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4

※吐血注意

 暴れたい気持ちの下男が真っ先に飛び出した。ハタタカが続く。

「2号はジュアンさんと車で離れるのだ!」

 だがジュアンも勇者の後を追った。タランテラと家主が心配だった。

 屋敷の方から人々が逃げてくる。


 大窓はガラスが割れていた。

 陽が入らぬ部屋の片隅に倒れた家主と、大きな何かがいる。

「サーラ様とタランテラは!」

「バカ危ね」

 ゲンゴロがジュアンをつき飛ばす。瞬間、魔物が弾丸のような速さで下男に体当たりした。

「⁈」

 ゲンゴロに一瞬目を向けたハタタカは、魔物にテーブルをぶつけられ、窓の外に飛ばされた。

「もうおびえるのはいやだ」

 馬くらい大きなノミが嘶いた。

 その腹に避雷針が刺さる。

「ハタ…ぐぇ!」

 ノミは、猛スピードでゲンゴロにぶつかった。壁と魔物に挟まれた下男は黒い血を吐き、床に崩れ落ちた。

「もうおびえるのはいやだ」

 ノミがタランテラを引きちぎる。窓の外でジュアンが悲鳴を上げた。

 服の左肩から、小さな何かがコロリ、と落ちた。



「あれは⁈」

「2号!」

 屋敷に飛び込みそうになるジュアンを、2号が引き留め、連れていく。

「待って、ガラグデーンの中身! 保存しないと!」

「危ないから離れてて欲しいのだ!」

 ハタタカは部屋の中を見た。

 ゲンゴロが避雷針を刺してくれたが、魔物の近くで家主サーラが倒れている。ゲンゴロも動かない。

 2号はチカラが強いから押さえててくれると思うけど、時間をかけていたら、ジュアンが飛び込んでくるかもしれない。急がなきゃ。

 ノミは八つ当たりするようにタランテラを破っていたが、ハタタカに気がついて顔を向けた。

「あっ……⁈」

 ノミは、飛ばなかった。

 後ろ足の関節に、黒い刃が走り爆発する。追って、前足も切れた。

「直に、打ち込みな」

 ゲンゴロが、なんとか起き上がって家主を抱え、部屋を出た。

 ハタタカは、タランテラの端切れをなるべく離してから、言われた通りにした。



 魔物使いの男は、遠巻きに見ていた野次馬のひとりだった。戦後から村に住む一族で、サーラの家とも長年付き合いがあった。

「言い伝えられていた。共に北から逃げてきた時に、曽祖父が人を殺して金品を奪った、その証をアイツの家が持っていると。アレがある限り、俺ら一族は逆らえない、と……過去に怯えて暮らすのは、もうウンザリだ」

 ガラグデーンの話を聞いて、証はあそこだと確信したという。

 左肩から出てきたのは、小さな骨と、名入りの指輪。


「なんで急にノミの足が切れたのだ?」

 救急車に運ばれる家主を見送りながらハタタカが聞いた。

「言ったろ、何もなきゃ血反吐でもションベンでも、って」

「……さっき吐いた血…⁈」

「ハラワタ潰されて助かったぜ」

「⁈ …………」

 絶句するハタタカに、ゲンゴロは薄く笑った。

「ああ…そういや、やったらクチきかねぇんだっけな」

「……⁉︎ あっ、いや」

 フラフラと歩み去る下男に、ハタタカは言葉を探しながら後を追った。



「待ってください、タランテラを修復させてください! あとガラグデーンが」

「わかったから! 記録と申請が済んだら持ち主に返すから、その後で……」

「お願いしますよ、汚さないでくださいよ! ああそこの人踏まないで! 変な薬品かけないで! その刺繍糸一本も大事な」

「まず我々に現場の記録をさせてくれ」

「警察は後だ、まずは対魔庁だろ」

 ジュアンと警察と対魔庁職員とが言い合ってるせいで、それぞれ作業が進まない。ゲンゴロがジュアンを引っ張った。

「おい、話があんだが」

「いま忙しいんで後にしてください!」

「俺の一張羅いるかぃ?」

「一張羅?」

「タラントだ。少ねぇんだろ、やるよ」

「「えっ‼︎」」

 ジュアンだけでなく、ハタタカもビックリした。コッソリ聞く。

「…あげちゃって、いいのだ……?」

 古の勇者は薄く笑った

「いいさ。どうせ俺ぁ袖も通せねぇ」

 軋む胸の内は、無視した。これでいい。

 驚きすぎて固まってたジュアンが一転、叫んで踊ってゲンゴロに抱きついて、また叩かれた。


 対魔庁職員に、ジュアンを一旦ハタタカの別荘に連れていくことを伝える。現場は快く彼らを見送って作業に戻った。

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