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※虫注意

※(赤くないけど)ケガと出血注意

 館内にいた人達に外に出るよう声をかけながら、ゲンゴロは階段を駆けあがった。

 そして2階に着いた瞬間、右手から飛んできたカミキリに押さえ込まれた。

「わたしのせいじゃないのに」

 そう鳴いた魔物に、右のオデコに噛みつかれ、ゲンゴロは踊り場に落ちる。下男の頭から黒い液体が噴き出した。

 髪を顔ごと食おうとするカミキリの腹に水鉄砲を打つ。術をこめた水は、魔物の身体を貫通した。

 衝撃で離れた顎に水鉄砲ごと押し込んで、今度は丸ごと爆破させた。


 ハタタカは園に駆け込んだ。着く前から魔物の気配を感じたのだ。園から人々が逃げ出してくる。

 と、魔物の気配が消えた。


 若き勇者は、階段の踊り場で下男を見つけた。頭から墨を浴びたようになっているが、あるじの気配に、顔の右側を手で覆い起き上がった。

「ゲンゴロ⁈」

「悪ぃ、しくじった…倒しはしたが血ィ出しすぎて気失っちまった。顔どっかに落ちてねぇか?」

 ハタタカは、灰の中に落ちていた顔の一部を、杖で引っ掛けて渡した。薄い皮膚のように見えて精密機械なので、ハタタカは触れない。


 幸い、怪我人は誰もいなかった。

 戦いでぶちまけた「黒インク」を、責任を持って掃除した下男は、そのまま浴室に叩き込まれた。



 アクアが目を覚ますと、子供たちを送ったバスが帰ってきたところだった。魔物が出たので早めに帰ったのだ。教堂師が同乗し、勇者様が車で追って守ったという。

 アクアは、師長はじめ皆に頭を下げて回った。


 ハタタカはハンタン(レトロ蒸しパン)の3個目に手を伸ばした。

「『わたしのせいじゃない』…と言ったのだ?」

「ああ。ありきたりなやつだな」

 答えたゲンゴロの頭には、もう魔物に噛まれた跡は残っていない。

 勇者とその下男は、近所の喫茶店にいた。二人とも昼ごはんを食べ損ねていたので、擬人達を教堂に残し食べに来たのだ。

 魔物は一言だけ言葉を発することができる。魔物使いの魂が発する言葉なので、魔物使いを見つける手がかりになるが、今回のように定番じみたものもある。

「この前襲われた人、目は覚めたけど話はできなかったのだ。お母さん泣いてたのだ…」

「そうか」

 ゲンゴロは左目を細めた。

「すまねぇ。魂の後を追っかけてりゃ、とっくにカタがついてたってのに」

「見えない方から襲われたら仕方ないのだ」

 勇者の慰めに、下男はため息をついた。

「昔ぁこんなヘマしなかったがなぁ」

「愚痴がおじいちゃんなのだ」

「うるせぇ」



 勇者と下男が戻ると、子供の声が響く園は、祈りの場へと変わっていた。夜の祈りの準備が行われて、建物内にフワリと香の香りがする。

 テマリ大陸を統べる三叉路の神よ、皆を良い道へ導きたまえ。


 アクア助手は、ハタタカが教堂に入ってきたのを見かけて近づいた。

「アクア助手さま、お元気になられてよかったですのだ」

「ご、ご迷惑をおかけしました…」

 周りを見るが、あの白髪男がいない。

「おひとりですか?」

「1号を探してるのだ…あ、ゲンゴロなら2号と屋根に登ったのだ。魔物がどこからどう入ったか調べたいって」

「そうですか…ああ、1号さんは先程、4号さんと交代なさってましたよ。台所にいらっしゃるかと」

 ハタタカの擬人は全部で4体ある。場所も雷の力も使う為、大抵は2体づつ交代で動き、他の2体は低電力モードで休ませている。

 台所へ案内する間、アクアは聞いた。

「あの、ゲンゴロ…さん、どういう方なんですか?」

「どーゆー…?」

「いえその、身元もわからない人を連れて歩いて、勇者様は大丈夫なのかと…」

 勇者様はニッコリ笑った。

「大丈夫なのだ! 勇者のお仕事を助けてくれるって約束してくれたのだ」

「約束、ですか……でも…」

「ハタタカ様!」

 4号が厨房から出てきたので、話はそれきりになった。

 約束。

 約束を守るのは善人だけではないか。


 講堂の天窓が格子ごと壊れていた。

 屋根の上にゲンゴロと擬人2号が立っている、その周りにも結構な破片が散っていた。

「魔物、ここからはいった」

「…出たのもココから、かもな」

「出た?」

「一度出て、また入ったんだ。外から来たみてぇに見えるように」

「なぜ、そんなことを」

 答える前に、ゲンゴロは左目で見下ろした。講堂に誰かいる。

 アクアは下男を見上げた。

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