表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《碧眼の花と緋の刃》軍に拾われた少女は、差別と陰謀の時代に抗い、愛を知る  作者: 伊太利ひなぎく
第1章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/19

第5話 前編《小さな選択①》


週末土曜日の朝、女子寮の自室でゴソゴソと服を漁るソニア。

アンナはベッドの上に寝転がりつつ、そんな彼女の様子をじっと見守っていた。


「ソニア、まだ決まんないの?もう30分もその状態じゃん」

「そう言われても、服飾については詳しくないのよ」

「仕方ないなぁ…」


アンナはやれやれと苦笑いして立ち上がると、クローゼットの中から何着か適当な服を見繕う。


「この辺りはどうよ?」

「よくわからないけれど…子供じみて見えなければ、それで構わないわ」


ソニアの返答を受け、アンナは小さく唸りながら再びゴソゴソとクローゼットの中を漁る。


「うーん…それなら、これがちょっと大人っぽく見えるんじゃない?」

「ありがとう、アンナ」


ソニアは礼を言いつつ、アンナから受け取ったコーディネート一式に素直に着替え始めた。

そんな彼女を眺めつつ、アンナはニヤリと笑う。


「で?あんたが服に悩むなんて、何事よ?ひょっとして…デート?」


そんなアンナの言葉に、ソニアはやや呆れ気味に口を開いた。


「そんなわけないでしょ。単に、講義で必要な備品を買いに行くだけ」

「なーんだ、つまんないの。せっかく、正門からあんたの恋人の顔を拝もうと思ってたのに…」


口を尖らせてそう文句を言うアンナに、ソニアは思わず苦笑いしてしまう。


「そもそも、私に恋人なんていないわよ?」

「えぇ?嘘でしょ?ソニアくらいの美人なら、良い男選び放題じゃん」


アンナが冗談めかしてそう笑うと、ソニアは少し暗い雰囲気を纏いつつ俯いた。


(私に、恋愛なんて…)


そう思いながら、ソニアは言いづらそうに口を開く。


「その…私、あんまりそういうのに興味なくて」


その言葉に、室内の空気が一瞬で重苦しくなる。

2人の間に沈黙が続く中、アンナの背中には冷や汗が伝う。


(あっ…これ、触れちゃいけなかったやつなんじゃない…?)


はたとそう気付いたアンナは、途端にオロオロと狼狽え始める。


「ま、まあソニアはまだ16だもんね!興味が出てくるのはこれからよ、ははは…」


アンナは何とかそう取り繕うも、複雑そうな表情で苦笑いするソニアの様子にますます気まずくなってしまった。


「えっと……何か、ごめん…」

「…ううん。こっちこそ、気を遣わせてしまってごめんなさい」


ソニアはそう言いつつ壁の時計に目を向ける。


「…私、そろそろ出るわ」

「あ、うん…いってらっしゃい。午後の補講、遅れないように帰って来なよ?」

「わかってる。またね」


ソニアはそう言ってアンナと分かれて寮を出ると、早足で正門へと向かう。

警備の詰め所の前に到着したソニアはキョロキョロと門の外を見回すが、ユリウスたちはまだ来ていないようだった。


(とりあえず、待ち合わせ場所に向かいましょう)


ソニアは予めユリウスから受け取っていた外出許可証を警備に提示し、一通りの手続きを済ませると正門の外へと足を踏み出す。

久々の街はすっかり冬景色に変わっていて、入学前の記憶が少し遠のくようだった。


「嬢ちゃーん!」


ふと自分を呼ぶ声が聞こえ、その方向へと振り向くソニア。

大通りの向こう側で、ギルベルトが大きく手を振っているのが目に入った。

ソニアは左右から車が来ていないことを確認すると、ギルベルトのもとに駆け寄って一礼する。


「おはようございます、ベルクマン准尉」

「おうよ。せっかくの休みの日に連れ出して(わり)ぃな」

「いえ、元々予定もありませんでしたので、何の問題もございません」


ソニアはそう答えると、キョロキョロと辺りを見回す。


「嬢ちゃん、どうした?」

「…クロイツァー大尉は、まだお越しにならないのでしょうか?」


その言葉に、ギルベルトはチラリと腕時計を確認しつつ口を開いた。


「集合15分前か…確かに、あいつにしてはちょいと(おせ)ぇな。まあでも、そろそろ来ると思うし、ここで待ってようぜ」

「承知いたしました」


ソニアとギルベルトは、そのまま並んでユリウスの到着を待つ。

ぼんやりと空を眺めていたソニアは、ふと疑問を口にする。


「そういえば…本部の方はシフト制ではないのですか?人数的にも、大尉の部隊内でお休みが被るなんて珍しいと思うのですが…」


そう首を傾げるソニアに、ギルベルトは「あー…」と少し気まずそうに頭を掻いた。


「嬢ちゃんの言う通り、基本はシフト制だぜ。大尉は元々今日休みで…俺は代休取ったんだよ」

「えっ…?」


思わずそう声を上げたソニアは、素早くギルベルトに頭を下げる。


「申し訳ございません…私のせいで、准尉の貴重なお休みを──」


そんなソニアの言葉をギルベルトは素早く遮った。


「いや、嬢ちゃんが気にする必要ねぇって」

「ですが…」


そう言うソニアの肩を、ギルベルトはポンポンと軽く叩く。


「元々、年内に1日分消化しねぇとだったからよ。ま、ちょうど良かったってとこだな」


ニッと笑ってそう告げるギルベルトに、ソニアはもう一度頭を下げた。


「…ありがとうございます、准尉」

「礼なんざ要らねぇって…」


ギルベルトは苦笑いでそう言いながら、キョロキョロと辺りを見回す。

ふと、通りの向こうからユリウスが小走りでやって来るのが見え、ギルベルトは彼に向かってヒラヒラと手を振った。

ユリウスの姿に気付いたソニアは、素早く一礼する。


「おはようございます、大尉」

「ああ。シュミット、休みの日くらいそう堅苦しく無くても良いんだぞ?」

「いえ、そういうわけには参りません。大尉も准尉も、上官であることに変わりませんから」


いつものように淡々とそう答えるソニアに、ユリウスとギルベルトは思わず苦笑いしてしまう。


「嬢ちゃんは相変わらず真面目だな…。とりあえず、行くか」


ギルベルトの言葉に3人は集合場所を離れ、中心街の方へと歩き出す。

市街地を歩きながら、ユリウスはギルベルトに声をかけた。


「ギルベルト、どこまで行くつもりだ?」

「簡単に説明すると…掘り出しモン屋みたいなとこだな」

「掘り出しもの、ですか?」

「まあ、着きゃわかるからよ。ちょっと待ってな」


ソニアとユリウスはその言葉に顔を見合わせつつ、ギルベルトの後に続くのだった。


しばらく歩いていくと市街中心に出て、ソニアは久しぶりの光景にぐるりと辺りを見回した。


(いつの間にか、知らないお店が増えてるわね…)


そう思いつつ、少し歩調を緩めながら一軒一軒をじっくりとチェックするソニア。

そんな彼女の様子に気付いたギルベルトは、プッと小さく吹き出した。


「お上りさんみたいになってんぞ、お嬢さん」

「あ…申し訳ございません。この辺りには久々に足を運んだもので…」

「お前、普段は外出しないのか?」


ユリウスの問いに、ソニアはフルフルと首を横に振る。


「…編入してから、本部の外に出るのは今日が初めてです」

「はぁ!?マジかよ…。嬢ちゃん、いつも何して過ごしてんだ…?」


ギルベルトは不思議そうな顔でソニアを見つめ、そんな彼女は「普段の過ごし方といえば…」と毎日のスケジュールを思い返す。


「平日は、当然ながら講義や訓練で1日終わります。週末も、訓練課程の補講が入っていることがほとんどですし…」

「それに加えて、ユリウスの個別指導ってわけか。…嬢ちゃんは、もうちょい青春ってのを楽しんだらどうだ?」

「青春、ですか?」


ソニアは思わず首を傾げる。


「何つーか…友達と思い出作ったり、彼氏とどっか出かけたりよ。16歳ってなると、皆そんな感じじゃねぇの?」


ギルベルトはそう言いつつぐるりと周りに目を向け、ソニアもそれに倣って辺りを見回す。

週末というだけあって人通りは多く、カップルや友人グループで楽しそうに歩いている同年代と思われる人々の姿が目に入る。

ソニアはそんな光景にほんの少し胸がチクリと痛み、つい俯いてしまう。


「恋人も親しい人間もいないのでよくわかりませんが…世間一般ではそのように過ごすものなのでしょうか?何せ、同年代の知り合いも皆無なもので…」


その言葉に、ギルベルトは怪訝な表情を浮かべる。


「…ちょい待ち。嬢ちゃん、いつから飛び級してんだ?」

「初等教育の時からです」


間髪入れずにそう答えるソニアの言葉に、ユリウスは驚きの声を上げた。


「は!?…お前、そんな頃から飛び級していたのか?」

「はい。初等教育の2年目からひたすら飛び級で…中等教育含め計7年で修了いたしました」

「改めて聞くと、やっぱ嬢ちゃんってすげぇんだな…」


ギルベルトは感心した様子でそう言うと、更に続ける。


「でもよ…そこまで優秀なら、わざわざ軍大学なんざ選ばなくても良かったんじゃねぇのか?」

「確かにな。もっと良い高等教育機関は山ほどあっただろう?」


ユリウスたちの言葉に、ソニアは苦笑いしながら口を開く。


「…正規の魔術使用許可が欲しかったんです。警察学校も考えたのですが、あちらの方が入学規定が厳しかったもので…」

「なるほどな、そういうことか…」


ユリウスは腕を組んで考え込む。


(確かに、軍で許可証を取得できれば常時魔術の使用が許可される…。シュミットの瞳の色の件を考えれば、そこに行き着くのもおかしな話ではないな)


そう考えながらソニアをじっと見つめる。

そんなユリウスの様子に、ソニアは小首を傾げた。


「大尉?」

「いや…何でもない。気にするな」

「しっかし、その歳できちんと目標のある嬢ちゃんは偉いよなぁ。俺が16の時なんざ、何も考えずに授業サボって毎日遊び歩いてたぞ」


ギルベルトは自身の過去を振り返りつつ、感心した様子でそう口にした。


「いえ…目標だなんて、そんな大層なものではございません」


フルフルと首を横に振るソニアに、ユリウスも付け加える。


「お前はそう言うが…俺も16の時には、まだ軍人になろうとは決めていなかったからな。その年齢で将来のことを真剣に考えられているというのは、誇って良いことだと思うぞ?」

「そうでしょうか…」


これまで他人に褒められるという経験の少なかったソニアは、ユリウスとギルベルトの言葉にくすぐったい気持ちになってしまい無意識に頰を掻く。

珍しく照れ臭そうな様子を見せるソニアを、ユリウスとギルベルトは微笑ましく思うのだった。



───────

────

──


その後30分ほど歩いた頃、ギルベルトはとある建物の前で足を止めた。


「着いたぜ」


その言葉にソニアは目の前の建物を見上げ、軽く首を傾げる。


「普通のお宅にしか見えませんが…」

「地上部分はそうだな」


ギルベルトはそう言うと、建物の隅の方に隠れるように設置されている、薄暗い地下への階段を指差した。


「…だが、地下はちょいと訳ありなんだ」


それを聞いたユリウスは若干眉をひそめる。


「…まさか、違法な店じゃないだろうな?」

「いや、俺ら軍人なんだからよ…流石にそんなとこで買い物できる身分じゃねぇだろ?」


ギルベルトは苦笑いしつつ続ける。


「まあ、確かに見た感じは怪し気だが…ちゃんとした店なんだぜ?」


ギルベルトは「とりあえず入るか」と1人さっさと階段を降りていき、ソニアも階段を1段1段ゆっくりと降りていく。

ユリウスもそんな彼女のすぐ後に続いて地下へと向かい、2人は階段を降り切った先にある扉をそっと開いた。

中に足を踏み入れてキョロキョロと辺りを見回すソニア。

店内は薄暗く、少し不気味に感じてしまう。

ひと足先に店内に入っていたギルベルトは、そんな様子のソニアを苦笑いで見やると、店の奥の方へ声をかけた。


「おーい、誰かいねぇのか?」


すると、すぐに奥の方から店主と思われる年配の男性が顔を覗かせる。


「誰かと思えばベルクマンか…いらっしゃい。何か探し物かね?」

「おう、()()()()()()()()()()()ってまだ残ってるか?」


ギルベルトの『魔道具』という言葉に、ソニアとユリウスは思わず目を丸くして顔を見合わせた。


(『魔道具』といえば…確か、2000年以上前、魔術研究が最盛期だった頃に、研究者たちがこぞって開発した魔術関連用具の総称──だったわよね?)


ソニアが教育課程の講義内容を思い返していると、ユリウスも怪訝な表情を浮かべる。


「…ギルベルト、きちんと説明してくれ。魔道具なんて代物、普通は教会管轄の保管庫で眠ってるはず──」

「ユリウス、落ち着けって…」


ギルベルトはユリウスを宥めつつ続けた。


「そもそも、テオリム教会が管理してんのは何かしら強力な効果のあるヤツだけだ。そうじゃねぇのは、魔道具だとすら気付かれねぇまま市場を流れてるってことも稀によくあんだよ。魔道具の売買は別に違法でもねぇからな」


その説明に、店主もうんうんと頷く。


「ウチはアンティーク屋兼質屋だからね。そういう訳あり品との遭遇率も、他の店より高いんだよ。ちょっと待っていなさい」


店主はそう言うと店の奥の方へと姿を消し、しばらくすると1つの小さな木箱を抱えて戻って来た。


「今残っているのは、この中に入っている分だけだな」


店主はそう言って箱を差し出し、ギルベルトはそれを受け取ると中をざっと確認する。


「思ったより数あんのな…これ、全部同じモンなのか?」

「『魔術の効果を一旦時間固定化させる』という効果に関してはどれも同じだね。相性の良い魔術がそれぞれ若干違うが…まあ誤差の範囲ではあるな」


そんな会話に、ソニアとユリウスも箱の中を覗き込んだ。

そこにはオブジェのようなものや装飾品等が十数点ほど入っている。


「なるほどな…。幻影魔術と隠密魔術の2つと相性の良いものがどれなのか、というのはわかるのか?」


そうユリウスが尋ねると、店主は少し考え込みながら口を開く。


「そうさな…どのくらいの時間、固定化させたいんだね?」

「最低でも2時間弱、可能な限り長時間の物が欲しい」

「ふむ、となると…」


店主はそう言うと、箱の中をゴソゴソと漁っていくつか中身を取り出していく。


「おたくの希望に合いそうなのは、この辺りだね」


ユリウスは店主から箱の中身を受け取り、手近にあったテーブルの上にそれらを並べる。

ソニアはテーブルの上をじっと眺めつつ口を開いた。


「装飾品が多いようですね…。服務規程上の問題がないものとなると、どれになるのでしょうか?」


ソニアがそう言って首を傾げると、ユリウスは明らかに派手なデザインのものを端の方に避ける。


「こういう華美なものは当然禁止されているが…ギルベルト、お前把握しているか?」

「原則としては、シンプルなものしか認められてねぇはずだ。まあ、無くし辛そうなバングル辺りにしとくのが無難なんじゃねぇか?」

「それもそうだな…」


ユリウスはシンプルそうなデザインのバングルをいくつか吟味すると、他の物は箱に入れ直す。


「シュミット、この中から選んだらどうだ?」

「どれも同じに見えるのですが、何が異なるのでしょうか?」


バングルをじっと見つめながら首を傾げるソニア。

そんな彼女に、ギルベルトはやれやれと苦笑いしてしまう。


「いや、よく見てみろよ。この辺のデザインが全然(ちげ)ぇだろ?」

「そうなんですか?」


ソニアの返答に、ギルベルトは怪訝な表情を浮かべる。


「…ひょっとして、こういうの興味ねぇのか?嬢ちゃんくらいの歳なら、お洒落したいお年頃だろ?」


そう言われたソニアは、小さく首を横に振る。

元々外出頻度も低く特に見せる相手もいないソニアは、お洒落だの装飾品だのにはこれまで食指が動かなかったのだ。


「…あまり興味がありません」

「えぇ…?でもよ、今日のその私服だって流行りのデザインじゃねぇか」

「あっ、これは父から贈られたものでして…。私が購入したわけではございません」


服装にも無頓着なソニアがそう答えると、ユリウスとギルベルトは思わず苦笑いしてしまう。


「…仕方ねぇな。なら、とりあえずユリウスが選んでやれよ」

「は!?何で俺が──」

「お前の方が、まだ嬢ちゃんと歳(ちけ)ぇだろ!アラフィフの俺に、16の子が付けるアクセサリーなんか選ばせんなって…」


ギルベルトにそう言われたユリウスは、渋々テーブルの上に目を戻す。

が、ユリウス自身もこういったものには詳しくなく、どうしたものかと頭を悩ませてしまう。

そんな彼の様子に、ギルベルトは思わず顔を引きつらせた。


「おい…まさか、お前もこういうのダメなのか?」

「…贈るような機会もないからな、そもそもどう選べば良いのかすらわからない」

「あのなぁ…お前ら2人とも、良いお年頃だろ…?」


ソニアとユリウスの様子に、ギルベルトは深くため息をつく。


(最近の(わけ)ぇ奴らは、これが普通なのか?)


そんなギルベルトの様子をじっと見つめていたソニアは、遠慮がちに口を開いた。


「あの…自分で選びますので、ご心配には及びません」


ソニアはそう告げると、彼女たちの様子を静かに眺めていた店主に声をかける。


「すみません、この中で1番効果の高いものはどれでしょうか?」

「んん?そうさな…これと、あとこっちの2つだね」


店主はそう言いながら、3つのバングルをテーブルの手前の方に置き直す。


「価格差はどのくらいでしょうか?」

「どれもそう変わらんよ。まあ、これが若干安いな」

「では、これをいただきます」


素早く決めてしまうソニアを見て、ギルベルトは思わず声をかける。


「いやいやいや…嬢ちゃん、そんな決め方で良いのか?」


その言葉に、ソニアは首を傾げた。


「こういったものは、効果が高い方が良いのではありませんか?」

「それはその通りなんだけどよ…。まあ、嬢ちゃんがそれで良いってんなら良いか…」


ギルベルトが苦笑いしながらそう言うと、ユリウスはソニアがどんなものを選んだのかと横からテーブルを覗き込んだ。


「…シュミット、こっちの方が良いんじゃないか?」


そう言いながら、ユリウスは少し細身の別のバングルを指差す。


「ですが、そちらは少し高いそうですし…同じ効果であれば、安い方が良いのでは?」

「お前の言い分も正しいが…お前の選んだ方は少し重そうに見えるぞ。毎日身につける以上、少しでも軽い方が良いと思うが…」


ユリウスの言葉に、ソニアは(言われてみれば…)と彼の選んだバングルをじっと見つめる。


「…確かに、大尉の仰ることもごもっともです。しかし、軽過ぎても耐久性に不安が残るかと存じます」

「言われてみればそうだな…。となると、まずは材質を比較してみるか」


そんなソニアとユリウスの真面目な会話を聞きながら、ギルベルトはやれやれと小さく息をつく。


(アクセサリーを選んでる(わけ)ぇ男女の会話じゃねぇなぁ。ロマンチックさや色気のかけら1つありゃしねぇ…)


そう心の中でツッコミを入れつつ、2人の様子を苦笑いで見守るのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ