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勇者たちも加わり、駅構内を一斉捜索した結果、壁の隙間の低い所に挟まった金属片が、数カ所で見つかった。機械にかけて、ごく微かに雷術の痕跡も見つかったという。
警察はこれから、該当場所に細工している人物を、監視カメラの映像から探すという。
「結果は明日お伝えいたします。もう夜も遅いですから、勇者様はお帰りください」
「でも」
「お疲れ様でした。明日、万全の体調でお越しください」
ハタタカは1号に任せて、下男は駅に残ろうとしたが「下男のくせに、勇者様に従わないのか」と、巡査部長に丁寧に追い出された。
もう真夜中だったが、駅を出ても人はそこそこいた。駅まわりの建物の…主に飲み屋の…明かりが煌々とついて、人々が出入りしている。
古の勇者が、ふう、と白い息を吐いた。
「いいかげん慣れたけどよ…夜中だってのに、明るいよなぁ」
「暗かったら危ないのだ」
「そうだなぁ、でも冬の夜だぜ」
下男はあるじに笑いかけ、また、ふう、と息をついた。
「コーリエ…昔も、カルカナデいちの都会だったけどよ…デッカくなったよなぁ。百貨店まで、みんな…知らねえ名前のもあっけど…倍くらいデケェんだもんなぁ」
「前にも来たことあるのだ?」
「ああ。毎年、春と秋に母ちゃ……」
ハタタカは続きを待ったが、ゲンゴロは急に黙り込んでしまった。下男の顔を覗き込もうとした勇者様は、すてん、と転んだ。
「ハタタカ様!」
「大丈夫かぃ、勇者様」
本当は痛くて涙が出そうだったが、ハタタカは「大丈夫なのだ」と、泣かずに立ち上がった。
「…勇者様は、強ぇな」
ハタタカの前にひざまずいたゲンゴロの方が、泣きそうに見えた。でも泣かなかった。
せっかく買ったホロリも、食べずに寝た。
話の続きも、聞けなかった。




