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魔王補佐官の愚痴を聞いてあげてください

作者: 夏川優希

 あ、どうもこんにちは。

 えっ、ちょっと待ってください、本当に悩んでるんですって!いや、ちゃんと転職する気はありますよ。だからこうやってハローワークに来ているわけですから。

 そんなこと言わないで話聞いてくださいよ。ここに来るのだって、ちゃんと皆さんにご迷惑が掛からないように週1に抑えてるんですから。ほら、座って座って。

 それで、今日はどんなお仕事入ってます? あ、飲み物はいつものやつね。そうそう、マンドレイクティー。

 それで、お仕事の方は?……毒の沼地の手入れ係? いや、力仕事はちょっと。

 うーん、王宮の給仕……か。いや、悪くはないんですけどお給料がね。今の給料の10分の1になっちゃうのは、ね。

 いや、それは分かってますって。今は勇者も生まれてないですからね、魔界も暇で仕事があんまりないんですよね。転職するには厳しいご時世だってのは分かってますよ。でもそれを覚悟でここにきているわけですよ。

 この前もね、あのバカ……いや、魔王様がさぁおかしな事言い始めてさ。なんか王宮を明るくして、壁も白塗りにしろとかぬかしやがったんですよ。そんな人間界の城みたいにしちゃったら魔界のメンツ丸つぶれっすよ。本当、魔界の城は禍々しくてナンボだって言うのに。勇者戦の時に魔界の城がそんなんだったら勇者帰っちゃいますよ。『来るとこ間違えたかなぁ』とか言って。いや、笑いごとじゃないですって。

 そうそう、魔王様の娘が言い出したらしいんだよ。魔王様もさ、末娘だし初めての女の子じゃない? 上の3人は全員男だからさ、可愛くて仕方ないんだろうけど。

 うん、まだ3歳。可愛い盛りなのは理解できるよ、実際魔族とは思えない愛らしさだからね。でもね、3歳の女の子の言う事を真に受けて全部叶えてたらきりがないじゃん。実際王宮改造計画もマジで言い出したからね。俺がとめてなかったら今頃王宮真っ白だったよ。マジで魔族の皆は俺に感謝したほうが良い。

 え? いや、それがそうもいかないのよ。お兄ちゃんたちもさ、初めての妹が可愛いらしくてね。誰も魔王様に抗議したりしないんだよ。むしろ魔王様に抗議する俺に抗議してくる。

 そりゃわかるけどね、ほら、あの3人ってスゲー仲悪いじゃん? 王位継承権で揉めてるんだよね。それに引き替え、女の子には元から王位継承権ないからさ、こう……安心して可愛がれるというか。そういう政治的しがらみがないのもポイントなのよ。

 それでさ、最近俺の仕事にも影響が出始めてんだよね。勇者対策の会議の時もさ、魔王様が膝に娘のせて参加するわけよ。それで大人しくしててくれるんならまだいいんだけど、『勇者を血祭りにあげてやろうぞ!』とか魔王様が言うと泣いちゃうんだよね、娘。だから会議での言葉選びも大変なんだよ。なるべく血なまぐさくない言葉を選んでさ。『勇者の体をちょっとずつ刻んでレモンをかけておいしく頂こうね~』とか。『こま切れにして食ってやろうぞ!』とか言えないんだよ。

 俺、禍々しくってカッコイイ魔王様に憧れて魔王補佐官になったのにさ、娘が生まれてから魔王様変わっちゃったよ。

 部下にも自分にも厳しかったのにさ、最近ポロッと赤ちゃん言葉出てくるようになったし。いや、逆に恐いけどさ。あんな強面の魔王が赤ちゃん言葉使ったら。

 しかもさ、あの魔王が禁酒始めたんだよ!? 超酒好きの魔王が! なんかさ、娘に酒臭いって言われたのがショックらしくて。

 でもたまに我慢できなくなる時があるらしくてさ、夜中にこっそり飲んでるんだけど、その酒ってのがさ、蜂蜜酒なんだよ! 魔王が蜂蜜酒飲むかね? しかもアルコール度数すっごい低いヤツ。せめてワインとかにしてくれって思うわけよ。魔王ってイメージ大事でしょ?

 

 あ、そろそろ出勤しなきゃ。今日その娘の誕生日なんだよ。プレゼントも買ったんだよ? わざわざ娘のために人間界から輸入したドレス。魔界のドレスはあんまり好きじゃないみたいだからさぁ。

 え、娘を? 可愛いに決まってんじゃん。そりゃそうでしょ。魔族の俺が言うのもなんだけど、天使みたいな可愛さよ。


 じゃあ行ってきますね! あ、わかってると思うけど今日話したこと内緒ね。バレたら俺の首が飛ぶから。リアルな意味で。

私にとっていろんな意味で試験的な小説ですので、評価や感想等を書いていただけると嬉しいです。

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[一言] 魔王補佐官殿も親馬鹿じゃないですかヤダー
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