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16話 氷の城の主


グレイシア城が見えてきた頃。レオパルドは急に足を

止めた。


「どうしたのよレオパルド?」


「……ダメだ」


「え?」


レオパルドの顔は真っ青で、今にも倒れそうだった。  

「この先に進めば、俺たちは全員死ぬ」


「だ、大丈夫……?」


私とリトラは顔を見合わせた。


「……ベリアル。お前の部下はこんな奴なのか」


「こんな奴?よく分からないけどそうだと思うよ」


しかし、フリージアはレオパルドがここまで怯える

ような相手だっただろうか。


「うーん……」


私は首を傾げた。


「リトラ。キミは、フリージア城から感じる気配に

 びっくりしないの?」


「え?うん。すごく強い人が居るなーって感じぐらい

 かしら」


リトラは肩をすくめて、軽く笑った。


「っていうか、レオパルドがビビりすぎなだけ

 でしょ」


「………そうだな。すまない、行こう」


彼は剣の柄に手を添えて警戒を解かないまま、歩き

出した。やがて、私たちは城の門へと辿り着く。


「着いたわね」


見上げるほど大きな氷の城。透き通る壁は太陽の光を

反射して、青白く輝いている。城の周囲には、鳥や

犬の氷像がいくつも並んでいた。


「私が開けるから、2人は後ろに居て」


「ああ」


冷たいドアノブを開けると同時に、奥から声が

聞こえてきた。


「ご機嫌よう、愚かな冒険者さん?」


彼女は氷の玉座に座っていた。あの頃と変わらない

美しい白髪に、透き通るような水色の瞳。


「久しぶりだな」


「べ、ベリアル様……ッ!?」


フリージアは玉座から飛び降りると、一直線にこちらへ駆け寄ってきた。そして、凍えるような手で私を

抱きしめた。


「ああっ!この匂い、この温かさ!間違いなく、あの

 ベリアル様ですね!?」


「そうだ。分かったら、速やかに離れてくれ。体が

 凍る」


「失礼いたしました!」


彼女は慌てて私から離れると、頬を押さえて身を

よじった。


「ああああ……っ!貴方が来ると分かっていた

 ならば、ドレスを着て、化粧もしていたのに!

 でも!急に押しかけてくるベリアル様も愛して

 おります!」


「……ねえ、このヤバそうな人がフリージアなの?」


「そうだ」


「あら?誰ですか、その女は」


フリージアは舐め回すような視線でリトラを見た。


「なるほど。その女が貴方の新しい女ですね?」


「違う。彼女は私の旅の仲間だ」


「うふふ、貴方の好みは黒髪で目の色がこげ茶の美人

 ですものね?」


ダメだ。分かってはいたが、少しも話が通じない。


「ですが、貴方の孤独を分かってあげられるのは

 私だけです。あの女が死んだ今、私と婚約して

 いただけますね、ベリアル様?」


その言葉を聞いた瞬間、ふっと心の奥が冷えていく

のが分かった。


「簡単に死んだなどと口にするな」


「事実でしょう?人間の寿命は短い。それを分かって

 いてあの女と付き合っていたではありませんか」


彼女は楽しそうに続ける。


「あの女さえ居なければ、貴方はあんなことに

 ならずに済んだというのに………」


「フリージア」


ミシリと足元から、鈍い音が響いた。気づけば、

周りの柱に細かな亀裂が走っている。


「………次、彼女を貶せば貴様を消す」


「うふ、ふふふ。素敵です。やはり、貴方にはその

 氷のように冷たい目がよくお似合いですね」


彼女は恍惚とした表情をして続けた。


「人間のような生気に満ち溢れた目など似合わない。

 それで、なんのご用ですか?」


「単刀直入に言う。魔王城の再建のために、お前の

 力を貸して欲しい」


フリージアは首を振った。


「そんなことをする必要はありません」


「……何だと?」


「この城の外観はどこかに似ていると思いません

 でしたか?」


私は城内を隅々まで見渡した。

シャンデリア、柱、玉座。その1つ1つに見覚えが

ある。


「お気づきですか?ここは、魔王城そのものです」


「それがどうした」


「この城は、貴方と共に暮らすためにお作りしま

 した」


彼女はにっこりと冷たい笑みを浮かべる。


「そして、この城にある氷の像は全て………私が部下

 として良いと思った者たちを、氷漬けにしておいた

 ものです」


「えっ……!」


リトラが思わず息を呑んだ。


「特にお気に入りなのは、あそこにある像です」


「っ……!?」


レオパルドは庇うように私たちの前に立った。


「レ、レオパルド……?」


「おや?その方はこの像の強さが分かっているよう

 ですね」


フリージアは目を細め、楽しそうに続ける。


「この像は……いえ、彼は凍らせるのに非常に苦労

 しました。さあ、ベリアル様」


彼女は私に手を伸ばした。


「貴方の座る場所はこちらです。どうぞ、遠慮なく

 お座りください」

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