ケチな親子
あるところに、たいそうケチな親子がいた。
父と息子の親子二人は、とにかく金にがめつくて卑しい。
買い物をしようものなら、それが何であれまずは値切る。こんなたちだから、その交渉がまた上手いこと上手いこと。
口八丁手八丁であれやこれやと煙に巻き、気づけば相手も言いくるめられてしまう。
そうして貯め込んだ金を一日の終わりに眺めるのが、彼らの至福の時間だった。
やがて月日が経ち、父もだいぶ年老いてきた頃だ。寄る年波には勝てずとうとう病に倒れ、父はそのまま息を引き取った。
父の亡骸の傍で悲しむ息子。そんな彼のもとに一人の女が訪ねてきた。
「失礼いたします、私は教会の者です。深い悲しみのなか大変恐縮ですが、今回は葬儀の件でお話に参りました」
女は息子に一通りの説明をすると、代金として銀貨を二十枚要求した。
しかし息子はこんなときでさえも、素直に首を縦には振らなかった。
「まず花はいらないな。父は生前花が嫌いだったんだ。銀貨二枚まけてくれ」
「分かりました」
女は頷いた。
「それと牧師の言葉もいらない。僕が代わりに言おう、こう見えて信仰心は強い。銀貨三枚まけてくれ」
「そう言うことなら」
女は納得した。
「あとはそうだな、墓石もこちらで用意する。いいつてがあるんだ。だから銀貨五枚まけてくれ」
「ではその通りに」
女は了承した。
結果的に葬儀の代金は銀貨十枚となった。
しめしめと息子は思った。元の値段の半分にもなったのだ。これで喜ばない訳がない。
すると突然、なんと死んだはずの父が目を見開き、力強く言い放った。
「駄目だ! 死んだ俺に銀貨十枚はまだ高い! もっとまけろまけろ!」