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☆2

 泣き止んだ家族を見送り…コオロギは出なかった…見えなくなってからも、ハタタカはその場を動かなかった。

「なしたぃ勇者様」

「……やっぱり、気になるのだ」

「気になるって、何が」

 若き勇者は走り出した。


「ここなのだ」

 さっき光った、駅の通路の壁にある、駅構内地図の枠の下の方。ハタタカの目線の少し下あたりだ。

「さっき、ココがちょっと光ったのだ」

「へえ…これ、ピカピカしてるから、光が反射したんじゃねえのか…や、待ちな」

 ゲンゴロは、壁と枠の隙間に挟まっていたヘアピンを抜き取った。

「お手柄だぜ、勇者様。さすが雷っ子だ」

「おてがら…?」

 不思議そうな若き勇者に、古の勇者は「いい子はやんねぇか、こんなイタズラ」と笑った。


「おー来た来た、こっちだ」

 駅長と巡査部長がハタタカ達のもとに駆けてきた時、金属枠にくっついていた安全ピンが落ちた。

「あっ」

「あー…落ちちまったかー…」

 ガッカリする勇者たちに、横に控えたロボット擬人1号が「ご安心ください、録画しております」と、タブレットを取り出して、再生した。ハタタカが見つけ、下男を呼ぶ様子。くっついた安全ピン。

「コレが一体…?」

 ゲンゴロが苦笑した。

「駅長さんも雷使いだろ、こういうイタズラやったことないかぃ?」

「えっ……あ!」

「あるよな、鉄屑に雷の術ば詰めて、放り投げたりさ。壁の隙間に挟んどいて、触った奴がバチンってなるやつ」

「やったやった、扉に挟んで、イヤな先生驚かせたりしたなぁ」

「だよな? 俺も何べんやられたか。ちっちぇえピンとか隠してあんだよな、ホント気づかねくってさぁ」

 もと悪ガキたちは笑い合ってたが、雷使いの勇者様は冷たい目で二人を見ていた。そんなこと、何が楽しいんだろう?

「…私にはわからない。駅長、やってみてくれませんか」

 巡査部長(この人は炎使いだった)が、ポケットをさぐって、安全ピンを駅長に渡した。

「…このくらい、かな」

 駅長はピンに雷の術を込め、窓枠の下側の隙間に挟んだ。巡査部長が屈んでさわると、パチン、と音を立てて落ちた。

「少し強めの静電気程度か。これでは術警報も鳴らない。だが小さな子なら…これでも充分、驚いて泣くかもしれんな。低い所なら大人には見つけにくいが、子どもなら目に入る。なるほど…」

 ゲンゴロは「コオロギの犯人と同じ奴か、までは分かんねえけど」と前置きした。

「さっき通りかかった掃除屋に聞いた。ここの…駅ナカ大通り? だかで、最近こういう小せえ金属ゴミ増えた、とよ。売店の冷蔵庫が壊れたってのも、調べると何か出るんじゃねぇの。あれ、雷の力で動くんだろ」

 駅長と巡査部長が、一斉に携帯で連絡をはじめた。

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