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《碧眼の花と緋の刃》軍に拾われた少女は、差別と陰謀の時代に抗い、愛を知る  作者: 伊太利ひなぎく
第1章

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第8話 前編《馴染む場所①》


ソニアの仮配属が決まってから1週間後。

朝の静かな執務室に、コツコツとペンを走らせる音が響いていた。


「…ローデ少尉、この書類はどのように処理すればよろしいのでしょうか?」

「あー…これな。こーゆーケースでは、こっちの書類の数字を持ってくればオッケーだぜ」

「理解いたしました。ありがとうございます」


ヴェルナーに質問しながら書類の山と向き合うソニアを、ユリウスは休憩スペースの窓越しに見つめる。


(単に、環境に慣れてもらうだけのつもりだったんだがな…)


コーヒーを啜りつつ、数日前のことを思い返すユリウス。

彼の執務室に顔を出すようになったソニアから「何か、お手伝いできることはございませんか?」としつこいほどの申し出があったため、現在彼女は講義の空き時間に執務室で雑務を担当するようになっていたのである。


ユリウスの隣に座るギルベルトも、紅茶の入ったカップを片手に、ソニアの様子を眺めながら口を開く。


「初めはちょいと心配してたけどよ…嬢ちゃんも、1週間で随分とウチに馴染んだもんだなぁ」

「確かにな。ソニアにここまで順応性があるとは、正直俺も予想外だった」

「そもそも、ウチの連中も基本的に面倒見は良い方だからな…。全員『歳の離れた妹の面倒見てる』って感じなんじゃねぇの?」


「ま、俺にとっちゃ、もはや子供みてぇな歳だけだよ」とケラケラ笑って付け加えるギルベルト。

そんな彼を横目に、ユリウスはチラリと執務スペースのソニアに目を向けた。


(歳の離れた妹…か。言い得て妙だな)


ユリウスがそう納得していると、ギルベルトはニヤッと笑って口を開く。


「とはいえ…嬢ちゃんが1番懐いてんのは、やっぱユリウスだよな」

「…そうか?別に、他の連中とも上手くやっていると思うが…」


そう首を傾げるユリウスを、ギルベルトは苦笑いで見つめた。


「いや…どう見てもそうだろ?嬢ちゃんはお前によく懐いてる、お前は嬢ちゃんを可愛がってる…とりあえずは、良い師弟関係を築けてるみてぇだな。安心したぞ」

「何だ、心配していたのか?」


ユリウスがため息まじりにそう言うと、ギルベルトはやれやれと口を開く。


「ユリウス、基本女子に冷てぇだろ?だから嬢ちゃんを弟子に取るなんざどうなることか…って、正直ヒヤヒヤしてたんだぜ?」


ギルベルトの言葉にユリウスは再び首を傾げ、そんな彼をギルベルトは苦笑いで見つめる。


(こいつ…自覚ねぇのかよ)


ギルベルトは、ユリウスの様子にやや呆れ気味に息を吐いた。


「軍大学時代、女子を散々バッサバッサぶった斬ってたのは、どこのどいつだよ。ん?」


その言葉に、ユリウスは小さくため息をつく。


「お前な…それとこれは話が別だろう。俺は学生に手を出すような真似はしない。それに、ソニアに言い寄られたわけじゃないからな」

「あー…そういや、お前の方から言い寄ったんだもんな」


ニヤニヤしながらそう言うギルベルトを、ユリウスは軽く睨みつける。


「…言い寄ってはいない。個別指導を申し出ただけだ」

「へーへー。でもよ、お前がそんなに気に入る学生なんざ、あの子が初めてだろ?何となーく勘繰っちまうんだよなぁ…」


その言葉に、ユリウスはギルベルトに鋭い視線を向けた。


「お前な…俺が、1()0()()()()の、()()()()()、かつ()()()()()に、そういう感情を抱くとでも思っているのか?」

「…(わり)ぃ、冗談がすぎたな」


ギルベルトは気まずそうに頭を掻きつつそう言うと、ソニアとヴェルナーへと視線を戻す。


「…あ」


何かに気付いたギルベルトは、紅茶を一気に飲み干して素早く執務スペースへと戻った。

そのままヴェルナーに近付いて、彼の頭を小突く。


「おいコラ、嬢ちゃんに手ぇ出すなって言っただろ」

「出してないっすよ!ちょーっと肩に手を回そうと思っただけ──」


そう言うヴェルナーの頭に、今度はゲンコツが降る。


「出そうとしてんじゃねぇか!ったく…ヴェルナーからは目が離せねぇな」


小さくため息をつくギルベルトは、ソニアに向き直った。


「嬢ちゃんも、こいつに何かされかけたら、ビンタ5発くらい食らわせてやって良いんだからな?」

「えー?ソニアちゃん優しいし、そんなことしないっしょ。な?」


そう言うギルベルトとヴェルナーの言葉に、ソニアは返答に困ってしまう。


(そう言われても、流石に上官に手を上げるわけには──)


とその時、ふと肩に手が置かれる。

ソニアがハッと見上げると、ユリウスがそばに立っていた。

いつの間にか、休憩スペースから戻って来ていたようだ。

ユリウスは、じっとソニアを見下ろしつつ真剣な声色で口を開く。


「ソニア。5発といわず、10でも20でも食らわせてやれ。上官命令だ」

「ちょ、大尉!それは流石に卑怯っすよ!」


そう慌てるヴェルナーの横で、ソニアは「上官命令…」とポツリと呟くと、まっすぐにユリウスに向き直る。


「承知いたしました。最大20発という認識でよろしいでしょうか?」


素直に上官からの指示に従おうとするソニアの言葉に、ヴェルナーは焦ってブンブンと首を横に振った。


「待って待って待って!ソニアちゃんに殴られたら、俺泣いちまうって…!」

「それが嫌なら、嬢ちゃんに手ぇ出さなきゃいいだけだろ!」


ギルベルトが呆れ顔でヴェルナーを叱りつけると、ヴェルナーは不服そうに口を尖らせる。


「ちぇっ…別にちょっと仲良くするくらい──」


そう言いかけたヴェルナーの顔が一気に青くなり、何事かとソニアはその視線の先に目をやる。

ユリウスとギルベルトが鬼の形相でヴェルナーを睨み付けており、その迫力にソニアも一瞬背筋が凍ってしまった。

そんな様子の彼女に、ユリウスはチラリと視線を向ける。


「…ソニア」


ソニアにそう声をかけたユリウスは、執務室の扉の方をスッと指差した。


「…お前、2時限目は講義があるだろう。そろそろ学生棟まで戻っておけ」

「講義終わったらまたこっち戻って来な、一緒に飯食おうぜ。俺らはそれまでに、ヴェルナーを再教育しておくからよ」


そう言いながらギルベルトはギロリとヴェルナーに視線を向け、ヴェルナーは一瞬震え上がる。

そんな彼の様子につい苦笑いしつつ、ソニアは席を立った。


「はい、承知いたしました…」


ソニアは素早く一礼すると、そそくさと執務室を後にする。

背後からヴェルナーの悲鳴が聞こえたように思ったが、(気のせい気のせい…)と自分に言い聞かせつつ学生棟へと向かった。


1人本部の廊下を歩いていると、そばにある部屋の扉が開き、そこから出て来た見知った人物の姿がソニアの目に飛び込んでくる。


「あ…お疲れ様です、シュヴァイガー大佐」

「ん…?」


ソニアの声に気付いたハインツは、視線だけをソニアに向けた。


「…ああ、君か。またこんな所をうろついているとはな…。クロイツァー大尉は、学生の管理を怠っているのかね?」

「大尉のところで所用がございまして、これより学生棟に戻るところでした」


ソニアはハインツをやや警戒しつつも、当たり障りのない返答をする。

ハインツはそんな彼女のことを面白くなさそうな目で見やると、ふと口を開いた。


「そういえば…来月が試験期間であることは、既に把握しているな?特に君は、訓練課程の講義に関してはしっかり準備をしておくように」

「承知いたしました」

「不正が無いかどうかも、じっくり見させてもらうぞ。()()()()()とは言わないがね…」

「…はい」


ソニアがそう答えると、ハインツは彼女を上から下までじっくりと観察するように見る。

それから小さくため息をつくと、その場を立ち去って行った。


(相変わらず、大佐の意図はよくわからないわね…)


そう思いつつ、ソニアは学生棟へと急ぐのだった。



───────

────

──


ソニアが第1学年の武術訓練のために講義室に入ると、既に中にいたアンナがソニアに向かって手を振る。


「ソニア、こっちこっち!」


ソニアは素早くアンナのそばに移動し、彼女の隣に立った。


「アンナ、今日は早いのね」

「うん。応急救護のレクリエーションもあるじゃん?医学部生と看護学部生は、事前準備で呼ばれてたんだよね〜」


ニカッと笑ってそう答えるアンナ。

ソニアは教科書で読んだ応急救護の内容を思い返しつつ口を開く。


「初期対応って難しそうよね…。何かコツでもあるのかしら…」


そう首を傾げるソニアに、アンナは顎に手を当てつつ少し考え込む。


「んー…まず怪我の具合は置いといて、冷静になることが1番大事なんだよね〜」

「冷静になること…」


ポツリとそう呟くソニアの言葉に、アンナは小さく頷いた。


「そ。慌ててちゃ、できることもできなくなるでしょ?ま、先輩からの受け売りなんだけどさ」

「なるほどね…覚えておくわ」


ソニアの返答にアンナはニコニコと笑顔を浮かべると、ふと思い出したように口を開く。


「そういえば…ソニアこそ、最近ちょっと来るの遅いんじゃない?3年の方、忙しいの?」


ソニアの個別指導や仮配属のことを何も知らないアンナは、そう首を傾げる。

彼女の言葉に、ソニアはつい考え込んでしまう。


(…アンナには、別に話しても大丈夫よね?)


そう判断したソニアは小声で口を開いた。


「…第3学年の後期から、部隊実習があるのは知ってるわよね?」

「えっ?うん、まあ知ってるけど…」

「私、実習での仮配属先がもう決まったの。この間からそちらに度々お邪魔していて、今日もさっきまで向こうにいたのよ」


ソニアの説明に、アンナは怪訝な表情を浮かべる。


「妙に早くない?…というか、仮配属先ってどの部隊なわけ?」

「…クロイツァー大尉の部隊」


ソニアが淡々とそう告げると、アンナは目を丸くして「えぇ!?」と大きく驚きの声を上げた。

その声に、周りの学生たちが何事かとアンナに視線を向ける。

アンナは慌てて「な、何でもないから…!」と誤魔化してからソニアに小声で話しかける。


「ちょっと…それホントなの?何でまた鬼教官の部隊に…?」

「大尉には、個別指導を受け持っていただいているの。仮配属はその延長」


ソニアはそう言うと、再び驚きの声を上げかけるアンナの口をサッと塞いだ。

アンナは「ごめん…」と気まずそうに頰を掻く。


「まさか、ソニアが大尉の弟子になってたなんて驚きだわ…。でもさ、大丈夫なわけ?1対1の訓練なんて、ますます厳しそうじゃん…」

「否定はしないわ。でも、そのくらいは鍛えてもらわないと、各学年での単位が取れないもの」


ソニアの説明に、アンナは納得したような表情を浮かべた。


「あー…あんたは3学年分あるんだもんね。それを考えれば、鬼教官が適任ってわけかぁ…」


アンナの繰り返す『鬼教官』という言葉に、ソニアは少しムッとした表情を見せる。


「…大尉のこと、『鬼教官』だなんて言わないで」

「あ…ごめん」


アンナは内心冷や汗をかきながらそう謝罪する。

編入当初のソニアなら、この一言で完全に距離を取られてもおかしくない──そんな予感がよぎった。


(やっちゃった…。そりゃあ、自分の師匠を悪く言われて良い気はしないか…)


そう思いつつ、アンナはソニアをじっと見つめた。


「…何?」

「んー…何て言うか、最近ソニアの雰囲気が変わったのってそのせいだったのかなぁと思ってさ」

「雰囲気…?」

「うん。何となくだけど、前に比べたらちょっと雰囲気柔らかくなったような気がするんだよね。入学したての頃は、ホント近寄り難いって感じだったんだけど…少しそんな感じが薄れたかなって」


そんなアンナの言葉に、ソニアは思わず首を傾げる。


「単に、あなたが私に慣れただけじゃないのかしら?」

「いやまあ、それもあるかもだけどさ…」


そう言うアンナは頭を掻きつつ続ける。


「でも…仮配属も受け入れてもらえるくらいなんだから、ソニアと大尉はお互い信頼し合ってるんでしょ?」


そう言って首を傾げるアンナの言葉に、ソニアはハッと気付かされる。


(初めは、少しくらいは大尉のことを信じてみようと思っただけだったはずなのけれど…いつの間に、こんなに信頼するようになっていたのかしら…?)


そう考える彼女の様子に、アンナはフッと笑う。


「あんたって、入学式の時から『誰のことも信用しません』って雰囲気醸し出してたけど…ちゃんと頼れる人ができたんだね。安心したよ」


そう言うアンナの言葉に、ソニアはこれまでの自身のことを思い返す。


幼少期こそは、何とか周りと仲良くしようと努力していたソニア。

しかし、ずば抜けて優秀なソニアは馴染むことができず、周りからも遠巻きにされてしまっていた。


それでも、歩み寄ろうとしてくれる人たちとは良い関係を築こうと必死になっていた日々。

が、結局その僅かな人間も、ソニアのことを何かしら利用してやろうと企んでいただけ…。

何度も裏切られ続けた末に、ソニアはとうとう人を信じること自体を諦めてしまった。


(でも…大尉に出会って、その誠実さを目の当たりにして…もう一度、人を信じてみようと思えたのよね)


そう思ったソニアはアンナに向き直る。


「…そうかもしれないわ」


素直にそう答えるソニアに少し驚きつつ、アンナはフッと笑ってソニアを見つめるのだった。


その後、講義を終えたソニアはアンナに再び声をかけられる。


「ソニア、一緒にお昼行かない?」

「ごめんなさい、今日は既にお誘いがあるの」

「えっ!?嘘でしょ?ソニアにお誘いなんて、一体どこの誰が──」

「仮配属先の上官たちよ」


ソニアが被せ気味にそう答えると、アンナは納得したような面白くなさそうな複雑な表情を浮かべた。


「なーんだ…てっきり、あんたに誰か言い寄ってきたのかと思ったのに」

「言い寄られたことなんて、一度もないわよ?そもそも交際経験すら皆無だもの」


ソニアのその言葉に、アンナは先日彼女に恋愛話を振った時のことを思い出す。


(…この話題、あんまり引き摺らないほうが良いよね)


そう考え込むアンナを余所に、ソニアは室内の時計に目を向ける。


「…そろそろ行っても良いかしら?」

「あ…引き止めてごめん。またね、ソニア」

「ええ、またね」


ソニアはそう言ってサッとアンナに手を振ると、講義室を後にしてユリウスの執務室へと向かうのだった。



───────

────

──


小走りで執務室にやって来たソニアは、軽く息を整えつつ扉をノックする。

少しの間の後に扉が開き、ギルベルトが顔を覗かせた。


「お、嬢ちゃん。お疲れさん」

「お疲れ様です、ベルクマン准尉。遅くなり申し訳ございません」

「気にすんなって。俺らも、今ちょうど午前の仕事終わったとこだったからよ」


ギルベルトはそう言うとくるりと室内の方へと振り返り、中にいる隊員たちに声をかける。


「お前ら、嬢ちゃん来たし行くぞ」


その声にワイワイと他の隊員たちも扉の方へとやって来て、ソニアはサッと一礼する。


「皆さん、お疲れ様です」

「ソニアさん、相変わらずお堅いですねぇ…」

「まあ、それだけソニアちゃんが真面目だってことだよ。…ローデ少尉、それ以上前に出ちゃダメだからね?」


ラルフがそう言ってヴェルナーに軽く睨みを効かせると、ヴェルナーは不満気に口を開いた。


「ちぇっ…何で俺ばっかり…」

「少尉が、ソニアちゃんにしつこく言い寄ろうとするからでしょ!」


そう話すヴェルナーたちを見ながら、ソニアは先ほどのアンナとの会話を思い返す。


(…これは、言い寄られた経験にカウントしなくても良いわよね?)


そう考えるソニアのそばで、ユリウスはヴェルナーたちを一瞥して小さくため息をついた。


「お前たち、ここで油を売っていたら昼休憩の時間が無くなるが…良いのか?」

「あ、それは困るっす…」

「ならさっさと行くぞ」


ユリウスはそう言うとスタスタと食堂の方へと歩き始め、ソニアもすぐその後を追う。

そんなソニアの様子に、ギルベルトはフッと笑うと他の隊員たちと共に2人に続いた。


食堂に辿り着いたソニアはふと足を止め、それに気付いたユリウスは彼女の方へと振り返る。


「ソニア、どうした?」

「いえ…今更なのですが、学生が一般食堂に入ってもよろしいのでしょうか?」

「ああ、そういうことか…。正規軍人と一緒であれば特に問題ないから気にするな」


その言葉に少しホッとした様子のソニアを連れ、ユリウスは食堂の入り口に貼ってあるメニュー表の前へと移動した。


「好きな物を選ぶと良い」

「かしこまりました」


ソニアはそう返答しつつメニュー表を一通り眺めると、1番安い定食メニューを指差す。


「であれば、私はこれにしようと思います」

「少し味気ないような気もするが…本当にこれでいいのか?」

「はい、お値段も控えめですし」


相変わらず表情を変えないまま淡々とそう答えるソニアに、ユリウスは重いため息を漏らした。


「お前に出させるつもりは毛頭ないんだが…」

「であれば、尚更1番安いもので構いません。大尉には、先日バングル代をお借りしたばかりですから」


その言葉にユリウスは再び小さくため息をつくと、別のメニューを指差してソニアに声をかける。


「…これはどうだ?」


そう提案されたソニアは小さく首を横に振った。


「いえ、先ほどのもので結構です。私ごときにお金を使っていただくわけには参りません」

「お前な…」


ユリウスはため息まじりにそう言いつつ、(こいつ、本当にどういう環境で育ってきたんだ…?)とつい疑問に思ってしまう。


「ソニア、『ごとき』なんて言葉を使うな」

「不快だったでしょうか?申し訳ございません…」

「そういうことじゃなくてだな…わざわざ自分を下げる必要はないだろう?」

「ですが、現に私は部隊内では1番下っ端の学生です」


その言葉に再度ため息をついたユリウスは、無言でソニアを連れて、食堂内に足を踏み入れる。

彼女が自分の選んだ定食の方の列に並ぼうとすると、ユリウスはその手を引いて別の列に並ばせた。


「あの、この列は──」

「いいから大人しく並んでいろ。上官命令だ」

「…承知いたしました」


そう言われたソニアは素直にそのまま列に並び始め、ユリウスはやれやれと頭を掻く。


(ソニアには度々話が通じないことがあるが…1度きちんと話を聞くべきか?)


そう考えつつ、順番が回ってきたユリウスは自分とソニアの分の定食を注文するのだった。

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