表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/39

6.日常

6話目です。

※昨日寝落ちして投稿し損ねました、すみません。

「...ん、やっと朝...」


ここに来て3日目。初日、2日目色々ありすぎて、とても長く感じた。


「おはよう」

「ん、おはよう」

「おはよう、3人とも」


アインがこの洞窟の見張りを担当することになったので、アインもこの洞窟内に住むことになった。

朝食を食べ終えると、シェルラとジールから提案があった。


「「私たち...魔銀を取り込みたい」」

「...!?」


魔銀を取り込むと、魔力が増えるのは分かっている。だが...


「ダメだ。危険すぎる」

「ん...アインと同意見」


昨日、命の危険があると聞いた上で、賛成できるはずがない。


「ていうか、何でまた急に...」

「私たちは今後、シシルと一緒に...国を、滅ぼすことになる」

「そうなった時、私たちは...足手まといではいたくないの。だから...強くなるために、魔銀を取り込む」

「でも、まだ時間あるし...」

「いや、今やる」

「でも...」


僕とアインは渋っていたが...そこに、声をかける者がいた。


「好きにさせたらいい。その子らは、シシルに着いていくと決心しているようじゃ、そう簡単には死なんじゃろう。むしろ...そんな貧弱な状態で国家転覆に加担する方が、自殺行為というものよ」

「...!?看守長!?」

「いつから...!」

「最初から、じゃ。ほれ」


といって、看守長は2人に魔銀の欠片を渡した。


「...!ありがとうございます!」

「せいぜい気をつけることじゃな」

「...頑張ってね」


僕は死ぬほど不安だったけど...まぁ、ここまで言われたら仕方ない。最後まで見守るとしよう。

2人は、魔銀を握りしめる。すると...魔銀が光を放ち、2人を包み込む。やがて光が止み、唖然とした表情の2人の姿が見えた。


「...大丈夫?なんか変化あった?」

「うーん...?わかんない」

「私も何が変わったかって言われると...うーんって感じね」


なんと、変化がないと言う。


「どういうことだ...?」

「私もこんな状況になるのを見るのは初めてじゃ...全身から溢れる魔力を感知できるほど、魔力が増大すると聞いておったんじゃが...」


看守長ですら理由が分からないとは...

まぁ、そのうち分かるか。分からなくても、ふたりが無事ってだけで、今はいいや。

と、思っていたのだが...その後魔銀を採掘する際、事件が起きた。


「えいっ!」


と可愛い声と同時にシェルラの細い腕で振り下ろされたツルハシは...魔銀の鉱脈全域を破壊しかねないほどのとんでもない威力だった。

壁全体にヒビが入り、魔銀の欠片が零れ落ち、キラキラした粒子が降り注ぐ。


「え...え?」

「ん、これがシェルラの本気...」

「し、信じられん威力だ...これが、魔銀を取り込んだ影響なのか?」

「...もしや、お主ら...ちょっと来るがよい」


そう言われて連れて来られたのは、管理棟の地下室だった。


「こんな場所があるとは...」

「ん、アインも知らなかったんだ」

「ああ、初めて来たよ」

「ここには、魔力測定器がある」

「魔力測定器!?それは確か、軍部のみが保有している魔導具(マジックウェポン)では...」


知らない単語が多いけど...

魔力測定器は、魔力を測定する機械、魔導具は、魔法で動く道具って認識でいいのかな...?


「表向きにはそうじゃな。だが、ここにも存在している。ここは国の管理下にある施設じゃから、まぁあってもおかしくはなかろう」

「そ、そうなのですか...?」

「まぁよい。とにかく...お主ら3人とも、この水晶に手を触れよ」


そう言って、看守長は手のひらより一回り大きいくらいの水晶玉を渡してきた。


「ん...じゃあせーので...」

「ちがう!1人ずつ触れ!」

「ん...」

「...じゃあ、私からやるわ」


まずはジールから。

水晶玉に触れると、水晶玉...ではなく、地下室の奥の方にあったモニターが光を放つ。そして、数字が浮かび上がる。


「78216...やはりか」

「えっと、その数値ってすごいんですか...?」

「あー、そうじゃな...すまん、やはりアインも計測してくれ。そうすれば分かるじゃろう」

「は、はい...」


よく分からないまま、アインも計測することに。アインが水晶玉に手を触れると、先程同様モニターが光り出す。そして表示された数値は...


「...150!?」

「ん...少ないね」

「そう言ってやるな、シシル。平均は100じゃ、150でも凄い方なんじゃぞ?」

「ん、そうなんだ。じゃあジールはもっとすごい」

「そうじゃな、恐らくトップクラスじゃろう」

「俺の数値...一回りも二回りも年下の少女の544分の1くらいって...情けねぇな...」


ガッカリするアインを見てたら、なんか可哀想になってきた...

ていうか、看守長は、こうなることを分かっててアインに測定させたのか...なかなか酷いな、あの人。

うーん、このままじゃアインがただ可哀想な目にあっただけだし...ちょっとイタズラしちゃおっと。


「ちなみに看守長はいくつなの?」

「さあな、測ったことないから分から──」

「ん、じゃあ測って」

「.....」

「は?」


僕のイタズラは、看守長の魔力も測ってもらうというもの。これでアインと変わらない数値なら、少しはアインも浮かばれるだろうし。


「ちょ、シシル!何を言い出すんだお前は!?」

「そうじゃぞ!なぜ私が測らねば...」

「気になる」

「気になるかぁ」

「...仕方ない、いいじゃろう。しかとその目に焼き付けるがよい!」


ワクワクしながら計測を待ち、表示された数値を見た──


「え、2?」

「か、看守長?何かの間違いでは?もう1度計測を...」

「...私は生まれつき魔力がなかった。だから、2で間違いない」


まずい、なんとも言えない気まずい空気になってしまった。


「...なんか、ごめん」

「...よい。さぁ、早く測れ」

「じゃあ、私が測る」


シェルラが水晶玉に触れ──ようとした時、看守長によってそれをとめられた。


「待て、お主は最後じゃ。シシルが先に測れ」

「ん...?まぁ、わかった」


意図は分からないが、先に測ることになったので、水晶玉に手を触れる。

触れると、とても不思議な感触に襲われた。全身の魔力が渦巻き、動き回っているような...


「...長いな」

「長いね」


なかなか計測が終わらない。多分始めてから3分くらい経っているが、まだ終わらない。他のみんなは5秒程で終わったのに...


「...終わらないね」

「ふむ...仕方ない、か。シシル、お主の計測は諦めてもらう他ないな」

「ん...残念」


理由も数値も不明なまま、僕の測定は終了。モヤモヤするけど、まぁ仕方ないか。


「じゃ、今度こそ私だね」

「...気をつけるがよい」

「...?はい」


そう言って、シェルラが水晶玉に手を触れた──その時。


バキンッ!


「きゃっ!」

「な、なんだ!?」

「そ、その...急に水晶が割れちゃって...」

「なんだと!?」

「ご、ごめんなさい!どうしよう、どうしましょう!?べ、弁償ですか?それとも...」


シェルラはあわあわしていたが、看守長は1ミリも動じていないみたいだった。


「落ち着け、シェルラ。こうなることくらい予想はついていたからな、問題ない」

「はい...?と言いますと...」

「...お主は、この中でダントツで魔力効率が高いんじゃろうな」


魔力...効率?


「えっと...?それは何でしょうか...?」

「魔力効率は、魔力濃度と出力量から計算される、ある種の基準値じゃ。魔力濃度は、一定の魔力を消費した時に発生するエネルギーの量。出力量は、一度に使用できる魔力の量じゃな。さっき、魔銀を採掘しようとした時、ありえないほどの魔力が放出されていたから、そうじゃろうと思っていた」


なるほど、納得。

それを証明するために、僕たちの魔力を計測しようと思ったってことか。ま、僕とジールはついでだろうけど。


「じゃあ、水晶が割れたのは...」

「計測する時、お主の魔力が一斉に水晶に流れ出たからじゃろうな。まぁ、古いものじゃから仕方ないじゃろう」

「なるほど...」

「こうなると思っておったから、シシルに先に計測させた。ま、計測出来なかったがな。じゃからまぁ、お主が気にすることではない。案ずるな」

「はい、ありがとうございます...!」


シェルの水晶破壊は、これで理解できた。

でも、そうだとしたら...


「ん...じゃあ、僕の計測不良はなんで起こったの?」


僕の場合は、水晶破壊が起きてないから、魔力効率が高いわけではないはず。じゃあ、なんで測れなかったんだろ...?


「それが分からないんじゃ...濃度と出力の両方が弱すぎるからかと思ったが、魔銀を割っている以上、それはありえない。魔銀を割るには相当の魔力効率が必要となる。そして、魔銀を割るほどの効率で計測できるのならば...いくら多くても、1分もあれば終わるはずなんじゃよ。まぁ要するに、私にも分からないんじゃ」


うーん、分からん!

僕に理解できる分野じゃなさそうだね。これは諦めた方がよさそうだ。


「ん...よく分からないけど、わかったことにしとく」

「...もうそれでよい」

「とにかく、3人とも凄いってことは分かりましたよ」

「私は2人に見劣りする気がするけどね...効率おばけと計測不可なんだから」

「お、おばけ...」

「なんか僕が悪いみたいな言い方...」

「...言っておくがな、ジール。お主はその年で回復魔法が使える時点で、はっきり言って超秀逸なんじゃぞ?見劣りなんてせんわい。寧ろ今1番凹んでるのは...」


「ん...アイン、元気だして」

「う、うるせぇ!俺はへこんでねぇ!」

「...年甲斐もなく落ち込んでおる、アイツじゃろうて」


そんな感じで、まぁよく分かんないまま魔力計測を終えた。

次の日以降、シェルラは魔銀採掘に参加せず、管理棟の図書館で魔法を学ぶことになった。シェルラが魔銀を掘ると、何が起こるか分からないから...

僕とジールは魔銀採掘。看守長曰く、


「魔力量は増やせんが、魔力効率は魔力を使い続けることで上げられる」


そうなので、魔銀を掘って魔力を使い、魔力効率の拡張を目指していた。


こんな大量の出来事が、たった2日のうちに起こっていた。まだあの惨劇が起きたのが2日前...そうとは思えないくらい、長い時間を過ごした気がする。


この2日間で、僕は気づいたことが2つあった。

まずひとつ...僕は、寝ることが出来なくなっていた。

理由は分からないが、寝付けない。ただ、昼間それで動けなくなるとかではなく、本当に眠気が来ないのだ。

流石に暇すぎるし、明日からは夜中に剣の練習でもしようか、と思っている。


2つ目に...僕は、異常な程に落ち着いていた。

目の前で親友が殺され、弟が連れ去られ...あれから3日しか経っていない。

昔は魔瘴に毎日苦しめられ、毎日のように泣いていたのに...何故か、心は怖いほどに静かだった。

僕は、それが無性に怖かった。僕の中から、感情が消え失せたようで...


「...シシル?どうかしたの?」

「...!いや、なんでもない。大丈夫、シェルラ」

「そっか...」


そう、大丈夫。大丈夫なんだ。そう思えば、きっと大丈夫になるから──


ポンッ


「...?」

「何か悩んでたら、私に言ってね。いつでも、相談に乗るから」


僕の頭に手を乗せながら、シェルラはそう言ってくれた。

温かかった。シェルラの優しさが、直に心に伝わるようで、とても安心した。


「...ん、ありがとう、シェルラ」


その日もまた、僕は採掘に励んだ。コツを掴んできたのか、昨日よりもかなり早いペースで掘り進めた。


「シシルよ、少しくらい休んだらどうじゃ?そんなペースで掘っていたら、魔力が無くなってしまう」

「ん、大丈夫。全然疲れてないから」

「...そうか...」


正直、割とキツイ。特に腕と体力の面でかなり厳しい作業なのだが、魔力に関しては欠片も減っていない。それに...腕も体力も、魔力を循環させつつ休めばすぐ完治するので、休憩の必要はない。一方...


「ぜぇ、はぁ...くっ、固い...」

「さて、お主が魔銀を掘るのに一体何年かかるやら...」

「ん...アイン、全然魔銀に傷ついてない」

「う、うるせぇ!こっちは魔力150しかねぇんだよ!」


アインも、魔銀採掘に参加していた。なぜ魔力が少ないのに採掘しているかというと...


「俺も、魔銀を摂取したい」

「ダメじゃ、お主は死ぬぞ」

「なんでですか!?2人は大丈夫だったのに!」

「あ〜、あれは多分、もともとの魔力濃度が多かったからじゃ。その分、魔銀を摂取したことによって量が増して、もともと割れなかった魔銀を割れるようになったんじゃろうな。濃度も量もないお主が摂取したらどうなるか分からん、やめておけ」

「なら、俺も濃度を上げればいいんですよね?どうしたら上がるんです?」

「魔力を酷使し続ければいずれ...って感じじゃろうな。まぁそうじゃな...お主が自分の力で魔銀を割ったら、その魔銀を使うことを許可してやろう」


ということで、アインも魔銀を掘っている...いや、掘れてないけど、掘ろうとしている。


「なんか、見てると面白いわね」

「ん、そうだね」


僕とジールは、軽々と掘る中、大の大人が必死にツルハシを振り回す様は、傍から見たら面白いだろうな。

「俺を笑いものにするなぁ...っ!」


ちなみにシェルラは、必死に魔法を学んでいるらしい。ここに魔法を使える人間がいないので、完全に独学らしい。

夕飯の時に帰ってきたシェルラは、


「訳わかんないよぉ〜、助けてよぉ〜」


と泣きついてきたが、残念、僕に分かるわけないので、「頑張ってね」と返した。ジールなら分かるのでは...と思ったが、「私治癒魔法しか知らないから、無理」って言ってた。シェルラ、どんまい。


「ふっ...!」


深夜。僕は、こっそり洞窟を抜け出し、誰もいないのを確認して、管理棟にあった木刀を振っていた。

前に敵がいる...そう想像し、木刀を振る。相手の動きを想像して、予測して、斬る。これを繰り返す。


これは、父に習った練習方法だ。こうすることで、対人戦に向けてのトレーニングになる、と話していた。

両親には、結局あの日の朝以来会えてない。今何をしているか、想像もつかない。


次会ったら何て言われるかな。いつになったら会えるかな。そんなことを想像して、心細くなる。

...そんな暇はないと分かっているけど、やっぱり寂しいものは寂しい。

こうしていると、僕にもちゃんと心があることを実感できる。本当に、僕は弱い...そう感じる。


...感傷に浸っている時間は無い。寂しさを木刀で振り払い、僕は稽古に戻った。


こんな1日が日常と化し、なんだかんだ楽しい日々を過ごすのだった。

読んで頂きありがとうございました!感想お待ちしてます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ