5.謝罪と覚悟(終)
「暴れて悪かった。償いはする」
カンクロの、テーブルに額をつける勢いで頭を下げる様子に、テレビ電話の向こうのミシマの眉が、少し動いた。
『プロに折られたおかげか単純骨折ですんだ。治療代を払ってくれるというなら請求する』
「ああ。なんとか金つくらぁ」
ミシマは少し沈黙した。
『今回のことでわかったが、ハタタカ様は近くに人がいると雷を打てない。雷を誘導するための避雷針が要るだろう。出来たら君に渡すから、うまく活用してくれ。なんなら、それで帳消しにする』
「いいのかよ」
『この騒ぎのおかげで色々わかったこともある。利用できるものは利用したい』
「へえ」
さすがドッデの民は抜け目ねぇこと。皮肉のひとつでも言おうとしたが、隣のハタタカの視線を感じて口を閉じた。
対魔軍はもっと簡潔な対応だった。
『下手な魔物より訓練になる。いい経験になった。次に暴れる時は、もう少し被害を少なくお願いしたい』
「…そうかぃ」
「コレでいいかぃ?」
「みんなに謝って、えらいのだ」
新しい主人は大きく笑った。
「そりゃどーも」
「……」
「…んだよ」
「私には謝らないのだ?」
「謝んねえ」
あるじのガッカリ顔をなるべく見ないようにしながら、カンクロは話した。
「俺ぁオメェを殺せる。オメェ以外も殺せる。オメェはこれから、そういう危ねえモンを使う覚悟をしてもらわにゃならねえ。たとえガキであっても、だ」
「覚悟……」
「こういうこたぁ、大人だって言っただけじゃわかんねぇもんだ。謝っちまえば台無しになる。時々俺を倒してみな。それが出来なきゃ、危なくって俺を連れてけねぇぜ」
覚悟。考えたことなかった。カンクロに助けてもらうことも、自分の雷の力も。
「覚悟……」
ハタタカは、さっきのように走り出したりしなかった。古の勇者をジッと見る。
聞いてもわからないことがあるんだ、と思った。
※※※
「カンクロ! これから倒すのだ!」
「予告してんじゃねぇよ」
突進するハタタカを軽く避け、飲みさしのお茶を飛ばす。
「ひゃん!」
「まだまだだな」
「ハタタカ様の服を汚すんじゃないよ穀潰し!」
4号に怒鳴られ、カンクロが気を取られたところに、ハタタカが雷を落とす。
「くっそ……4号とつるんでやがったな」
「でも勝ったのだ!」
「ハタタカ様の服を汚したアンタが悪い」
「ちぇっ」
勝ったのにまるで晴れない顔の若き勇者に、カンクロは薄く笑みがこぼれたが、ハタタカの視線を感じるとすぐに引っ込んだ。
(了)