神聖防衛団とサタンの計画
僕たち4人組は先日、プラーガで執り行われた饗宴をあとにし、カルルスバート男爵領への帰路についている
馬車に揺られながら、ライマーと話す
「ロベルト枢機卿と話せてよかったな、帝都での戦闘でユニヴェルス教会とは敵対するものとばかり思ってたからな」
「ユニヴェルスも一枚岩ではないですからね。保守派と改革派に別れて対立していますから...あっ、エクソシストの話で知ってもらいたいことがあって...」
ライマーがそういうとエクソシストを総括する組織について教えてくれた
魔人や亜人を討伐するユニヴェルスから半ば独立した組織として存在しているらしい
異世界だからな、専門の機関があってもおかしくないな...
その名は神聖防衛団。エクソシストは基本的に神聖防衛団に属しているらしい
神聖防衛団のトップは枢機卿のアデラール総司令
階級はユニヴェルス教会と同じで名前が違う
トップは枢機卿で、総司令と呼ばれる
大司教の位置が聖導長
司教の位置が戒士長
司祭の位置が聖戒士
そして聖戒士の補佐として浄導徒
前回戦ったのはおそらく、聖戒士か浄導徒だと思われる。ライマーによると聖戒士としてランベルトは有名らしく、かなり強い強者だったようだ。暴走したミゲルを止めることはできなかったが
「なるほどな、今後神聖防衛団と僕たちは関わることになりそうだな...」
「神聖防衛団はユニヴェルス教会からみても過激な連中が多いんです。今後関わることになりそうですからね、彰さんには教えとこうと思った次第です」
「ありがとう」
神聖防衛団か、ユニヴェルスからみても過激な連中ってのは気になるな...アフィナが変な目に会わなければ良いが...
馬車の中でライマーと話し込んでいると、アフィナが隣で静かに耳を傾けながらも、ふと窓の外を指さした。
「彰さん...ライマーさん...あの丘の上にあるのって...教会?...何だか普通の教会とは違う気がするけど…」
窓の外には、遠くに黒い塔を持つ異様な建物が見えた。ライマーが目を細めてそれを確認すると、軽く息を呑んだ。
「…あれは修道院ですね。ですが建物がユニヴェルスものとは違うようです...建物をみた限り、おそらく神聖防衛団の一部隊が拠点にしている場所だと思われます。神聖防衛団は独自の修道院を持っているんです」
神聖防衛団、半ば独立した組織とは聞いていたが、まさか、独自で修道院までもっているとは...
「あそこを通るのは安全なのか?」
ライマーは少し考え込みながら説明を続けた。
「神聖防衛団の中では、浄化派と改革派で対立しています。」
「浄化派?」彰がライマーに聞く
「ユニヴェルス保守派みたいな派閥です。しかし保守派違い、神聖防衛団の浄化派はかなり攻撃的で、彼らは異端者や魔人、亜人だけでなく、改革派のユニヴェルス信者にも容赦がありません。討伐対象と見なせば、手段を選ばない集団です。」
なんだって、神聖防衛団ってのはかなり危険な連中みたいだな...
ミゲルが誇らしそうに答える
「そんなやつら、僕にかかれば一瞬で消せるよ!」
確かにミゲルにかかれば一瞬だろう、だが
「ミゲル!力を使うのは禁止だ、何度もいうが君が神様だとばれると不味いんだぞ」
「えぇ~僕、戦いたいよ!」
こいつ、反省が足りないな...
「ミゲル!こいつ、反省するまで頭グリグリ攻撃だ!」
「彰!止めて!いたいいたい!」
僕とミゲルがじゃれあっているとアフィナがライマーに質問する
「ライマーさん...こっちが彼らの基準に引っかかれば、敵扱いされる可能性があるんでしょうか...」
「そうですね...特にアフィナさんのような魔人に対しては、浄化派であればすぐさま殺しにかかるでしょう...」
アフィナが少し不安そうに口を開く
「じゃあ...あそこを通るのは危険なの?...遠回りした方がいいんじゃない?...」
「まだ大丈夫だと思いますが、警戒はした方がいいですね。浄化派の修道院だったら特に。万が一見つかれば、無事では済まない可能性もあります」
馬車はゆっくりと進み、神聖防衛団の修道院が視界の端に徐々に大きくなっていく。馬車の御者も何かを感じ取ったのか、スピードを上げる
突然、馬車が急に止まる。御者が慌てた声で叫ぶ
「…道に何か...人が、人が倒れている!ど、どうします、旦那様!」
彰とライマーが馬車を降り、道に横たわる人影に近づくと、それは神聖防衛団の紋章をつけた若い男性だった。鎧には深い傷があり、血を流して気を失っている。彼の近くには戦闘の痕跡が広がっていた
「これは…エクソシストの浄導徒ですね。どうしてここで倒れているんでしょう…?」
ライマーが彼の脈を確認し、軽く頭を振る。
「かろうじて生きていますが、このままでは命が危ない。彰さん、どうしますか?」
「もちろん助けよう。放っておくわけにはいかない。」
ライマーはミゲルにもらった奇跡の力を使い、倒れている浄導徒に治癒魔法をかける
「神様、み心に叶うように力をください!神の光でこの者を癒したまえ!」
ライマーが回復の奇跡をかけるが、傷がかなり深いようだ
「…敵が…黒い羽の…悪魔が…」
「黒い羽の悪魔?何のことだ?」彰が尋ねる。
「…修道院…壊滅…敵が…来る…」
それだけ言うと、浄導徒は再び意識を失った。ライマーが険しい表情で口を開く。
「黒い羽…もしや、邪神ルキフェルの悪魔が現れたのかもしれません」
「ルキフェルの悪魔…!修道院を壊滅させるほどの力を持った相手か」
彰は周囲を見渡し、緊張感を覚えた。
「ここに留まるのは危険かもしれないな...だが修道院の人たちが心配だ...」
僕は視線を巡らせながら、一瞬迷った表情を浮かべたが、すぐに決意を固めた
「ミゲル、ライマー、アフィナ。ここで待ってるわけにはいかない。修道院で何が起きているのか確かめよう」
ミゲルが目を輝かせて飛びつくように応じた
「よし!冒険だね!僕、いつでも準備万端だよ!」
彰はミゲルをじろりと睨みつけた
「お前は暴走するなよ。本当に修道院が壊滅しているなら、余計な目立つ行動は控えろ」
ライマーが落ち着いた声で口を開いた
「ですが、彰さん、危険です。修道院を壊滅させた存在がまだ近くにいる可能性が高い。それに、神聖防衛団の浄化派が戻ってきた場合、我々も敵と見なされる危険があります」
アフィナも少し不安そうに頷く
「ライマーさんの言う通りかも…でも、放っておけないよね…もしまだ生存者がいるなら、助けないと…」
彰は少し考えたあと、断固とした声で答えた
「確かに危険だ。でも、黒い羽の悪魔がいるなら、今後俺たちにとっても脅威になる。何が起きているのかを確認しないと、この先もずっと不安を抱えたままになる。」
ライマーが渋々頷く
「分かりました。ですが慎重に行動しましょう。目的は情報の確認です。戦闘は避ける方向で。」
修道院へ向かう道
夜の帳が降り、道は薄暗く静寂に包まれていた。森の中を進むたびに、冷たい風が肌を撫で、周囲の木々が不気味に揺れる。馬車を男爵領に留め、徒歩で修道院へ向かうことにした一行は、足音を殺して進んでいた
ミゲルが小声で話しかけてくる
「ねぇねぇ、黒い羽の悪魔ってどんなの?カラスみたいなやつ?それとも、こう…ド派手な悪魔?」
彰はため息をつきながら答えた
「うーん、どんな悪魔かわからないが、多分前出会った、悪魔アスモデウスと同じ、ルキフェルに作られた悪魔じゃないか?」
アフィナが不安げに辺りを見渡しながら言った
「本当に近くに何かいるのかな...気配はわからないけど...アスモデウスと同じで私には感じ取れないかも...」
ライマーが聖書を握りしめ、低く呟いた
「悪魔となれば、どう戦えば良いんでしょう...前回のアスモデウスの時は、アスモデウスが飽きて、逃げたようなものです。今回はそういうわけにはいかないでしょう...」
修道院の入口
修道院に到着すると、そこはまさに惨劇の現場だった。建物の壁には焼け焦げた跡があり、大きな扉は破壊されて散乱している。中からは血の臭いが漂い、ところどころに転がる神聖防衛団のエクソシストたちの遺体が見えた。
僕は顔を覆い、言葉を失う
「これが悪魔の仕業...」
そのまま自分は気持ち悪くなり吐いてしまった、それもそうだ人間の死体などみたことなかったから
「彰さん!大丈夫ですか!無理もありません、こんなに虐殺された死体を一般人が見れば気分が悪くなるのも仕方ないですね...」
「ライマー、すまない、怖じ気づいていても仕方ないな」
僕はS&W M29を取り出し、構える
「血いっぱい...美味しそう...」
アフィナが恐ろしいことを言っている
「アフィナ!血なら僕のをあげるから、虐殺された死体の血を欲しちゃダメだよ!」
「彰さん...ごめんなさい...」
まあ、吸血鬼のアフィナからすればごちそうが落ちてるんだ無理もない
僕たちは生存者がいないか、確認しながら、前に進んだ
ライマーが死体の首に手を当てる
「生きてそうか?」
ライマーは首を横にふる
「そうか...」
そして4人目の死体を確認したとき
「!!彰さん!脈が弱いですがこの方生きてます!ですが...」
僕はすぐさま駆け寄る
「なんだって!すぐに治療を!」
ライマーが悲しそうな顔をして言う
「いいえできません、内蔵をやられています、私の治癒魔法では助けれない...」
そんな...いま生きている人がいるのに助けれないなんて
"箴言3:27施すべき相手に善行を拒むな あなたの手にその力があるなら。"
「ミゲル!この人を助けてくれ!!」
ミゲルは少し驚いた顔をする
「彰、力を使うなって...」
「目の前の人を助けれる力があるのに助けない人間があるか!」
ミゲルは少し笑った
「彰、君を友達に選んで正解だったよ」
パチン!
ミゲルが指をならすと、重傷だった人間の傷がふさがった
「おお!これがミゲル様のお力...」ライマーが驚いて言った
ミゲルによって治療されたエクソシストを抱き起こす
「……ありがとうございます……助けて……奴が……」
「奴?」
彰が眉をひそめたその瞬間だった。修道院の奥から、ぞっとするような寒気が彼らを襲った。それは明確な敵意を帯びた気配——悪魔の気配だった
「ミゲル、何度もいうが、力を使うな。今回は悪魔だ、ルキフェルの直属の部下だ。絶対に力を使ってはならないよ」
修道院の奥から現れたのは、一際巨大な影だった。歪んだ角、燃えるような赤い目、そして漆黒の翼を持つその姿——それは明らかにただの悪魔ではなかった。
「2人の人間と、1人の魔人か...?おや、人間3人だったとは、魔力がない人間?面白い」
嘲笑を浮かべるその悪魔そのものだった。彼の視線は四人を順に見下し、最後に彰に向けられた。
「私は憤怒の悪魔、サタン !」
「サタン……!」
リボルバーをサタンに向ける。
「お前の目的はなんだ!?なぜ修道院の人間を殺した!?」
サタンは薄笑いを浮かべた。
「人間などたくさんいるのだから、少しぐらい死んでも構わんだろう?」
こいつ、人間の命をなんとも思っていないようだ
「好きにはさせない!ここでお前を倒す!」
「ハッハッハ、できるものならやってみろ!魔力なしの人間!」
その言葉と共に、空間が裂けるような轟音が響き渡り、激しい戦闘が始まった。
ライマーが詠唱する
「神様、み心にかなうように力を下さい!敵を縛る鎖を!」
光の鎖がサタンを囲む
「こんなもの、ふん!」
しかし、光の鎖は簡単に壊されてしまった
「くっ、彰さん、サタンの足止めはできなさそうです...」
「それなら攻撃だ!攻撃して、こちらを攻撃する隙を防ぐんだ!」
ライマーは攻撃魔法を詠唱する
アフィナは素早い動きでサタンに挑む。
アフィナは身動きでサタンの裏に回り、爪でサタンを切り裂こうとする
しかし
「丸見えだよ、お嬢ちゃん」
サタンの片手によって攻撃は防がれてしまった
「はぁ、はぁ、彰さん...私の攻撃は見切られてるみたい...」
なら...
「この化物!44マグナムを食らいやがれ!」
パーン!
「うっ!」
サタンの方に弾丸が命中した
「私を傷つけるとは...魔力のない人間、く、武器にも魔力が一切感じれない...なかなかやりますね...」
さすがは地球産の武器だぜ
「おとなしく降服しろ、鉛玉の二つ目を食らいたくはないだろう?」
「ハッハッハ、笑わせてくれる...」
そうサタンが言うと、凄まじい早さで、僕の腹を貫いた
「ぐはぁ!?」
地面に倒れ込む彰を見下ろしながら、サタンは冷たく笑った。そして最後に、耳をつんざくような声で言い放つ。
「私を傷つけたことは褒めて差し上げましょう。だが、腹を貫いた。せいぜい足掻くがいい。君の命は長くない」
凄まじい激痛が体の中を走る
「最後に死人となる君に私の計画を教えてあげよう。神の国で悩むが良い。私が計画、“ウイルス”が全てを変える。ハッハッハ!」
そう言い残すと、サタンの姿は闇に溶けるように消え去った。静寂が戻った修道院の中で、彰だけがその言葉の意味を理解していた
「彰!」
ミゲルが僕に飛びかかる
「すぐに治療するから!死なないで!うぅ...」
ミゲルが大泣きしている
だがミゲルの治療のお陰で、傷口はまるでなかったように消えた
「あぁ、ありがとう、ミゲル」
ミゲルは涙をふく、そして怒りを露にする
「僕が、僕が加勢していれば、あんなやつなんて...アイツを殺しに行ってくる!」
僕はミゲルの方をつかみ叫ぶ
「ダメだ!」
「でも!彰のことを!」ミゲルが強い口調で喋る
「ミゲル、君の気持ちはよくわかる。だが7つの悪魔はルキフェルの直属の部下だ。君が殺したとなれば、頂上戦争になりかねない...我慢してくれ。ほら僕は元気だから!」
ミゲルは悲しそうな顔をする
「彰、彼が君に言った言葉の意味はどういうことなんだ?」
ライマーが重い息をつきながら尋ねる。ミゲルも黙って彰を見つめていた。
彰は拳を握りしめ、唇を噛んだ。
「ああ、“ウイルス”ってのは、伝染病のことだ...」
「なんだと?」ライマーが驚愕の表情を浮かべる。
「放っておけば、世界中の人間が死ぬ。おそらくは人類の数を根本的に減らし、冷戦勝利のために動いているんだろう」
彰は立ち上がり、決意のこもった目で言った
「僕たちで必ず止める。それがどれだけ危険でもな」
修道院を後にした彰たちは、生存者二人を連れて、カルルスバート男爵領に戻ることにした。馬車の中は重苦しい沈黙に包まれていた。アフィナは窓の外をじっと見つめ、ライマーは聖書を手に祈りを捧げている。そしてミゲルは不機嫌そうに頬杖をついていた
彰がミゲルに声をかけた
「ミゲル、怒ってるのか?」
ミゲルはちらりと彰を見たが、すぐに目を逸らした
「だって、僕がもっと早く動いていれば、君があんな目に遭うこともなかったのに…」
彰は苦笑いを浮かべた
「ミゲルが悪いわけじゃないさ。それに、サタン相手に正面から戦うのは得策じゃない。今回は引き際が重要だったんだ」
「でも…」ミゲルが反論しようとすると、ライマーが静かに口を挟んだ
「ミゲルさん、今回の戦いは撤退が正しい選択でした。サタンを倒せなかったのは悔しいですが、我々にはまだやるべきことがあります」
「そうだな」彰は頷いた
「奴が言っていたウイルスのことを調べて、なんとしても計画を阻止しないと」
サタンによるウイルス計画。我々はこれを絶対に阻止しなければならない...




