第1話 出会い
「なに、これ…?」
もう一度ヒカリは言った。
言ったところで何かが変わる訳でも無いが、言わずには居られなかったのだろう。
とはいえ、いつまでも放心しても居られない。
とりあえず状態を把握しなければならない。
周囲の状態は?
先程見たとおり。全てが未知の物だと言って良い。
ここに至った原因は?
おそらく魔力の超干渉。
何が起きた?
全く分からない。
見事に当てにならない情報ばかりである。
ただ、人の多さや装備の様子からここが街であることだけは間違いない。
(通常は救助を待つべき何だろうけど…危険は少なそうだしいいかな?)
結論から言えば問題は無かったが、別の意味で問題だった。
別に危険なことがあったわけではない。安全であることは間違いない。
四角い箱もそこから人が出入りしているところからして馬車のようなものであったし、市場以上の人通りなのにも関わらず金目のものを奪う輩すら居ない。
おまけに、時折「てれび」だの「ぱそこん」だのよく分からない言葉があるものの、概ねの言葉が理解できることが通りすがりの会話で分かっている。危険性といった点では最初に思っていたよりもずっと安全なのかもしれない。
だが、現在位置が分からない。少なくとも王都にこんな場所は無いし、大陸全土を探しても存在しないはずだ。ますます意味が分からない。
(…物語の世界にでも飛ばされたのかしら。)
だんだん阿呆らしくなって現実離れした思考にシフトしていくのだった。
今日の少女はものすごく不運だった。
(やば…こりゃ遅刻かも…!)
全力で駅に向かって疾走するが携帯の上部に表示される数字は8:04。間に合う電車は4分後の一本だけだ。
そもそも、朝からおかしかった。
いつもは10分しか動かない起床時間が今日に限って30分も遅く、家を出ると絶対忘れない財布を置いてきてしまい取りに戻る羽目になり、飲み物を買うために入ったコンビニから出ると自転車が壊れた鍵だけになっていた。
いまどきギャグ漫画の主人公でもここまで不運は重ならない。
そしてその思考に没頭する1秒の間に不運のとどめが目の前に迫っていた。物理的に。
「「きゃっ!」」
と二つの声が重なり転げる。
「いたたた…大丈夫ですか?」
とりあえず無事を確認するために声をかける。
後から思えばこれも失敗だった。
「あ、はい。って…え?」
目の前にあったのは自分と瓜二つの顔。
(んと…ドッペルゲンガー?)
この瞬間、少女 春風秋名の皆勤記録が途絶えることが確定した。
とりあえず、これで主人公は両方登場です。
名前の件は敢えて被せてます。安直って素晴らしい(何
10/9 速攻で一部修正orz