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コンテストに応募するために執筆している作品です(o_ _)o))
「――冗談ですよね?」
耳を疑った。
目の前の男に聞き返すと、彼は首を横に振る。
「冗談ではない。これは正式な任務だ」
男の黒い双眸がこちらをじっと見つめてくる。
執務椅子から立ち上がった男は、大きな窓に近づいた。
「そして、相手方はキミを指名している」
「指名など受け付けていないはずです」
「キミはなにも分かっていない。私たちは国からや貴族たちからの援助を受けて存在している」
唇を噛んだ。
(つまり、依頼者は意見を汲まなくてはならないほど偉い人)
こぶしを握った。
「我々は国の依頼を確実にこなすことを条件に存在を黙認されている」
「……そうでしたね」
本来なら、裏稼業を営むこの『組織』は国にとって目障りな存在だ。
それでも存在を黙認され、援助を貰えるのは――国の依頼を完遂するという契約を交わしているため。
国が本腰を入れてこの『組織』を潰しにかかると、自分たちは存在できなくなる。
「これはキミの新しい名前と身分、そして依頼内容だ。任務開始は二週間後。それまでに資料を読み込んでおくように」
「……承知いたしました」
書類の束を受け取り、当主の執務室を出た。
一枚目の紙には新しい自分の身分と名前、経歴などが書かれている。
(名前はディア・レンダール。辺境の小さな村の出身。出稼ぎとして王都に来て、職業斡旋所で見つけたこの仕事に就いた)
今までいろいろな仕事について、様々な人間になった。
新しい任務の際には、新しい名前と身分をもらう。偽りの経歴も作ってもらう。
だから、この経歴はこれから『自分』のものなのだ。
「ディア・レンダール。十八歳。職業――伯爵家のメイド」
口にした名前に馴染みはない。けど、今から自分は『ディア・レンダール』だ。
(はじめての内容でも、上手くやるわ。私はきちんと任務を遂行できる)
呼吸を整えて、彼女――ディアは邸の廊下を歩いた。
二週間後からの任務に不安を抱きながら。




