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2話 目的


「まずは、部下が欲しいな。強くてカッコいい奴!」


私が高らかに宣言すると、


「……私、強くてカッコいいですよ。本性が龍

 ですし」


アンゴルモアがわずかに頬を膨らませた。


「お前以外の追加戦力の話だ」


「って言われても、ノーマネーだから雇えないよ」


「金で雇おうとするな」


レオパルドは私を睨みつけた。


「金で雇える奴は信頼できない。この辺りに、お前の

 部下だった者は居ないのか」


私は腕を組み、しばらく考え込んだ。


「……部下ならその辺にいくらでも居ると思うけど、

 信頼できる者となれば話は別だ」


かつての私は、誰も信頼していなかった。部下は駒

であり、使い潰すための戦力だと思っていた。

倒されようが裏切ろうが、何とも思わなかった。

だからこそ、この城には何も残らなかったのかも

しれない。


「そういえば」


アンゴルモアが思い出したように口を開く。


「城から少し離れた森で、アザゼルを見たことが

 あります」


「アザゼル?誰だそいつは」


「一応、私に従っていた幹部の1人だよ。マイペースで

 ぶっちゃけあんまり強くない」


「今のお前よりはマシだろう」


レオパルドに即答されてしまった。


「えー!私はやればできる子だぞ!?」


抗議する私を完全に無視し、アンゴルモアは小さく

ため息をついた。


「じゃあ、とっととアザゼルを探しに行って

 ください。私はこの城の警備をしておきます。

 レオパルドさん、この魔王の威厳もクソもない彼を

 お願いします」


「ああ」


そんな会話をしてから、30分。

歩けど歩けど、視界に広がるのは薄暗い空と毒の沼地

ばかり。腐臭混じりの風が吹き、足元では泡立つ

黒い泥が不気味な音を立てている。


「怖いよ〜!暗いよ〜!帰りたいよ〜!」


「はぁ……せめて、盾ぐらいの役には立って

 もらうぞ」


「せめて剣と同じぐらいに役立たせてよ〜!」


情けない悲鳴を上げたその時だった。


「あっ、ベリアル様!」


「え?」


聞き慣れた声と共に、巨大な影が空から降下する。

目の前に着地したのは悪魔の翼を持つ、漆黒の巨大な

ライオンだった。


「知り合いか」


「う、うん。彼はガーゴイル。私の部下だ」


ガーゴイルは私を見るなり安堵の表情を浮かべたが

次の瞬間、レオパルドへ鋭い視線を向けた。


「ベリアル様!なぜこのような者とおられるの

 ですか!」


低く唸りながら、じりじりと距離を詰めていく。


「ちょっ、待って待って!この人は魔王城を再建する

 手伝いをしてくれる人なんだ!」


「……何?」


「キミも知っているだろう、魔王城の現状を。

 彼は私と戦うことを条件に、魔王城の再建に協力

 してくれているんだ」


ガーゴイルは、信じられないものを見るような目で

私を凝視した。


「……馬鹿な。ベリアル様が人間と組むなどあり

 得ない。キサマ、さては偽物だな!」


「ええっ!?」


「今ここで八つ裂きにしてくれる!」


地面を蹴り、ガーゴイルが跳躍する。

だがその時。レオパルドが1歩前へ出て、振り下ろ

された爪を剣で受け止めた。


「グルルル……邪魔をするのか人間!」


「彼に死んでもらっては困るからな。俺が相手に

 なろう」


「消え失せろ!」


ガーゴイルは空へ舞い上がり、爪を連続で振り

下ろした。空間が裂け、黒い斬撃が雨のように

降り注ぐ。


「……気性が荒い奴だ」


しかし、レオパルドはものともせず全ての斬撃を

避けてみせた。


「何!?オレの斬撃を――」


そう言い終わる前に、レオパルドはガーゴイルの

腹部へ攻撃を叩き込んだ。

 

「うぐあっ!」


彼は地面へ叩き落とされ、そのまま動かなくなった。


「お〜、感動感動!」


「……お前、別に何とも思ってないだろ」


「いやいやいや!久しぶりにああいうの見たら、

 誰でも感動するよ!?」


レオパルドは私に疑いの眼差しを向けたまま、

剣を納めた。


「コイツが起きる前に、早く行くぞ」


「そうか。じゃ、またねガーゴイル」


軽く手を振り、私たちはその場を後にした。

魔王城が地平線の向こうへ沈む頃、淀んでいた空気は

次第に澄み始め、空も少しずつ明るさを取り戻して

いった。


「青い空、白い雲!空気がおいしいなあ〜」


城に引きこもっていたせいで、外の空気が新鮮

だった。


「……お前、元々そんな話し方なのか?」


「まさか」


私は鼻で笑った。


「貴様が望むのなら、本来の話し方に戻すが?」


「いや、結構だ」


「え〜!なんでー!?ぶーぶー」


不満を漏らしながら腕にくっつこうとすると、

レオパルドは嫌そうな顔をして腕を振り払った。


「黙れ、くっつくなむさ苦しい。臆病で弱気な魔王が

 急に威圧的になる方が気持ち悪い」


「……フッ、それもそうか」


私は軽く笑って、空を見上げた。


「いやでもさ、このおじさんの声でこの口調の方が

 気持ち悪くない?」


「どちらにせよ気持ち悪い」


「ひどい!」


そんな他愛もないやり取りを続けながら、私たちは

並んで森の方向へと進んでいった。

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