表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/78

4

 トートーもメリも伸縮性のある布でできているが、出された服は少し大きかった。

「手間がかかるね」

 4号が、裾や袖の長さを整えて、小さなツマミで仮止めした。

「裾上げしてあげるから一旦脱いで。ああもう、そのツマミは外さないで。2号、コレ一揃い譲ってもいいかい」

「いい」

「…すまねぇな、ありがとうよ」

 言われるままに服を脱ごうとして無意識に右肩に手が行き、カンクロは狼狽えた。

 カルカナデの服を脱ぐときの仕草。

 着る資格もないと、こんなに強く思っていながら、どうして。


 4号は、あっという間に裾や袖の長さを直してくれた。身体にピッタリする生地に不快感はなかった。着るのも楽だ。

 だが。

「どうだ?」

「ああ悪かぁね…悪くない。ありがとうな。その…擬人…?だかも」

 ハタタカに見つめられて、カンクロは左を向いた。そうしないと隠せないくらい戸惑っていた。

 服の右胸に触れる。ボタンも飾りも合わせもない。


「これもあげるのだ」

 ハタタカが小さな箱をよこした。

 青い水生石のついたブローチが入っていた。

「追跡機能つきの術石なのだ。対魔庁のミシマが、カンクロにこれ付けてて欲しいって言ってたのだ」

「……追跡機能たぁ、なんでぃ?」

「え、えーと……なんか場所がわかるのだ」

 主に変わって1号が説明した。

「貴方の身体が持つ微弱な術力を電波信号に変えて送り、貴方がどこにいるか、我々がすぐ調べられるようになっています」

「へぇ……要は首輪か」

 仕組みはよくわからないし癪だが、敵国の悪党を見張りも付けずに放っておくわけもない。勝手につけてないのが意外ですらある。

 だが何故そんな厄介な奴を起こすのか。やはり気にかかったが、まだ頭も冴え切らない。カンクロはひとまず従うことにした。

 右の襟元につける。

 無意識だったが、たったそれだけのことで、カンクロは目が潤むほど安心した。


⭐︎


「耐雷服作るから身体測らせて」

 4号に肩やら腕やら胴回りやら、身体中を触られる。擬人4号には計測システムを持っているのだ。

「耐雷服だぁ? 俺ぁ水使いだぜ」

「あんたが何使いでも、ハタタカ様と一緒にいるなら必要だろ」

「俺も不死身なのにか」

 気が利くようにと思考回路を魔改造された結果、やたらと短気になってしまった中古擬人4号は、イライラして言った。

「頭の悪い殺し屋だね、あんたの身元は隠すに決まってるだろ! 普通の人間として仕えるなら耐雷服が要るの、わかったかい!」

「……わかった」


 4号たちが部屋を出て行っても、カンクロはボンヤリした顔で立っていた。ハタタカは心配になった。

「大丈夫なのだ、4号すぐ怒るけど、素敵な服を作ってくれるのだ。この服も4号に作ってもらったのだ。カワイイのだ」

 カンクロはボンヤリした左目を少女に向けた。

「随分薄くて短ぇ耐雷服だな……色気付くにゃ早ぇだろガキ……」

 ハタタカのシャツは長袖だし、スカートも膝下だったし、厚い耐雷布と重ね着で同年代の子よりずっと服は重い。ぶっちゃけカンクロの方が薄着だ。

 なので「どこがなのだ?」と聞こうとしたが、その前にカンクロが気を失って倒れた。


 カンクロを2号に寝かせてもらってから、ハタタカは1号にグチった(4号には内緒にしてもらった)。

「私の服が薄くて短いって変なこと言うのだ、カンクロの方がずっと薄いのに!」

「その通りですね。ところで」

 1号はタブレットを取り出した。

「百年前の耐雷服は今よりもっと厚くて長かったのです、こんな風に」

 タブレットに出した雷使いの映像は、無骨な服の上に避雷鋲だらけのフードコートを着ていて、手袋もしている。顔もよく見えない。これで動くのは大変そうだ。

 自分の服を見る。

 外出時にはこれに避雷鋲のついたマントを羽織る。マントは重いけど、顔も髪も出せている。手袋も、必要な時だけだ。

「百年前より薄くて短いのだ…」

 ハタタカはムッとしたのを少し反省した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ