ロベルト枢機卿とセシリア副司令とフランツ国王
前回、神聖防衛団修道院でサタンによる"ウイルス"計画がわかった。まさか人間の数を減らすため生物兵器開発とは...現代であればワクチンなどやアルコール消毒、感染症対策である程度防げるだろうが、ほとんど衛生観念がない時代で生物兵器などをばらまこうものなら、一瞬でエウロペ大陸全体に拡散するだろう。
ウイルスや病原菌による感染症で特に中世で有名なのは"黒死病"だろう、黒死病はヨーロッパ人口の3分の1から、3分の2がなくなったといわれている...人工ウイルスの計画を絶対に阻止しなければならない...
そして僕たちは神聖防衛団の修道院で助けた二名を馬車にのせ、カルルスバート男爵領への帰路についている
ライマーが僕に不安そうな顔をして聞く
「彰さん、伝染病を作り出すなんて可能なんでしょうか...伝染病は治癒魔法でもどうすることもできません...もしエウロペ大陸に拡散なんてすれば...」
「ライマー、今は考えても仕方ない。カルルスバート男爵領に戻ってから、情報を集めよう」
「そうですね...」ライマーは軽く頷いた
ミゲルが頭を悩ませながら僕に聞く
「彰!僕の力を使えば伝染病くらい、簡単に消せるんだけど...もし、ルキフェルが言いがかりをつけてきたらどうしようって考えてて...」
「ルキフェルが直接攻撃をしてきた訳じゃ無いから、ミゲルが動こうにも動けない状況を作り出した感じか...ミゲル!伝染病は君の力を頼らずに解決しなきゃならない。僕たちが動いて解決するしかないだろう」
「彰、ごめんなさい、僕、力を持っててもなにもできなくて...」ミゲルが涙目になっている
「ミゲル!大丈夫、僕がどうにかするから!」
カルルスバート男爵領に帰ったら、対策を考えなければ...そう僕が考えていると、修道院の中で助けた一人の男が目を覚ました
「うっ...ここは...」
「おっ、気がつきましたか?」僕はエクソシストだと思われる人物に声をかけた
修道院で助けた男は、疲れた表情で周囲を見渡しながら、低い声で答えた。
「ありがとうございます、私は聖戒士のグラディス・ベルモント…聖戒士団に所属しています。あなた方は…?」
彼の鋭い眼光は、次第に馬車内を巡り、最後にアフィナに留まった。その瞬間、彼の目が険しくなり、手を動かそうとした
「吸血鬼だな…!なぜこんな危険な存在がここに!」
グラディスは反射的に腰の剣を引き抜き、剣を構える
「待ってください!」ライマーが前に出て、制止する。
「アフィナは危害を加えるつもりはありません。彼女は私たちの仲間です!」
しかし、グラディスの表情は緩むどころか険しさを増した。
「吸血鬼が仲間だと?何を言っている!そんな存在が人間のために戦うなど、ありえない!」
アフィナは、敵意をむき出しにするグラディスの視線に晒されて、アフィナが悲しそうな顔をする
「グラディスさん、少し落ち着いてください。彼女は私たちの仲間です!」彰が説得を試みるも、聖戒士としての信念に縛られたグラディスには響かない。
グラディスは剣を振り上げ、アフィナに攻撃しようとする。事態を重く見たライマーが手を掲げ、聖書を唱え始めた。
「神様、み心にかなうように力を下さい!この者を縛る鎖を!」
グラディスの体が金色の光に包まれ、その動きが封じられる。
「くっ、貴様!同じエクソシストだというのに魔族の味方をするのか!?」グラディスが叫ぶ
どうすればいい!?...!!そうだ!
「ライマー!彼に睡眠魔法を!」
「わ、わかりました!」ライマーは頷き、魔法を唱える
「神様、み心にかなうように力を下さい!この者に安息へとみちびきたまえ!」
淡い光の霧がグラディスを包み込こんだ。
「こんなもので、わた...しは...」
彼は抵抗しつつも次第に力を失い、深い眠りについた。
静寂が戻った馬車内で、ライマーが重い口調で言った。
「吸血鬼を見ただけで、この敵対的な反応。彼は浄化派かもしれません...」
ライマーの言葉に、馬車内の空気がさらに重くなる。浄化派――吸血鬼や魔族を完全に排除することを信条とする過激な神聖防衛団の一派であり、彼らの信念は揺るぎないものである
アフィナは無表情のまま静かに座り直したが、その手が膝の上で微かに震えているのに彰は気づいた。彼女が感じているのは恐れではなく、深い悲しみだと分かった。
「アフィナ、大丈夫?」彰が小声で尋ねる。
「私が吸血鬼ってだけで...」
「アフィナ...」
アフィナは少し涙を浮かべていた
僕はグラディスを見ながらミゲルに言った
「ミゲル、こいつの思想を改革派とかに変えれたりしないか?」
「できるよ、でも僕は人間の自由な思想を変えたりはしたくない...」
ミゲルが真面目な顔で答える。この顔、僕と初めてあった時のミゲルだ...
「ミゲル、ごめん、そうだよね」
ミゲルは少し表情を和らげ、彰に微笑んだ。
「ううん、彰。謝らないで!彰が本気で言ってないことぐらいわかるよ!でも…こういう時、力を使わずにどうやって解決すればいいのか、僕も分からなくて…僕、悔しいよ...」
ミゲルの無邪気さの裏にある真剣な思いに、彰は胸が熱くなる
「僕たちができることを、少しずつやっていこう。」彰はミゲルの肩に手を置いて言った
しかし、浄化派か...
僕はライマーに質問する
「ライマー、浄化派の人間を説得するのは可能か?」
ライマーが気難しそうな顔で答える
「絶対ではないでしょうが、ほぼ不可能ですね...それどころか彼が神聖防衛団にアフィナのことを伝えて、神聖防衛団のエクソシスト達がアフィナを狩りに来るかもしれません...それでなくても帝都で騒ぎを起こしたばかりです。神聖防衛団が僕たちの動向を探ってても不思議じゃありません」
彰はアフィナを見つめながら改めて考えた。僕たちにはフランツ国王の後ろ楯がある、アフィナはカルルスバート男爵だ。だが、神聖防衛団の圧力がそれを打ち破る可能性も否定できない。
ライマーは続けた
「幸いなことに、チェヒ王国の改革派は帝国の保守派に比べて吸血鬼や魔族に対して寛容です。しかし、アフィナ様の立場は決して安泰ではありません。神聖防衛団が本格的に動けば、彼らでさえ対応しきれないかもしれません」
「そうだとしても、ここが僕たちの拠点だ。」彰は決意を込めて言った
「この地を守り、アフィナを守るために、できる限りの準備をしよう。まずはグラディスが目を覚ましたときにどうするか考えないと」
ミゲルが思案しながら口を開く
「ねえ、彰。ぼく、グラディスさんに直接話してみようかな。ぼくがどれだけ強いか見せれば、ちょっとは考え直してくれるかも?」
僕はミゲルの無邪気な提案に苦笑した
「それは逆効果かもしれない。彼はきっと君を『危険な悪魔』だと思い込むだけだよ」
「そっか…」ミゲルは少し肩を落としたが、すぐに明るさを取り戻した。
「じゃあ、ぼくが何かお手伝いできることがあったら言ってね!」
ライマーが話を引き継ぐ
「まずは、神聖防衛団がどれほどアフィナさんの動向を把握しているかを調べる必要があります。チェヒ王国内での神聖防衛団の勢力や情報網についても確認すべきです。」
アフィナは冷静に頷いた
「チェヒ王国のフランツ国王に相談したらどうだろう...」
僕が提案する
「フランツ国王への相談は最後の手段にしよう。まずは私たち自身で解決策を探るべきだ。それと、グラディスが目を覚ましたときに彼にどんな話をするか、準備をしておこう。」
ミゲルが手を挙げた
「ねえねえ、ぼくがちょっとしたお菓子を作って仲良くなるお手伝いをするのはどう?」
僕は笑いながら答えた
「ミゲル、意外と良いかも笑、とりあえず、落ち着いて話ができる環境を作れた良いんだけど...」
アフィナも小さく微笑んだ
「ミゲルさんのお菓子...喜んでくれるかも...」
馬車がカルルスバート男爵領の城内に到着し、一行は迎え入れられた。アフィナの使用人が出迎え、急いでグラディスともう一人の浄導徒を安全な部屋に運び込んだ。彰たちは早速会議室に集まり、これからの行動について議論を始める。
「まず、グラディスのことだ、あとグラディスの一件で忘れてたが途中で助けた、浄導徒も浄化派なのか気になるな...ライマー、前の饗宴であったロベルト枢機卿に頼るのはどうなんだ?」
「ロベルト枢機卿ですか...彰さん、神聖防衛団はユニヴェルスから半ば独立した組織なんです。神聖防衛団の浄化派はユニヴェルス保守派から見ても過激って話しはしましたよね?そのためユニヴェルスの教皇の言うことすら聞かず、虐殺を繰り返してきた歴史もあります...」
「そ、そんな...ユニヴェルス教会でも止めれないってなれば、もうどうすることもできないじゃないか...」
「彰!僕が戦って、神聖防衛団を粉々にしちゃうのはどう?」ミゲルが叫ぶ
「粉々って...でも冷戦からすると神聖防衛団はミゲルの味方...内ゲバする分にはルキフェルも手を出して来ないかも...けど、それは最終手段だ。ああ、あとミゲルが神様ってばれるリスクもあるな、ダメだダメ」
「えー、戦えるかもって思ったのに...」ミゲルがしょんぼりしている
するとライマーが喋る
「彰さん、希望がないわけでもありません。神聖防衛団にも改革派がいるんです。浄化派と保守派の関係と違い、神聖防衛団の改革派とユニヴェルス改革派は密接に協力しているんです。そしてセシリア副指令に接触できれば...」
「セシリア副司令?」僕がライマーに聞く
「はい、セシリア副司令は神聖防衛団の数少ない改革派の一人で神聖防衛団で二番目に偉い人なんです」
ライマーの言葉に一同の注目が集まる。神聖防衛団という組織内にも改革派が存在し、しかもその副司令がその一員だという情報は、わずかだが希望の光となり得る
僕はすぐにライマーに問いかけた
「セシリア副司令が味方になれば、浄化派の動きを抑えることができるのか?」
ライマーは少し考え込んでから答える
「直接的に抑え込むのは難しいでしょう。ただ、彼女は神聖防衛団内で影響力を持っています。浄化派に対抗するための足掛かりを作れる可能性は高いです」
ミゲルが興味津々で口を挟む
「ねえねえ、そのセシリアさんってどんな人?ぼくが行って話したら、すぐに仲良くなれそう?」
ライマーは難しい顔をしながら答えた
「セシリア副司令は非常に賢明で冷静な方です。ただ、神聖防衛団の副司令という立場上、簡単に会えるかどうか...」
彰は腕を組みながら考えを巡らせた
「まずはセシリア副司令に接触する方法を考えないといけないな。どこにいるか分かるのか?」
ライマーはまたも難しい顔をして答える
「うーん、すみません。私はユニヴェルスの神父ですから神聖防衛団のことの詳細まではわからないんです...彼女のことも改革派だから知っているだけで...」
さっきまでの明るい空気とはうってかわって、暗い雰囲気になってしまった...
そんな、セシリア副司令にどうにか会えないか...!!そうだ!
「ライマー!こんなときこそさっき言ったロベルト枢機卿に頼るのはどうだ!?ユニヴェルス教会から神聖防衛団を止めてもらうのが不可能でも、枢機卿を通じて神聖防衛団改革派に接触できるかも知れない!ロベルト枢機卿は2日間前、饗宴に参加したばかり。まだ近くにいるかもしれない!」
彰の提案に、ライマーは一瞬考え込み、すぐに頷いた
「確かに枢機卿なら、神聖防衛団の改革派と接触する手助けができるかも...彼はチェヒ王国首都プラーガに一週間ほど滞在するといっていました」
彰はミゲルに振り向いた
「ミゲル、枢機卿に会いに行こう。君の力で早馬を用意してもらえないか?」
ミゲルは明るい表情で「お任せ!今すぐ準備するよ!」と言い、指を鳴らすと馬車とは別に俊足の馬が城の庭に出現した
アフィナも話に加わった。「ロベルト枢機卿って人は信頼できるの?...」
ライマーが答える
「アフィナさん、安心してください、ロベルト枢機卿は改革派なんです。饗宴に参加されていたんですよ。アフィナさんは貴族に囲まれていたので気づいてなかったかもしれませんが...」
アフィナは安堵した顔をする
僕は頷き、「アフィナ、書簡を頼めるか?それとライマー、君も一緒に来てほしい。饗宴のとき軽く話したが、神父としての君がいてくれた方が安心だ」
ライマーは毅然とした表情で「もちろんです。ロベルト枢機卿の協力を得られれば、セシリア副司令に繋がる可能性も高まるでしょう」と答えた
「ライマー、出発の準備を整えよう。ミゲル、君はここでアフィナと領地を守ってほしい」
ミゲルは少し寂しそうにしながらも、「分かった!でも何かあったらすぐ呼んでね!」と答える
アフィナは彰たちを見送りながら、「気をつけて...枢機卿が協力してくれることを願っています...」と静かに言った
3時間後、プラーガ到着
僕たちはプラーガの大聖堂近くの宿に到着した。ロベルト枢機卿がいるとされる場所はすぐ近くだったが、まずは接触する前に簡単な作戦会議を行うことにした
ライマーが確認する「枢機卿には直接、セシリア副司令への橋渡しをお願いする形でよろしいですかね?」
彰は頷き、「そうだ、僕たちが頼れるのは枢機卿だけだ。アフィナの書簡と僕たちの立場を説明しよう。もしセシリア副司令に接触できなくても、チェヒ王国で活動している、神聖防衛団改革派と接触できるかもしれない」
枢機卿への接触が、この複雑な状況を打開する糸口になるかもしれない。一行は大聖堂に向けて歩き出した。
~大聖堂~
大聖堂は荘厳で静謐な雰囲気に包まれていた。高い天井に反響する小鳥のさえずりと、薄明かりが差し込むステンドグラスが訪れる者の心を静める。彰たちは慎重に枢機卿の滞在先を探す
「ロベルト枢機卿にお会いしたいのですが、どちらにいらっしゃいますか?」
ライマーが受付の修道士に尋ねると、修道士は少し戸惑った様子で答えた
「枢機卿様は、現在会議室でチェヒ王国内の改革派の神父たちと協議中です。お急ぎの場合、使者を通じて面会の申請をしてください」
彰は書簡を取り出し、修道士に渡す
「カルルスバート男爵領からの急用です。お伝えいただけますか?」
修道士は書簡を確認し、驚いた表情で頷いた
「少々お待ちください。この内容ならばすぐに枢機卿様にお伝えします。」
数分後、修道士が戻り、彰たちを案内した。会議室の扉を開けると、そこにはロベルト枢機卿が立派な法衣を纏い、数人の神父たちと熱心に話し合っている姿があった。枢機卿は彰たちを見てにっこり微笑むと、話し合いを一時中断した
「やあ、ライマー神父。先日の饗宴での喋れたのは嬉しかった。カルルスバート男爵領からの急用とは、何か深刻な問題が発生でもしましたかな?」
彰は一礼し、状況を説明する
「枢機卿、僕たちがカルルスバート男爵領への帰路についていた時、神聖防衛団の修道院が何者かに襲われているのを発見しました。そして、修道院をの奥へ進むと、悪魔...そう悪魔サタンがいたんです」
枢機卿の表情が厳しくなり、周囲の神父たちもざわめいた。
「なんと…悪魔とな...修道院でサタンが現れたなんてただ事ではないですな...詳しい情報を」
彰は続ける
「はい、サタンはウイルスを作る計画を考えていたんです」
枢機卿は不思議な顔をする
「ういるす?ういるすとはなんですかな?」
おっと、この時代にウイルスが見つかっているわけない
「すみません間違えました!伝染病です。伝染病をサタンは作っていたのです!」
枢機卿と回りの神父達が驚く
「で、伝染病!?伝染病を作るなんて...そんなことが可能なのか...」枢機卿はおどろいた顔をする
「はい、悪魔は伝染病を作ると言って去っていったんです...実際伝染病が作れるかはわかりません...あ、それともうひとつ問題が...」
「まだ、問題が!?」枢機卿が慌てる
「はい、修道院で浄導徒と聖戒士を助けたのですが...聖戒士がアフィナを見て襲いかかってきて、とりあえず眠らせたんですが...」
枢機卿が頭を抱える
「なるほど...神聖防衛団は過激な連中が多いですからな...」
「ロベルト枢機卿!それで、セシリア副指令に会いたくて」僕は枢機卿に聞く
「ほうほう、セシリア副指令に...」枢機卿は頷く
「セシリア副司令が改革派と聞き、この事態をどうにかできないかと...」
「なるほど、そうでしたか、セシリア副司令はチェヒ王国とスレスコ公国で起きている修道院襲撃事件について...いやまて、もしかしてセシリア副司令が調査している修道院襲撃事件、君が発見したサタンがやったことではないか!?」
ロベルト枢機卿の言葉に、一同は驚きと緊張に包まれた。セシリア副司令が調査している修道院襲撃事件と、サタンのウイルス計画が繋がっている可能性が浮上したからだ。
彰はすぐに質問した
「枢機卿、その事件について詳しく教えていただけませんか?サタンが関わっている可能性があるなら、私たちも協力できます!」
枢機卿は神父たちに軽く目配せをし、話を続けた
「チェヒ王国とスレスコ公国では、ここ数週間で複数の修道院が襲撃され、神聖防衛団の兵士や修道士が行方不明になっているのだ。何者かが修道院から人間を攫っているという報告もあり、セシリア副司令が調査に向かっているのだ...」
ライマーが眉をひそめて尋ねた
「攫われた人々はどこに連れて行かれているのでしょう?...目的はわかっているんですか?」
枢機卿は首を振った
「残念ながらわかっておらん...」
もしかして...
「枢機卿!伝染病の効果を図るため人体実験をしているのでは?」
「なるほど、その可能性はあるな...」枢機卿が頷く
僕は拳を握りしめた
「修道院襲撃事件がサタンの仕業なら、セシリア副司令の調査は非常に危険です!僕たちも副司令に協力して、この計画を阻止しなければなりません!」
枢機卿はしばらく考え込んだ後、静かに頷いた
「わかった。セシリア副司令に君たちの到着を知らせる手配をする。ただし、彼女の調査中に敵対的な勢力に接触する可能性が高い。十分に警戒することを忘れないでくれ」
ロベルト枢機卿の指示を受け、僕たちはセシリア副司令が調査を進めているチェヒ王国北部の「セントマリア修道院」に向かうことになった。修道院は険しい山岳地帯に位置し、馬車で向かうには半日以上を要する道のりだった。
出発前、枢機卿は彰に手紙を手渡した
「これはセシリア副司令への紹介状だ。これがあれば、君たちの話を信じて協力してくれるだろう。道中、気をつけなさい」
僕は深く頭を下げた
「ありがとうございます、枢機卿。必ず事態を解決してみせます」
修道院への道中
彰たちはセシリア副司令の居場所へ向かう途中、ライマーとウイルス計画の可能性について話し合っていた
「ライマー、サタンが伝染病を広めるために修道院を襲撃し、人々を攫っているとしたら…僕たちが直面しているのは単なる局地的な事件じゃない。大陸全体を揺るがす大規模な計画だ」
ライマーは頷きながら答えた
「確かにその通りです。しかし、伝染病が広がる前に計画を阻止する方法を見つけなければ、セシリア副司令の調査がどこまで進んでいるのか...」
僕たちはミゲルとアフィナをカルルスバート男爵領おいて来ている。つまり二人に頼ることができない...セシリア副司令と接触したあとは、どうすれば...
一方その頃、カルルスバート男爵領では
「はっ!、俺は...そうだ吸血鬼!吸血鬼はどこだ!」グラディスが目を覚まし、部屋の扉へ近づく
「ドンドン!開けろ!くっ、鍵をかけてやがる...」
庭にいたミゲルがグラディスの声を聴く
「あっ、あの聖戒士のおじさん起きたみたいだね」
ミゲルはグラディスのいる部屋へ向かう
コツコツコツ...
「うん?誰かの足音が聞こえるな...おい!俺を外に出せ!」グラディスは叫ぶ
パチン!
「なっ、なんだ?指を鳴らした音が...!?さっきまでなかったのにお菓子が机の上いっぱいに置かれている...」
「おじさん!僕が作った...出したの方が正しいかな、まあどっちでも良いや!僕が出したお菓子食べてみてよ!美味しいよ!」ミゲルが誇らしそうに語りかける
「ふ、ふざけるな!変な魔術を使いやがって...!お前も魔族の一味か!?魔族帝国からきたやつか!?」
「ふーん、食べてくれないんだ...ムカつくなぁ...まあ、問題起こして彰を悲しませたくないし...」
パチン!
「な、なんだ!?またゆ...び...を...」
バタン!グラディスは地面に倒れ寝てしまった
「彰が帰ってくるまで大人しくしといてね、おじさん」
険しい山道を越え、彰たちはようやくセントマリア修道院に到着した。そこは静寂に包まれ、周囲には誰の姿も見えなかった。しかし、修道院の奥からかすかに話し声が聞こえてきた
彰たちが修道院内に足を踏み入れると、セシリア副司令が部下たちと共に調査を進めている様子が目に入った。彼女は威厳に満ちた姿で、部下たちに指示を出していた
彰は枢機卿から預かった手紙を持ってセシリア副司令に近づいた
「セシリア副司令、お時間をいただけますか?ロベルト枢機卿の紹介で伺いました」
セシリアは彰たちを一瞥し、手紙を受け取ると静かに内容を確認した
「初めまして、セシリアだ。神聖防衛団副司令をやっている。ロベルト枢機卿からの紹介とはただ事ではない雰囲気を感じるな」
僕は修道院でのサタンの目撃情報や、ウイルス計画について詳しく説明した。セシリア副司令の表情は次第に険しくなった
「あなたの話が本当なら、エウロペ大陸全体の危機だ...まさかサタンが伝染病を作ろうとしているなんて...」
僕は深く頷いた
「僕たちでサタンを止めなければ...セシリア副司令それと、修道院で聖戒士と浄導徒を助けたんです」
セシリア副司令は頭を下げる
「ありがとう、我が同胞を救ってくれたとは...感謝する」
「いえいえ、当然の事をしたまでです。しかし...」僕は気難しそうな顔をする
「しかし?」副司令が質問する
「はい...実は僕たちの仲間に吸血鬼がいるんです...」
「き、吸血鬼だと!?」副司令は驚いた顔をする
ヤバいか!?セシリア副司令は改革派だと聞いていたが
「す、すまない、吸血鬼なんて上位の魔族と仲間と聞いて驚いただけだ...それで...」
ほっ、よかった異端者として切り刻まれるかと思ったよ
「はい、実は助けた人が目を覚ましたさい、吸血鬼の仲間を見て、襲いかかってきて来て...」
セシリア副司令は彰の言葉を聞き、しばらく黙考してから深いため息をついた
「なるほど…吸血鬼との共闘を認めるというのは、神聖防衛団にとって容易なことではない。ましてや浄化派の者ならなおさらだろう。だが、君たちが助けたその聖戒士が襲いかかってきたというのは、少し厄介だな」
彰は頷きながら答えた
「その聖戒士を眠らせて落ち着かせましたが、問題が解決したわけではありません。彼が目を覚ましたとき、また同じ問題が起きる可能性が...」
セシリア副司令は表情を引き締め、毅然とした口調で言った
「彼が目覚めた際に再び問題を起こすようなら、私が説得を試みよう。改革派の私が直接説得することで、多少の効果はあるはずだ。だが、難しいな...彼を神聖防衛団に戻せば、吸血鬼のことを話すに違いない。そうなればエクソシストチームを討伐に派遣するなんて言い出しかねんからな...特に総司令は...」
セシリア副司令は慎重な表情で続けた。
「総司令は浄化派の中でも特に強硬な人物で、吸血鬼や魔族に対する嫌悪感が非常に強い。もし彼にこの件が知られたら、カルルスバート男爵領全体を敵視する口実にされかねない。」
彰は深く頷き、言葉を返した
「そうならないように、慎重に進める必要がありますね。しかし、彼を説得できなければ、最悪の場合どうすればいいでしょう?」
セシリアは難しい顔をする
「私は副司令と立派な肩書きは持っているが、階級でいえば聖導長なんだ。しかし総司令のアデラールは枢機卿。命令されたらどうすることもできない...」
セシリア副司令は苦悩の表情を浮かべながら続けた。
「アデラール総司令は、枢機卿としての地位を持ちながら、神聖防衛団の全権を握っているんだ。彼は吸血鬼や魔族の存在を駆逐するべきと考えている...私たち改革派がどれだけ努力しても、その決定を覆すのはほぼ不可能に近い。吸血鬼...さっきも言ったが吸血鬼はかなり上位の魔族。アデラール総司令が見逃すとは思えない...」
僕はしばらく考え込んだ
「そうなると世俗の権力に頼るしかない」
「世俗権力?」セシリアが聞く
「はい、チェヒ王国国王、フランツ国王にこの事を話します」
セシリア副司令は彰の言葉に少し驚いたような表情を見せた。
「フランツ国王に直接話すというのか…。彼はチェヒ王国の統治者として優れた判断力を持つと聞くが、神聖防衛団の内部問題にどこまで踏み込めるだろうか?」
僕は力強く頷いた。
「フランツ国王は僕たちのことを信頼してくれています。それに、彼もアフィナを保護してくれている以上、神聖防衛団の浄化派がアフィナを討伐するとなれば、間接的にチェヒ王国に対しての宣戦布告です」
ライマーが補足するように口を開いた
「そうです、セシリア副司令。フランツ国王は過去、私たちの仲間に助けられた経緯もあり、私たちを厚く信頼してくださっています。もしも陛下が動けば、神聖防衛団に対しても一定の抑止力を持つでしょう」
セシリア副司令はしばらく考え込んだ後、静かに頷いた。
「分かった。フランツ国王に協力を仰ぐことは、確かに現状を打破する重要な鍵となるだろう。君たちが動くなら、私もサポートを惜しまない。ただし、注意が必要だ。アデラール総司令はチェヒ王国を含む周辺諸国にも影響力を持っている。フランツ国王が彼に敵対すると見られた場合、最悪の場合、戦争を引き起こしかねない」
彰はその言葉に頷きながらも、決意を固めていた。
「僕たちがその橋渡しをすることで、争いを最小限に抑えます。そして、サタンの計画を阻止するために、フランツ国王の協力を得たいと思います」
セシリアは満足そうに微笑んだ
「そうだ、ちょっと待ってくれ」
彼女がそういうと修道院の奥へ進み、手紙を書いて持ってきた
「これはフランツ国王宛の私からの正式な書簡だ。君たちが今回の問題に改革派として関わっていることを説明し、陛下に支援を求める内容だ。この手紙を携えて、に直接会うのだ」
彰は深く頭を下げて書簡を受け取った。
「ありがとうございます、副司令」
チェヒ王国の首都プラーガに戻り、彰たちは宮廷に向かった。セシリア書簡と顔馴染みであることから、僕たちはすぐにフランツ国王の謁見を許された
壮麗な玉座の間で待つフランツ国王は、彰たちを見るなり穏やかな笑みを浮かべた
「彰、ライマー、無事で何よりだ。アフィナやカルルスバート男爵領は問題ないか?」
彰は丁寧に頭を下げ、話を切り出した。
「陛下、ありがとうございます。実は今回、非常に重大な問題が発生しています。サタンが伝染病を作り、拡散させようとしています」
フランツ国王の表情が険しくなった
「伝染病だと!?それが事実であるなら、王国だけでなく、帝国、いや大陸全体の危機ではないか!」
僕はさらに詳細を伝えた、修道院でのサタンの目撃情報、セシリア副司令との協力、そして、修道院で助けた二人組について。国王は話を聞きながら真剣な表情を崩さなかった
「ふむ、助けた聖戒士と浄導徒については、我が王国で一時的に監視下に置こう。彼らが再び問題を起こさない保証はないが、少なくとも君たちの拠点であるカルルスバート男爵領への攻撃を防ぐことができる。」
僕は驚きながらも感謝を述べた
「陛下、そのような配慮をいただけるとは…ですが、彼らが神聖防衛団へ戻った場合、浄化派が我々を攻撃する口実を作りかねません」
フランツ国王は深く頷き、静かに語り始めた。
「チェヒ王国では、迫害された改革派多く逃げ込んでいる。私がこの国の国王になったもは最近だ。君らも知っている通り、元々は私の兄である、レオポルトがチェヒ王国の国王だった。だが兄は王国統治に興味がなく、その当時宰相だった私に、チェヒ王国の統治のほとんどを任せていた。私は宰相時代から改革派の保護に積極的な立場をとっていた。ユニヴェルス教会や神聖防衛団の保守的な考えは帝国にふさわしくないと常々思っていたのだ」
フランツ国王の口調は次第に熱を帯び、彼の決意がにじみ出ていた。
「その結果、改革派の多くがこのチェヒ王国に避難し、王国内でその勢力を強めていった。だが、兄レオポルトの皇帝即位後、私が正式に国王となった今、神聖防衛団やユニヴェルス教会の保守派は私を警戒している。彼らにとって私は異端に味方する危険な王なのだ」
彰はその言葉に頷きながら、質問を続けた
「陛下、そのような状況で神聖防衛団の浄化派が攻撃を仕掛けてきた場合、改革派の勢力だけで対抗することは可能なのでしょうか?」
フランツ国王は一瞬考え込んだが、意志のこもった眼差しで彰に答えた。
「可能だ!チェヒ王国は帝国内の最大の諸侯して選帝侯!そもそも神聖防衛団などというエクソシスト組織など存在していること事態おかしいのだ、改革派と保守派の対立は水面下で着々と進んでいる、いつかは激突することも覚悟しなければならない」
フランツ国王の顔は覚悟ができている顔だった
「まあ、まだその時ではない。まず、カルルスバート男爵領へ一旦帰還しなさい。衛兵もついていく、まずはアフィナに敵対的な聖戒士と浄導徒を"保護"を名目にとらえる。とりあえず、宮廷に閉じ込めておくさ。そしてアフィナを連れてセシリア副司令と協力しなさい。サタンが動いているのだ、人間だけでなく、吸血鬼の力を借りなければ、今回の問題を解決するには至らんだろう」
フランツ国王の言葉に、僕は深く頷き、感謝の意を述べた
「陛下、そのようなご配慮をいただきありがとうございます。アフィナも協力を惜しまないでしょう。セシリア副司令と共に、必ずサタンの計画を阻止します」
フランツ国王は厳しい表情を崩さず、続けた
「よいか、彰。この伝染病問題はチェヒ王国だけでなく、エウロペ全体の未来を左右することを忘れるな」
ライマーも力強く答えた。
「陛下、私たちは全力で取り組みます」
フランツ国王は少し微笑み、衛兵長を呼びつけた。
「グスタフ!彰たちに精鋭の護衛をつけ、カルルスバート男爵領まで送り届けよ。また、アフィナや男爵領の安全を確保するため、王宮直属の部隊を派遣する準備を進めよ!」
衛兵長は敬礼をし、即座に準備に取り掛かった。
僕とライマーはフランツ国王からの支援を受け、護衛部隊と共にカルルスバート男爵領へ戻った。到着後、すぐにグラディスと浄導徒を王宮へ連行する手続きが取られた
「彰!お帰り!」ミゲルが元気な声で挨拶する
「ミゲル、ただいま!問題起こしてないか?」
「起こしてなんかないよ!途中で聖戒士のおじさんが起きたから、眠らせといたよ!」ミゲルが誇らしそうに言う
「ありがとう、ミゲル。ミゲル、今回の問題はミゲルの協力も必要だ。裏でサポートしてくれ」
「もちろん!」ミゲルが元気よく返事する
「彰さん...ライマーさん...お帰りなさい...」
アフィナも彰たちの帰還を出迎え、フランツ国王の指示を聞くと静かに頷いた。
「陛下がそこまで考えてくださるなんて…私も全力で協力します...吸血鬼だからこそできることがあるなら、惜しみません...」
僕は彼女の手を軽く握り、言葉をかけた
「アフィナ、君の力が必要だ。セシリア副司令とも協力して、この問題を解決しよう」
僕たちはセシリア副司令と合流し、必ずサタンにはよるウイルス計画を止めなければならない




