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王との対面

あまり有能では、ない国王との対面

 人類最大の王国、ミータッドの王城の正門の前。

「大きいね、それで、どうするの?」

 城を見上げて言うヨシにヤヤが歩みを止めずに言う。

「コネも無ければ、後先も考えないで良い。だったら、正面から入って、王様に会いに行けば良いだけ」

「おい、お前、ここは……」

 止め様とする門番達。

 最初、前に立ち塞がるが、ヤヤは、止まらず、直進を続ける。

「ま、待て! ここは、王城で、一般人が、勝手に……」

 必死に踏ん張ろうとするが、ヤヤは、全く気にせず、前進を続ける。

「止まれ!」

 槍を向ける兵士を無視してヤヤは、更に直進を続ける。

「しかたない、軽く痛い目をみせるぞ!」

 突き出される槍先がヤヤに当たるが硬い音がなるだけだった。

「じょ、冗談だろ?」

 ここに至り、門番達もヤヤの異常さに気付き始めた。

「ねえ、ヤヤ、ちょっと機嫌悪い?」

 ヨシの指摘にヤヤが頷く。

「正直、この国の軍人って最悪だったからね」

 ヨシも思い出して眉を顰める。

「前線に立っていたのが殆ど若い志願兵だけだったもんね」

「自分の国も護ろうと思えない奴等と共闘なんてする気もしない。こっちの用件をとっとと言って、終わらせる」

 ヤヤは、そういって門に触れた。

『ツインテール』

 両手で放った連撃で、鋼鉄の門を粉砕するヤヤであった。

 一気に青褪める門番達。

「内部にこの事を知らせろ!」

 駆け出す伝令兵。



「あんたが王様?」

 謁見の間で、ヤヤが王冠を被った老人をつまらなそうに見る。

「そうだ、我こそは、人類最大の領土を誇る、ミータッド王国の王。詰り、人類で一番偉い人間だ」

 老人の言葉にヤヤが呆れた顔をする。

「あのさー、言ってて恥かしくない?」

 ヨシの突っ込みに老人、ミータッド国王が激昂する。

「なんと無礼な! この者達を今すぐ捕らえろ!」

 しかし、兵士達は、動かない。

「何をしている早くしないか!」

 怒鳴り散らすミータッド国王だが、兵士達は、何も出来ないで居た。

「少しは、頭を使ったら? あちきがここにこうしている時点で、何も出来なかったって事でしょうが。とにかく、こっちの用件だけ言っておく」

 ヤヤが淡々と告げる。

「黙れ! 下賎の者の言葉を聞くような耳などもっておらぬ!」

 反発するミータッド国王にヤヤは、手を振り上げた。

「へー、その耳って飾り物なんだ。だったら要らないよね?」

 ヤヤが手刀を振り下ろそうとした時、駆けつけてきた兵士が自らの体を盾にする。

「陛下には、指一本触れさせんぞ!」

 その目を見てヤヤが驚いた顔をする。

「まともな奴も居た。でもどうしてそのまともな兵士がここに居なかったの?」

 その兵士は、悔しそうな顔をするが黙して、ただ己の身を盾にする。

 ヨシは、周囲を見て、何か言いたそうな若い兵士に尋ねる。

「あの人に余計な傷を増やしたくなかったら、話してみなさいよ」

「カナルス様は、元親衛隊の隊長でした。しかし、ラグナログの艦長を務めていたアナコス様とは、旧友であり、その艦長就任の後見人でもありました。この度のラグナログの全壊を受け、役職を解かれ、謹慎の身でした」

「何考えてるんだか、この切羽詰った状況で、こんな有望な人間を謹慎させるなんて普通ないでしょ」

 ヤヤが信じられないって顔をする。

「お前等に何が解る! ラグナログは、我らの希望だったのだ! それが失われたのだ、その責は、誰かが取らねばならないのだ!」

 ミータッド国王の言葉にヨシが言う。

「そんで、自分の国が滅びても?」

「ミータッド王国は滅びぬ!」

 何の根拠も無い言葉にヤヤは、相手をするのを止めた。

「カナルスさん、後ろにいるボケ老人じゃ話にもならないから代わりに聞いて。さっきから話に上がっているラグナログが堕ちたのは、あちきにも原因があるの」

「原因があるのって、撃沈させた張本人だよね」

 茶化すヨシを他所にヤヤが続ける。

「これって、実は、けっこう不味い事で、あちきもそのフォローをしないといけない。それである程度の協力をするつもりだったんだけど。正直、まともな軍事行動って出来る?」

「小娘に何が出来る!」

 睨んでくるミータッド国王にヤヤが引きずってきていた桶から前回倒した魔族の首を取り出して見せる。

「こんな風に相手の将軍の首を落すくらいなら簡単だよ」

 謁見の間に驚きが広がる。

「その者は、ミータッド王国に幾度となく侵攻し、多くの勇敢の兵士の命を奪った。その魔族を倒すとは、汝は、何者だ?」

 カナルスの問い掛けにヤヤが答える。

「異邪を狩る者。まあこっちの概念で言えば魔族ハンターって所かな」

「なんかカッコイイ」

 ヨシものってくる。

 真剣な顔になるカナルス。

「本当に魔族と正面から戦って勝てるのか?」

 ヤヤは、頷く。

「このクラスなら楽勝とは、言わないけど、ほぼ必勝出来るよ」

「信じられるか! そうか、貴様は、魔族。我を騙し油断した所を狙うつもりだな!」

 ミータッド国王の言葉にざわめきが疑いの視線が集まるがヤヤは、全然気にせずカナルスを見詰る。

「何故、私を見る?」

 ヨシがミータッド国王を指差して言う。

「ヤヤが本気で暴れれば、この国がもう終わるって自覚無いあれじゃ話にならないからだよ」

「ふざけるのも大概にするがよい! 誰でも良い、この痴れ者を殺せ! 見事その首をとった者には、カナルスに変わって親衛隊隊長の地位を約束しよう!」

 ミータッド国王の言葉に兵士達がざわめく中がやはりヤヤは、気にしない。

「話を戻すけど、この国って言うか、人類側は、ラグナログが堕ちてかなり落胆しているのは、わかってる。でも、それでもう終わりって事じゃないでしょ?」

 カナルスが短い沈黙の後に言う。

「我が国より更に魔族との領土が隣接する国、ニーデッド王国。そこの国王は、自ら前線に立ち、今だ魔族との交戦を続けている。そして、その最前線の傍の塔にアナコスが幽閉されている。その両者なら人類の新たな先駆者になれるだろう」

 ヤヤが頭を下げる。

「ありがとうございます。そこに行かせてもらいます」

「おじさんも一緒に来ない。ここに居るよりも人類のために戦えるはずだよ」

 ヨシの誘いにカナルスが首を横に振る。

「私は、ミータッドを護りたい。例え単なる一般兵としてとでも」

 うんうんと頷くヨシ。

「いいね、そういう信念。で、やるの?」

 ヨシが、恐る恐る近づいて来ていた兵士達を蔑んだ目で見る。

「そこの人に感謝しておきな。その人が居なければ、耳の一つや二つなくなってたんだから」

 あっさりと背中を見せるヤヤにミータッド国王が視線を向ける。

 それが何を意味しているか兵士達も理解し、動こうとした時、ヤヤが右手を上空に向ける。

『ホワイトファング!』

 白い光が天井をぶち抜いた。

「あれがラグナログを落とした力だよ」

 ヨシの説明にカナルスが汗を拭う。

「なるほど、本当の様だ」



 ショックで正気を失ったミータッド国王が退位し、王子が即位後、カナルスが中心となって軍部の強化がなされ、人類の強大な戦力になるのは、もう少し後の話である。

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