、まさかここまであっさりと撃退されるなんて予想外ね。貴女は、どうおもう?」

 壁に羽根え縫い付けられた翼人の少女が怯えきった顔で懇願する。

「こ、殺さないで。助けて、ルッシン叔父様!」

「だからそのルッシン叔父様は、死んだのよ?」

 愕然とした表情で絶望する少女。

「最後の希望を絶たれた良い顔ね。その顔は、忘れないから安心して死んで」

 金色眼が指を鳴らすと翼人の少女は、全身の傷跡から血を吹き出し即死した。

「後始末をお願い」

 センドは、頷き、死体の始末を始める。

「さて、ただ幼女をやり殺すだけじゃ足りないと思って居た所にこの状況。良い方向に動き始めたって事かしら?」

 嬉しそうに呟く金色眼であった。

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