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8話 別れと出発


その夜。

焚き火のそばで、アザゼルはリトラにぴったりと

くっついたまま眠ってしまった。リトラも住民たちの

世話で疲れていたのか、ほどなくして静かな寝息を

立て始めた。


「………」


パチパチと燃える炎の音に溶け込みながら、誰かが

近づいてくる。


「まだ起きてたのか」


「夜はどうも目が覚めてしまってな。人間は早く

 寝ろ」


「寝られないから起きてるんだが」


レオパルドはそう言って、私の隣にある大きな木の

根へ腰を下ろした。焚き火の光が、彼の横顔を赤く

照らす。


「……ベリアル。ずっと聞きたかったんだが、お前は

 何でそんなに穏やかになったんだ」


「穏やかだと?そんなことはない」


私は鼻で笑った。


「今も昔も変わらん。私は、冷酷残忍で無慈悲な

 王だ」


「本当に今もそうなら、とっくに世界はお前の物に

 なっていたはずだ」


レオパルドは炎を見つめたまま続けた。


「何かあったんじゃないのか?」


薪が崩れ、小さな火の粉が夜空へ舞い上がる。


「……フン。そういう貴様こそ、仲間を連れていない

 所を見るに何かあったようだな」


「俺は元々1人だ」


「違うな。貴様は私に挑もうとした時、仲間は足手

 まといだと言った。本当は居たのだろう?仲間と

 やらが」


微かにレオパルドの目が見開いた。


「――居ない」


短くそう言うと、彼はそのまま地面に横になった。

私も深く追及することはせず、腕を組んだまま目を

閉じた。焚き火の音だけが夜の闇に溶け込んでいく。


そして、夜が明けた。


「……ちょっと、ちょっとアンタ!」


「ん……」


ぼんやりと人の形が見える。


「いつまで寝てんのよ、とっとと起きなさい!」


「……あぁ、キミか」


リトラは私を見下ろしたまま言った。


「ほら、ちゃっちゃと採りに行くわよ!」


「採る……?」


「朝ごはんよ朝ごはん!」


私は右手をついて立ち上がり、軽く体を捻った。

木々の隙間から柔らかな光が差し込んでいる。さっき

まで夜だったというのに、時が経つのはあっという

間だ。


「そういえば、レオパルドたちは?」


「あの人たちは川で魚を獲ってるわ。私たちは食用の

 草を採りに行くの。ほら、とっとと行くわよ」


彼女はそう言うと、さっさと森の奥へ歩いていった。


「干し肉じゃダメなの?」


「あんなのじゃダメに決まってるじゃない。

 朝ごはんはちゃんと食べないとね」


リトラは慣れた手つきで草を採っていった。


「これとこれ……後はこの辺かしらね」


「リトラ。これはどうかな」


「ん?ちょっ、アンタ!それ、今すぐ捨てなさい!」


「これは……ただのイチゴじゃないの?」


その時。


「ギ、ギギギ……」


「!」


手の中のイチゴから低い唸り声が聞こえた。


「今すぐ捨てて!それは――」


イチゴはみるみるうちに大きくなり、やがて四足

歩行の化け物へ変わった。鋭い牙を剥き出しにして、

今にも襲いかかってきそうだ。


「ヒューマンイーターよ!」


ヒューマンイーター……確か動植物に擬態して、

油断した相手を丸呑みにする魔物だったか。


「……どれ、朝の準備運動でもしてやろう」


私は軽く右手を振り上げ、そのまま振り下ろした。

次の瞬間、目に見えない刃が一直線に走り、ヒュー

マンイーターの巨体を真っ二つに切り裂いた。ずしんと音を立てて、ヒューマンイーターが地面に崩れ

落ちる。


「なっ、何なのよ今の技……!」


リトラが目を丸くして叫んだ。


「え?あー……別に技じゃないよ、ただの空気の刃」


リトラは呆気に取られた顔のまま、しばらく私を

見つめていた。


「ほ、ほら!早く他の食用の草を探しに行こう!」


「う……うん、そうね」


それから私たちは森の中を歩き回り、人数分の食用の

草を採って元の場所へ戻った。

 

「あっ、帰ってきた!」


元気な声と共にアザゼルが駆け寄ってきた。手には

数匹の魚が元気に飛び跳ねている。


「いっぱい獲れたよ〜」


「ざっと、10匹ほどだ。サイズはバラバラだがな」


レオパルドは濡れた髪を邪魔そうにかき上げた。


「じゃ、その魚を焼いて食べましょ」


私たちは魚を竹串に刺し、焚き火の上でじっくり

焼いた。数分後、食用の草と共に焼き魚を食べた。


「……草、だな」


「あぁ……初めて食ったぞこんな物は」


思わず、私とレオパルドは顔をしかめた。

魚はいいのだが、草はほとんど土の味しかしない。

正直、美味しいとは言えなかった。


「し、仕方ないでしょ。我慢しなさいよ」


「ねえねえ、リトラ。ウーマの実って食べないの?」


アザゼルがうるうるした瞳でリトラを見上げた。


「はぁ……別に食べてもいいわよ。どうせトンファン

 で色々買う予定だし」


「やったー!」


彼はそう言って、袋からウーマの実を取り出して勢い

よくかぶりついた。シャクシャクと音を立て、すぐに

完食してしまった。


「ごちそうさま!美味しかったよ〜」


「良かった。じゃあ、そろそろトンファンに向かう

 わよ」


リトラはそう言って、荷物をまとめ始めた。


「あっ、待ってリトラ」


アザゼルは私の前に立ち、軽く頭を下げた。


「ベリアル様。僕、先に魔王城へ行って修復の手伝い

 してくる」


「一緒に来ないのか」


「アンゴルモアが待ってるだろうからさ」


「……そうか」


私は寂しさを隠しながら軽く微笑んだ。


「気をつけて行け」


「うん!リトラ、絶対にまたこの森に来てね!」


「もちろん。約束したもの」


「ありがと!元気でね〜」


アザゼルは背中から真っ黒な翼を出すと、そのまま

魔王城の方へ飛び去っていった。


「よし……改めて、トンファンに出発よ!」

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