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7.闘技大会

「闘技大会?」


この監獄での生活に慣れてきたある日、ジールからその話を聞いた。


「そう。ここにいる囚人達同士で戦って、1番強い人を決めるの」

「それって何人くらいいるの?」

「毎年300人くらいって言ってたわね」

「そんなに...」

「ま、私もシェルラもまだ見たことないからわかんないけど。ちなみに、全員強制参加よ」


闘技大会か...僕は毎日剣術の稽古をしているが、どれくらい上達したのか、対人ではどれくらい通じるのかさっぱり分からなかった。ちょうどいい腕試しの機会になりそうだ。


「ま、私たちが勝つのは不可能だけどね」

「ん、そうなの?」

「そりゃそうでしょ?だって...この大会は、地区ごとにチーム組んで戦うんだから。私たちの地区は3人しかいないし、勝てるわけないわよ」

「ん、他はどれくらいいるの?」

「少なくとも20人はいるわよ。多いとこは50人」

「...厳しいね」


てか、50人でチーム組んで本当に戦えるのか...?わっちゃわちゃじゃない...?


「そ。だからまぁ、程々に楽しめばいいんじゃない?」

「勝ったり負けたりしたらなんかあるの?」

「勝ったら...そのチームのリーダーが、1年間、ボスになるの。この監獄における絶対強者となれる。来年の闘技大会までは、って制限付きでね。敗者は特にないけど...ま、強いて言うなら死ぬ可能性があるってだけかしらね。ま、死ぬ前に普通は降参するけど」

「なるほど、ということは去年勝ったのは...」

「斗真たちらしいわね。だからあんなエラそうなの。ちなみに、3年連続らしいわ」

「なるほど...。ちなみにそれはいつからなの?」

「明日だけど」

「なんで今まで教えてくれなかったの...!?」


...そんなわけで、急遽(僕が知らなかっただけだが)差し込まれた闘技大会に挑むことになった...


「ん...すごい人」

「こんな人たちと戦うの...?」

「戦うって...私たちは適当に負けそうになったら降参するんだから、そんな気負う必要ないわよ」


翌日、会場となる第1採掘場に行くと、多くの子ども達が8つのグループに別れて集まっていた。その中には...


「お?お前らまだ生きてたのか?ケケッ、てっきり死んだと思ってたぜ」

「ん、久しぶり、先輩」


...あの斗真とかいう輩が率いる集団もいた。

このグループは、他と比べて人数が明らかに多い上、一目見ただけで強いというのが一瞬で伝わってきた。それも、全員。


「いや〜お前らと戦えるのが楽しみだなぁ?蹂躙してやるのが、の方が正しいかもな?」

「私たちは、アンタとあたる前に負けると思うけど?」

「相変わらずエラそうだなぁ、ジールよぉ?ま、対戦表を見りゃ分かる事だ...にしても、お前みてぇな気弱な野郎がここに来るとはなぁ?シェルラ」

「ひっ...!」


斗真がシェルラに近づこうとしたので、僕が間に入って睨みつける。


「シェルラに近づくな」

「ハンっ!お前みてぇなチビが王子様気取りかよ...あ〜早くボコりてぇなぁ?」

「......」


コイツ、クソムカつくな...この場でぶん殴ってやろうか...?

まぁ、そんなことしたら後々めんどくさい事になりそうだし、今はしないけど。


その後、各グループごとに整列して、司会みたいな人がルールやらなんやらを話すのを聞いた(半分くらい聞き流してたけど)。そして、組み合わせ発表が始まった...のだが。


「さて...本日の対戦表を発表します...第1試合は...第1採掘場対魔銀洞窟チーム!」

「なっ...!アンタまさか...!」

「あ〜?どうした?なんか問題でもあったか?」

「初戦から...!」


そう、僕たちは初戦から先輩たちのチームと当たった。まず間違いなく、先輩が操作したのだろう。


「さぁ、2チームは準備してください!武器は各自用意していると思うので...配置をお願いします!30秒後に試合開始です!」

「は!?30秒!?そんなの無理よ!しかも武器なんてないし...!」

「うぅ...」


シェルラとジールは、大いに慌て散らかしていた。まぁ、急にそんなこと言われたら、そうなるのかもしれないけど。


「おいおい、早くしろよ?試合始まっちまうぜ?」

「...!降参よ!降参するわ!だからもう終わりに──」

「ならお前らは俺たちに服従することになる。降参ってのは、そういうルールだぜ?」

「そんなルールは──」

「おーっと、私としたことがルールを追加したことを忘れていましたぁ!降参した場合、そのチームは相手チームに服従することになりまーす!」

「...!ゲスが...!」

「ヒャハハハハァ!これがボスの...権力の強さだ!」


あ〜...なるほど、こういう感じか。

要は、買収ってやつだ。審判は、完全に斗真の言いなりらしい。

圧倒的アウェイ。これはなかなか面倒だ...


「くっ...!こんなのどうしろって...!」

「相手は武器を持った男たち...それも、私たちの十数倍の人数。こんなの、勝てるわけない...!」


シェルラもジールも、この状況に完全に参ってしまってるみたいだった。戦意なんてものは、一ミリもたりともなさそう。

まぁ、関係ないか。だって、コイツらは...


「ん、2人とも僕の後ろにいて」

「へ...?」

「何をする気なの?」

「何って...倒すだけだけど。木刀持ってきたし」


僕一人でボコすから。

といっても、サポートはしてもらうかもしれないけどね。

なんにせよ、この2人に汚れ仕事はさせない。絶対、この2人にだけは、手は出させない。


「...!でも、1人であんな人数は...」

「1人じゃない、2人がいる。シェルラはジールを魔法で守ってあげて。ジールは僕の回復をよろしく」

「ちょ、ほんとに殺され...待ってよ!!」

「ん、心配ご無用」

「ハハハハハ!あいつ1人で俺たちを相手する気か?」

「ギャハハハ!正気じゃねぇな、あいつ!」

「よし、3人ずつ行こう。3人いりゃアイツごときフルボッコだぜ!」


向こうは完全にこちらを舐め腐ってるな。

試合会場の端に僕、その後ろにシェルラとジールが立っている。そして、僕の目の前には...50人の子供が、弧を描くように立ち、こちらを見ている。


「さぁ、それでは...試合開始です!」


審判の合図で、向こうがどう動くか。50人いっぺんに来たら、まぁまぁ邪魔そうだけど...


「んじゃまずは俺らからだなー」

「まずはも何も、これで終わりだけどな」

「ギャハハ!それはそうだな!」


だが、相手は3人しか出てこなかった。

なんでだろ...?やっぱりら50人もいたら連携できないからかな?それぐらいなら...


「本気、だすまでもない」


相手は3人ともかなり体格が大きいな。本当に子供か?

筋肉質な体に生半可な攻撃は通らないだろう。武器は3人とも僕と同じ木刀。リーチは若干向こうの木刀の方が上...?3人全員一撃で落として素早く離脱しないと危ないかもね。ならば...

足に力を込める。全身の魔力を、筋力を、血液を...全てを集中させる。そして...解き放つ。


「...ん、ルートは決まった」

「あ?なにブツブツ言って──」


ドンッ!


「!?な──」


ドッ!ドカッ!バキッ!


「かっ...!?」


バタバタバタッ


「...!?なんだ!?何が起きた!!全員、やられただと!?」

「なんだ、今の動きは...ありえない速さだったぞ!?」

「ん、楽勝」


僕は体格が優れない。だから、力に頼った戦闘は不可能だ。ならばどうするか?答えは簡単...とにかく、速さを追求することだ。


体が軽い分、スピードは出しやすい。スピードが速ければ、その分のエネルギーを剣の打突に使うことが出来る。その上で、剣術的な観点から、剣先の遠心力や太刀筋、打突部位など...あらゆる観点を計算し、ルートを算出すれば...どんな相手だろうと、一撃で容易く落とせる。


今回の場合、相手はこちらを舐めていた上、筋肉質で重かった。だが...人間の最大の弱点とも言える首筋を打てば、いくら筋肉質で硬かろうと簡単に落とせる。

これまでの1人稽古が活きた瞬間である。これは、嬉しい事実が知れた。


「バカな...!ありえない!こんなの...!」

「ん、ありえる。だって現実だから。さぁ...」


正直、僕はとても腹が立っていた。権力にモノを言わせ、シェルラやジールを貶めたこと。僕はともかく、彼女たちを侮辱する発言の数々を、許す気にはなれなかった。だから...

ここで全員、たたきのめす。


「次はどいつだ?」

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