13話 いざ、洞窟へ
「手袋とマフラー、後はカイロとかも買っておいた
方が良さそうね」
「リトラ」
私は店先に並んでいたマフラーの中から、ピンクの
フレースがついたものを手に取って彼女に見せた。
「これ、キミに似合いそうじゃない?」
「あら。結構可愛いわね、いくら?」
値札をひっくり返すと、そこには800と書かれて
いる。
「えーっと、800ゴールドだって」
「へえ、意外と安いじゃない。それにしようかしら」
そんな私たちの様子を、レオパルドは腕を組んで店の
外から眺めていた。
「……アイツ、女の扱い方が分かってるな」
数十分後。防寒具を買い込んだ私たちは店の外に
出た。
「3時か……」
レオパルドは空を見上げる。
「あの洞窟には、夕方までに着いておきたい」
「えっ、何でよ?」
「夜の山道は危険だからだ。それに、雪があれば
危険度が跳ね上がる。今日は洞窟で夜を越す。
山道を登るのは明日の早朝からにしよう」
私たちはトンファンを後にし、洞窟へ向かって
歩き出した。森とは違い、この辺りは平野が広がって
いる。そのため足場もよく、比較的歩きやすい。
「リトラ〜!今日の夜ご飯って何〜?」
「ん?そうね。栄養ドリンクとゴブリンの干し肉
かしら」
「栄養ドリンク?」
彼女は袋を軽く叩いた。
「そ。今日買った薬草とエニー草と魔力ポーションを
混ぜて作るの」
レオパルドは眉をひそめる。
「……普通の飲み物はないのか?」
「水はあるけど、味がついてた方が美味しいと思わ
ない?」
「それはそうだが、どんな味がするんだ」
リトラは首を傾げながら言う。
「うーん。薄いハチミツと草とか土が混ざった味って
言えばいいのかしら?」
「………飲む気がしない」
「ちょっ、何なのよその嫌そうな顔!文句があるなら
自分で作りなさーい!」
レオパルドは大きくため息をついた。
「分かった。それなら、今日は俺が作る」
「ア、アンタって料理作れるの……?」
リトラは目を丸くした。
「ああ。今持っている食材で作る」
「どーせ、また下級ゴブリンの干し肉でしょ」
私が肘でレオパルドの横腹をつつくと、彼は私を睨み
つけた。
「アレは軽いおやつみたいなものだ。普段はアレと
スライムゼリー、山菜を調理して食べている」
「へえ、男で料理できる人っていいわよね。レオ
パルドって顔もいいし、結構モテるんじゃない?」
「興味ない」
「私はモテるよ!」
私はリトラの隣で何度も飛び跳ねてみた。
「やっぱり、料理ができるイケメンが1番理想の旦那
さんよね〜」
「私はモテるよ!!」
2人は必死にアピールする私を完全に無視し、話し
ながら洞窟の方へ歩いていった。やがて、山の麓に
ぽっかりと口を開けた洞窟に辿り着いた。
「怪物とか出てきそうで怖〜い」
「俺はお前のテンションの方が怖い」
洞窟内は真っ暗で、数センチ先も見えない。
「2人とも待って。ランプつけるから」
リトラがランプに火を灯したその瞬間。
「――消滅」
「え?」
洞窟の奥の方からくぐもった声が聞こえる。
「消滅、消滅、消滅、消滅……」
声は聞こえるのに気配はない。とてつもなく異質で
異様だった。
「リトラ、レオパルド。私のそばから離れるな」
直後、闇の中から何かが飛んできてランプが割れ、
破片が地面に飛び散った。
「きゃっ!」
洞窟は再び完全な暗闇に戻ってしまった。
「……おい。私たちは、貴様を倒しにきたわけでは
ない。グレイシア城に行きたいだけだ。通して
くれ」
「消滅。消滅消滅消滅消滅……」
壊れた機械のように淡々と同じ言葉を繰り返して
いる。どうやら、話が通じんようだ。
「……どうする?」
「どうするって、姿が見えないからどうしようもない
わよ!」
「それもそうか」
私は少し考え、言った。
「レオパルド。リトラを連れてこの洞窟から出ろ。
そして、できるだけ離れろ」
「何をする気だ」
「5秒やる。早く行け」
レオパルドは何かを察したのか、すぐにリトラを抱き
かかえて洞窟を飛び出し、トンファンの方へ駆け
出していった。
「ちょっ、レオパルド!」
「何だ。戻れば死ぬぞ」
「え?ど、どういうことよそれ……」




