11話 聞き込み
「きゃああああっ!」
「!何だ……!?」
「リトラの声だ、行くぞベリアル!」
私たちは慌てて温泉の奥へと駆け出した。
「どうした、何かあったのか!」
「け、毛虫よ毛虫!」
「け……毛虫?」
私は彼女の指差す方をちらりと見た。そこには、
赤茶色の毛がみっしりと生えた小さな毛虫が
ちょこんと袋の上でうごめいていた。
「な、何だ……ただの毛虫じゃないか。レオパルド、
取って」
「……なぜ俺なんだ。まぁいいが」
レオパルドはため息をつきながら袋を持ち上げ、軽く
振った。毛虫はぽとりと地面に落ち、そのまま
のそのそと草むらへ消えていく。
「これでいいだろう」
「あ、ありがとう。助かったわ。でも……」
リトラの声が急に低くなる。
「絶対に見るなって言ったわよね?」
彼女は顔を真っ赤にして、今にも魔法を撃ち込んで
きそうだ。
「えっ、いやお前は浸かったまま――」
「早くあっちに行きなさーい!」
リトラは私たちに温泉のお湯をかけ、強引に追い
出した。
「服が濡れる〜!ちょっと!キミのせいだからね
レオパルド!」
「何?お、俺のせいなのか………?」
数分後。頰を膨らませたリトラが温泉から上がって
きた。
「……で?何か言うことないの?」
彼女は腕を組み、私たちを睨んだ。
「無い。俺は悪くない」
「うん、あれは仕方ないと思う」
私は大きく頷いた。
「……ま、今回だけは許してあげる。それで?次に
行く場所は決まった?」
「雪が積もる町。もしくは場所だね」
「範囲広っ!」
「はは。レオパルドも同じこと言ってた」
「そもそも、トンファンで情報収集するはずじゃ
なかったのか。何で俺たちは温泉に居るんだ」
レオパルドは半分苛立ちながら私を見る。
「いいじゃん。結果的に私が部下……じゃなかった、
仲間の居そうな場所を思い出せたし」
「……まあ、そうだな」
彼は納得してなさそうな顔で私から目を逸らした。
「それにしても、雪の積もる場所ね……もっとない?
例えば、山とか平野とか」
「うーん……」
彼女とはどんな場所で会っただろうか。
あの時は猛吹雪だったせいで、周囲の景色なんて
ほとんど分からなかった。ただ、どこかに向かう
途中で会ったのははっきりと覚えている。
「ベリアル。そいつがどんな奴だったのかは思い
出せるか?」
「ああ、うん。彼女は水色の目をした髪の長い人
だったよ。あんまり笑わないんだけど、とても
綺麗な人なんだ」
「白い髪に水色の目かぁ……とりあえずその情報を
元に、一旦トンファンに戻って聞き込みして
みない?」
「も、戻るってことは……!?」
私は交互に2人を見た。
「あの変なロボットの所には行かないわよ」
「え〜」
「まあ、競りをやっていた場所も聞き込みをする
だろうから、ロボットの所に行かなくもない
だろう」
「やったー!わーいわーい!」
こうして私たちは再びトンファンに戻り、聞き込み
調査をすることになった。道を歩きながら、リトラが
ふと思い出したように言った。
「……思ったんだけどさ、アンタたちって何のために
仲間なんて集めてるの?」
「えーっと……私の家でパ、パーティするためだよ」
「パーティ?」
隣からレオパルドの冷たい視線が突き刺さる。
分かっている。この説明はかなり無理がある。
「ねえそのパーティ。私も行っていい?」
「えっ……うーん」
彼女にはレオパルドと同じく、挑戦者として来て
もらいたい。だが、それを今ここで言うわけには
いかない。どうやって遠回しに言おうか。
「……来てもいいよ。でも、キミはレオパルドと
一緒に来て欲しいかな」
「え?どうして?」
「1人で来てもいいけど、受付が大変だからさ。ほら、
個人より団体で来てもらった方が受付しやすい
でしょ?」
「受付って……そんな大きなパーティなのね」
リトラは目を丸くした。
「――ああ。たっぷりおもてなししてあげるよ」
「……おもてなし、か」
レオパルドは真っ直ぐ私を見た。
「持ち物は俺の命でいいか?」
その言葉に、私は思わずニヤリと笑ってしまった。
「うん、それがいい。それだけで満足だよ」
リトラは私たちの会話を聞きながら、小首を傾げて
いる。
「それじゃ、分かれて彼女の聞き込み調査を
しよっか。私は競りをやってる人らへんに聞いて
くる」
「アンタ、絶対あのロボットの所に行きたいだけ
でしょ」
「そ、そんなことないよ?」
私はわざとらしく首を振った。
「俺は店にでも聞き込みしてくるか。リトラは
どうする」
「んー……私はこの辺の人に聞いてみよっかな」
「じゃ、1時間後にまたここに集合しよう」
そう言って私は、賑わう競りの会場へと歩き出した。




