10話 ガタガタな体
私がヨロヨロしながらロボットを運んでいると、
リトラがいつの間にか戻ってきており、何やらレオ
パルドと話していた。
「あら?ベリアル、それって何?」
「フッフッフッ……聞いて驚くな。コレは古代の
ロボットなんだ」
「古代のロボット?」
リトラとレオパルドは綺麗にハモった。
「そう。さっき、そこの商人から買ってきた」
私が誇らしげにロボットの肩を叩くと、ボロボロの
装甲がガコンと不穏な音を立てた。
「だが、そんなにボロボロじゃ使えないだろう」
「甘いな。ここをこうしてこうすると……」
私はロボットの背中を開き、歯車のような部品を
回した。直後、ロボットは軋んだ音と共にゆっくりと
動き出した。
「おおっ!」
リトラが目を輝かせる。
「それで、何に使うの?」
「このロボットはこのスイッチを押すと――」
私は背中にある小さなスイッチを押した。
すると、ロボットの腕と脚が折れ曲がり、胴体が沈み込んで椅子の形へと変形していった。
「そして、私がここに座る」
私が得意げに腰掛けると、ロボットはガタガタ
震えながら、肩の辺りをトントントンと叩き始めた。
「なんと、マッサージチェアになれる!どうだ!?
すごいだろう!」
………2人から返事がない。こんなに素晴らしい機械
だというのに、なぜ無反応なのだろうか。
「……なんか、思ってた感じと違うわね」
「え?」
レオパルドは何も言わず、私を死んだ目で見ている。
「ちょっ、レオパルド?」
「………」
「レ、レオパルド?」
「…………ジジイが」
その後、私はロボットを持っていこうと2人に何度も
提案したが結局受け入れられず、ロボットはベンチの
隣に置いていかれることになった。
「私のマッサージチェア〜!アレを置いていく
代わりに誰か私の肩たたきしてよ〜!」
「断る」
「私、荷物があるから普通に無理」
2人は振り向きもせず、トンファンを出て北へと
歩いていった。
「しくしく、しくしく……」
「そのドスの聞いた声で泣くな。周りの人がびっくり
してただろう」
私はうな垂れながら呟く。
「だって、せっかく見つけたマッサージチェア
だったんだよ?もうあんな激レアなロボット
見れないって……」
「マッサージチェアねぇ……そういうのはないけど、
この近くに温泉はあるわよ」
「温泉!?行きたい行きたい!」
「おい、仲間探しは――」
レオパルドが口を開こうとすると、リトラはそれを
遮って言った。
「いいじゃない、ちょっとぐらい寄り道しても。
それに、あそこの温泉って美肌効果もあるらしいの
よね〜」
「はぁ……」
レオパルドは大きくため息をついた。だが、私と
リトラはそんなことなどお構いなしに、嬉々として
温泉へ向かった。
「ろてろてろてろて、露天風呂〜」
「変な歌を作るな」
「もしかして、レオパルドって温泉苦手なの?」
「……熱いのは苦手なんだ」
そんな話をしているうちに、林の中にぽつんと広い
温泉が現れた。看板には温泉の効能がびっしりと
書き殴りされている。
「こういうタイプの温泉なのか。てっきり、店の中に
あるのかと思っていたが……」
「まあ、確かに堂々とあるのは珍しいわよね。
噂には聞いてたけど、実際に見ると結構変な
光景ね」
リトラは周囲を見回しながら言った。
「奥にもう1つあるから、私はそっちに入ってくる」
「ああ、分かった」
リトラは奥の温泉へ向かおうとして、ふと足を止めて
振り返った。
「いい?絶対に見ちゃダメだからね!」
「分かってるよ。っていうか、あんまりそういうの
興味ないし」
「同意見だ」
「本当に見ないでね!」
リトラは疑うような目で私たちを見つめてから、奥の
温泉へと消えていった。
「……じゃ、浸ろっと」
私は服をたたみ、そっと足を湯につけた。
「あちち!」
思わず足を引っ込める。もう1度入れ、今度はゆっくり
と肩まで浸かった。
「いい湯だね……って、レオパルドも浸かりなよ」
「………熱いのか?」
「うん。かなり」
レオパルドは指をつけると、すぐに引っ込めた。
「早く入りなって。慣れればどうってことないよ」
「本当か?」
「うん」
しばらく悩んだ後、彼は意を決したように足を
入れた。
「ふう……確かにいい湯だな」
「でしょ?」
湯に浸かりながら、私たちはぼんやり湯気を眺めて
いた。
「トンファンで下着とか買っておいて良かったね」
「……ああ。まさかこんなことになるとは思っても
なかったがな」
レオパルドはそう言いながらこちらを見た。
「ところで、肩の調子はどうだ?」
私は軽くグルグルと肩を回してみた。
「少し良くなったみたいだ。あと2、30分ぐらい
浸かっていれば完全に回復するはず」
「そうか」
彼はそう言うと、立ち上がった。
「え?」
そしてそのまま温泉から出て、さっさと着替え
始めた。
「もう上がるの?」
「十分だ。疲れは取れた」
「本当に?ゆだったから上がったんじゃなくて?」
「黙れ年寄り」
それから数十分。
私はレオパルドと軽く話しながら、ようやく温泉を
出た。
「後はリトラを待つだけか」
「……レオパルド。少し思い出したのだが」
「何だ」
「この辺りに雪が積もる町はあるか?」
レオパルドは少し考えてから答えた。
「そうだな……ありすぎて分からない。それがどうか
したのか」
「いや、幹部の中で雪を使う者が居てな」
私は空を見上げる。
「もしかすれば雪が降る場所に居るかもしれんと
思ったのだが……」
「なるほどな。とりあえず、リトラが来るまで待って
いよう。話はそれからだ」




