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冬の童話祭2013参加作品

ケチな親子

作者: 城田寺 皓

 あるところに、たいそうケチな親子がいた。

 父と息子の親子二人は、とにかく金にがめつくて卑しい。

 買い物をしようものなら、それが何であれまずは値切る。こんなたちだから、その交渉がまた上手いこと上手いこと。

 口八丁手八丁であれやこれやと煙に巻き、気づけば相手も言いくるめられてしまう。

 そうして貯め込んだ金を一日の終わりに眺めるのが、彼らの至福の時間だった。


 やがて月日が経ち、父もだいぶ年老いてきた頃だ。寄る年波には勝てずとうとう病に倒れ、父はそのまま息を引き取った。

 父の亡骸の傍で悲しむ息子。そんな彼のもとに一人の女が訪ねてきた。

「失礼いたします、私は教会の者です。深い悲しみのなか大変恐縮ですが、今回は葬儀の件でお話に参りました」

 女は息子に一通りの説明をすると、代金として銀貨を二十枚要求した。

 しかし息子はこんなときでさえも、素直に首を縦には振らなかった。

「まず花はいらないな。父は生前花が嫌いだったんだ。銀貨二枚まけてくれ」

「分かりました」

 女は頷いた。

「それと牧師の言葉もいらない。僕が代わりに言おう、こう見えて信仰心は強い。銀貨三枚まけてくれ」

「そう言うことなら」

 女は納得した。

「あとはそうだな、墓石もこちらで用意する。いいつてがあるんだ。だから銀貨五枚まけてくれ」

「ではその通りに」

 女は了承した。

 結果的に葬儀の代金は銀貨十枚となった。

 しめしめと息子は思った。元の値段の半分にもなったのだ。これで喜ばない訳がない。

 すると突然、なんと死んだはずの父が目を見開き、力強く言い放った。

「駄目だ! 死んだ俺に銀貨十枚はまだ高い! もっとまけろまけろ!」

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― 新着の感想 ―
[良い点]  こんにちは。最近は星新一先生の書籍を読んでいるタケノコです。  本作を拝読しました。ナイスで粋なオチに爆笑してしまいましたww。どれだけ、ケチ……じゃなかった、倹約家なんですかw。葬式…
[一言] 簡潔で読みやすくって面白かったです。
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