1.はじめての
※全般的に、殺し合いや暴力行為につき注意
ハタタカは目を覚ました。
「ハタタカ様! ハタタカ様!」
擬人たちが寄り添い、若き勇者を抱き起こしていた。
横を見たら、カンクロは床にいた。黒い水たまりの中に寝てて、ミシマが上に乗っかってて、震える銃口を向けられていた。
「応援を頼む!」
ミシマが携帯に怒鳴っていた。珍しい、とハタタカは思った。
カンクロは、なんの感情もない顔で、若き勇者の方を見た。
「どうだったぃ、殺された気分は」
よくわからなかったので、返事できなかった。
キッカケはわからない。ミシマと勇者業の復帰時期を話し合ってた時だった。
カンクロは、ミシマから携帯電話を、ハタタカから耐雷服を、それぞれ受け取ってから急に静かになった。1号に「綺麗な水」をもらっていた気はする。
急に言い出した。
「オメェ……俺が誰か、わかってねぇな」
「カンクロなのだ」
「…人殺しだ」
「でも勇者なのだ」
「人殺しだ。その気になりゃあ、オメェだって殺せる」
「でも」
首がヒヤッとした。
※
「カンクロ?」
「ハタタカ様、離れてください!」
充分離れていたし、擬人達が勇者をガードしていたが、ミシマは注意した。
「大丈夫なのだミシマ、私はちゃんと生き返ったのだ」
「だが、コイツはあなたを手にかけた!」
「オメェもそうしてやろうか」
一瞬で、カンクロはミシマの銃を奪って腕を捻り、壁に押し付けた。
「やめるのだ! ミシマは死んでしまうのだ!」
「なら止めてみな」
何かが折れる音がした。悲鳴。
「や、やめるのだ!」
「腕折っただけだ。次は首を折るぜ」
擬人3号が、殺し屋に車椅子ごとぶつかった。
「2号、私を押せ!」
「わかった」
擬人2号が、3号を殺し屋ごと別の壁に押し付けた。
「……この…」
「ハタタカ様、この男に雷を落としてください!」
「え?」
3号に言われて、若き勇者は戸惑った。人にそんなことをしたら、お母様のように。
「今、ここでこの男を止められるのは、貴方の雷だけです! 彼だけは貴方の雷で死にません! ギギ…2号が押し負けない…うちに…」
力自慢の2号がだんだん押されていた。3号の車椅子が軋み、車輪が外れる。
「う」
お母様。
「うう」
大好きなお母様。私が触ったせいで、酷い怪我をしたお母様。
でも。
「うう…ああ」
ミシマに酷いことをした。擬人も壊される。
このままじゃ。
「あ、あああああ‼︎」
ハタタカは、カンクロに思いきり体当たりした。
そして泣いた。