新たな人生
あぁ...母にあれだけ離すなと言われたのに...
キキィー!
僕は犬のレオの散歩中だった。大学受験に落ちぼーとしながら散歩していたときだった。反対車線に野良犬がいてレオがそれにむかって私のリードをはずして走り去ってしまった。僕はすぐレオにむかって言った
「レオ!止まれ!」
そのときにはちょうど車が走ってきていたところだった。
この世のものとは思えない激痛が体をめぐり、頭が...
僕は死んだのか...真っ白な部屋、体は痛くない。回りを見渡すが誰もいない。これは夢だろうか?それか死後の世界?
そこにかわいらしい男の子の声が聞こえてきた
「ようこそ」
僕はとっさに振り向いた、さっきまでいなかったのに...
見た目は身長120cmぐらいの小さな男の子だった
「キミは不幸な事故で死んでしまった。キミの名前は坂本彰、キリスト教徒として育ち、中学生のとき父が死にそして母の支えに為ろうと死にものぐるいで頑張った結果鬱病になる。そしてどうにか途切れ途切れになりながら高校に通い大学の歴史学部を目指すも失敗。そして立ち直れていない間に...」
「あなたは創造神、主なる神?」
「ああ!私は神だ、不幸なキミの為に新しい人生と新たな特殊能力を上げよう!...異世界で強大な魔王が世界を征服しようとしてるんだ!...新しい能力で無双して...素晴らしいだろう!新たな人生を楽しんでくれ!あ、あと異世界行っても不自由しないように言語能力や基礎的な身体能力強化を与えるからさ!」
彼は私にせめてもの慈悲としていわゆるチート能力で新たな人生と魔王討伐を依頼してきた。
疑問だわざわざ別世界へ転生させるよりその世界で活躍する人間に能力を与えたほうが合理的だ。そもそも全能である神なら魔王など消してしまえばいい。そして彼はずっと笑っている、いや私の死をあざ笑ってるのではない。この状況が楽しくて笑っている。
そして僕は口を開いた
「あなたは...」
「ん?」
「あなたは神ではない」
彼は慌てて反論する
「わわっ!突然何をいいんだすんだい!僕は神さ!ほら死んだはずのキミの前にいるじゃないか!」
今まで彼はそんなことは言われたことがない様子だった
「理由は三つ。一つ、魔王を倒すために僕を使う合理的理由がない、二つ目、あなたは自分自身を主ではなく神と答えた、三つ目、主である神は誰かにたいしてえこひいきなどしない」
彼は慌てる
「えっと...合理的理由...理由は...いや神だって気まぐれだからね!ほら...君がかわいそうだから...」
僕はまっすぐな目で彼を見続ける
「そんな目つきで僕を見ないでくれ、あぁ!そのとり!僕は主である神様のしもべの大天使、大天使ミゲルなんだ!いやぁ~僕の正体によく気づいたねぇ!褒美として何でも言ってくれ!例えば最強の武器とか?ああ、もう一つの能力とかさ~」
いや、これも嘘だ。主の神様の使いである大天使は神に背いて勝手なことはしない。つまり主に背いたということは...
「それも嘘ですね、あなたは主を裏切った、そう"悪魔"だ」
彼は冷や汗をかきながら、反論の理由を探しているようだった
「えっと...その、はぁ、正直に話すよ。ずるずる言い訳をしてもいいけど辻塚あわせが大変になっちゃう。そう僕は大天使だったミゲル。主である神様を裏切り悪魔となった大天使。」
やはりか...もっと反論するかと思ったが
「異世界転生に関する嘘も話すよ。魔王が世界を征服しそうなのは嘘。それを言っておけばゲームやアニメ好きな日本人転生者や、正義感の強いアメリカ人は喜ぶからね。でも世界がある意味で危機的なのは本当。」
「...ある意味で?」
「このことはまだ誰にも...いや具体的には知ってる物はいるけど...ここまで話しちゃったんだ。話すよ」
「僕、いや、僕たち大天使は主である神様に直接作られ異世界で人間の発展を見守る役割だった。でも僕ともう一人の大天使ルキフェルは人間が疫病に苦しみ、災害に苦しむのを見ていられなかった。そして神との約束を裏切り地上へと降臨した。最初はよかった、みんな苦しみから解放され、貧困はなくなり、食料に困ることもなかった。でもルキフェルと僕とでは統治の考えに大きな違いがあった。」
「僕は人間を啓蒙し優秀な人間の指導者が世界を平和にするべきだと思った。けどルキフェルは...ルキフェルは弱い人間ではなく強い新しい人間が必要だといった。そして人間を改造し、多くの遺伝子を混ぜて作った亜人や魔人を作り出し、自分が直接統治すると言ったんだ」
「そして最初はただの意見の相違だったが、統治ししていた国同士で戦争が起こった。僕は人間に強い能力や奇跡の力を与え亜人や魔人に抵抗した。もしそれがどんどんエスカレートしてしまえば世界を破滅に向かわせるほどの大戦争が起きてしまう。僕は人間の代表を通じて和平を指導させ、ルキフェルを直接説得しどうにか戦争は終わった。戦争のエスカレートは押さえられたが、また同じようなことが起きてしまうのは火を見るより明らかだった。」
「君の世界であったよね。第二世界大戦後、強大な核兵器の力を手に入れた超大国。ソビエトとアメリカの対立、そう"冷戦"を。そう全く同じさ、世界を滅ぼす力を持つ大天使二人による冷戦。それが僕の世界で起きてる話さ」
「あぁ、何でこんなことしているかって話だよね、僕はどうにかして人間勢力を維持しようと、そして直接ではなく啓蒙神として立ち回ろうとしようとした結果が亡くなってしまった魂が神の国へ行く前にとらえて僕の世界に送り出すことだったんだ。」
そうだったのか、なら直接てを下すことができず小手先の対策ばかりをしているのがよくわかる。
「君には迷惑かけたね、もとの世界に戻すことは君の世界の大天使に怒こられちゃうし、このまま神の国へ...」
「行くよ」
「え?」
「異世界、行くよ」
「えぇ!僕は悪魔だよ!君に嘘もついたし、異世界へ行かせようとしたのも僕の私利私欲...」
「悪魔とは言ったけど悪い人だとは行ってないよね。あなたは優しい人。どうにか冷戦を終わらせ、世界の平和を望んでるだけ。あとぼく思うんだ、主である神様ならこうなることもわかってたんじゃないかなって。直接主が出てこないってことはさ、そうゆうことだと思うんだ」
「ありがとう、君が行けばもしかしたら...あっ、新しい能力だったね、何が良い?あと身体能力強化と...」
「...身体能力強化はいらない、今のままの自分で良い」
「え!異世界は魔物やモンスター、魔法がある世界なんだよ!身体を再構成して魔力を与えたり身体能力を強化しないと...」
「僕は運動音痴だからね身体能力が強化されても生かせない、あと両親に神様にもらった大切な体をこねくり回したくないんだ」
「わかった...そうなると君を直接強化するような特殊能力も与えられないね...」
「特殊能力は...地球からあらゆる本を取り出せる能力でいけないかな ?」
「うん、君に能力付与せずするのはちょっと回りくどい方法になるけどできるよ」
「ありがとう、あともう一つ」
「ああ、正体がばれたときのね」
「悪魔さんにも下界におりて、一緒に冒険して下さい」
「ええぇぇ!僕が!?」
「冷戦を知ってるのはミゲルとルキフェルだけ、本当に解決するには君の助けが絶対必要。他にも下界の現状を直接見れるし...そして僕とおともだちに...」
「お友達...もちろん!あれだけ長く話したんだ、君と一緒に行くよ。でも僕の能力で大きく手助けは...」
「わかってる、案外あっさり認めるんだな?」
「実は僕は誰かと戦ったりするのが大好きなんだ、地上へ行けば大冒険が待ってる!こんな機会は滅多にない、だから引き受けたのさ」
「結局私利私欲じゃないか」
「僕は"悪魔"だからね、わがまま言っても良いだろ?」
「了解、"悪魔"さん」
「あと友達なんだ、もう大人口調はやーめた、彰!一緒に異世界での冒険の始まりだよ!」
彼がそういうと目の前に門が現れた、まぶしい光を浴びながら僕とミゲルはとびらを進んで行った...