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1話 自称、最強の魔王


遥か昔。

この世界には、世界を震え上がらせた1人の暴君が存在

した。幾千の軍勢を従え、王国を滅ぼし、勇者を

屠り、世界の半分以上を支配したと語られる魔王。

その名はーー


「うーん………暇!」


荘厳な玉座の間に、情けない声が響いた。

男は玉座の周りをぐるぐる歩き回り、座っては立ち、

立ってはまた座る。3秒後、再び立ち上がる。


「暇!ヒマ!ひーまー!」


ついにはレッドカーペットの上へ倒れ込み、子供の

ように手足をばたつかせ始めた。

この男こそ、かつて世界を恐怖に陥れた魔王ベリアル

である。なお最近は、退屈のあまり城の壁や窓を

破壊するのが日課になっている。


「失礼します」


静かな声と共に、側近が一礼する。


「ベリアル様、勇者と名乗る者が城へ侵入しました」


私はぴたりと動きを止めた。そして何事もなかったか

のように立ち上がり、威厳たっぷりに玉座へ

腰掛ける。


「ほう、また勇者とかいう輩が来たのか。通せ」


重厚な扉がギィッと音を立てて開く。


「……お前がベリアルか」


低い声が響く。それに応じるように、玉座の魔王が

口を開いた。


「ソウダヨ。ワタシガ、ベリアルダヨ」


妙に抑揚のない、機械的な声。勇者はわずかに眉を

ひそめた。


「魔王とはそんなハリボテなのか?」


「エ?イヤイヤ、ハリボテジャナイヨ」


「……ベリアル様。それはさすがに無理があります」


呆れた声と共に、側近のアンゴルモアが玉座の裏へ

回り込んできた。


「ヤダー!戦うのヤダー!」


私はずるずると、玉座の裏から引きずり出された。

手にはスピーカーと変声機がしっかり握られている。

――そう。

私は勇者が来た瞬間、丹精込めて作り上げた等身大の

看板と入れ替わっていたのだ。


「やーだー!ヤダヤダヤダ!」


アンゴルモアは小さくため息をつく。


「それより、お仲間はどうされたのです?」


「居ない。足手まといだ」


「マジで?よーし……!」


私は小声で呟いた後、勢いよく立ち上がった。


「1人ならどうにかなるだろう。さあ、かかって来ると

 いい!」


「………覚悟しろ」


勇者が静かに剣を構える。

次の瞬間、私は即座に玉座の裏に飛び込んだ。


「ベリアル様?」


「ムリムリムリムリ!だって、あんな剣を振られたら

 ひとたまりもないだろう!」


「おい。お前は本当に魔王とやらなのか」


私はひょっこり顔だけ出して答えた。


「……うん」


「かつて、世界を征服したというあの魔王なのか?」


「………うん」


「事実です。ある時期からずっとこの調子でして、

 愛想を尽かした部下たちがどんどんこの城を去って

 いるのが現状です」


それを聞いた勇者はため息をつき、剣を鞘へ納めた。


「なるほど。どうりで世界が平和なわけだ」


「えっ、戦わないの?」


「ああ。戦う理由がない」


彼は肩の力を抜き、軽く一礼した。


「俺はレオパルド。世界中を旅している。行く先々で

 人助けをしていたら、いつの間にか勇者なんて

 呼ばれるようになった」


私は、おそるおそる玉座に戻って言った。


「な、何だ……本物の勇者というわけではないのか」


「そういうことだ」


レオパルドはそう言うと、ゆっくりと玉座の間を

見回した。


「……それにしても、随分と寂れた城だな」


「はい。修理したくても人手不足でできず……

 それに、こんな辺境の地まで来る者も居ないので

 このままでいいと思い、放置していました」


「ベリアル」


「は、はいっ!」


思わず背筋が伸びる。


「お前は、この城を立て直そうと思わないか?」


私は言葉を失った。

静まり返った城、去っていった部下たち、もう長い

こと訪れていない挑戦者。


――そうだ。

私は求めている。あの喧騒を、命を懸けて挑んでくる

愚かで勇敢な者たちを。魔王城が生きていた

あの頃を。


「……立て直したい」


自然と、言葉が零れていた。


「なら、俺と共に再建する気はないか」


「え?えーーっ!?な、なぜ急に………」


「俺は、お前を倒したい」


彼は迷いなく答えた。その言葉に思わず息を呑む。


「だが、今の腑抜けたお前とは戦いたくはない。

 俺はかつての暴君、魔王ベリアルと戦いたい」


ドクンと心臓が高鳴る。

この男は本気だ。本気で私を倒そうとしている。


「お前は俺と共に城を再建し、失われた力と活気を

 取り戻す。その代わり、再建し終えたら俺をこの

 城の最初の挑戦者にしろ」


私はしばらく考えた。そして、ゆっくり頷く。


「分かった。だが約束しろ。私の部下には襲って

 来ない限りは、決して手を出すな」


「ああ、楽しみを減らすようなことはしない」


こうして、魔王である私と勇者レオパルドは互いに

戦う未来を約束したまま、魔王城の再建を共に行う

ことになってしまったのだった。


「ところでベリアル。修理費はあるか?」


「うん、無い!」

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