二つの世界と二人と二匹 8
「囲め、囲め! 王女を包囲するのだ!」
リーダー格と思しきミノケンタウロスが怒号を飛ばす。
一糸乱れぬ統率によって、他のタウロスらが包囲網を敷く。
ダリアを殺害――あわよくば生け捕りにせねば彼らの主に、生きたまま食される。それだけは避けたいので、皆必死だ。
十数体ものタウロスらが徐々に包囲を狭めて行く。
「なるべくなら、王女はヘルタウラス様の手土産として生け捕りにしたいが、無理なら殺しても構わん!」
〈ですって、ギル――どうする?〉
ダリアが相棒のギルに、念話を送る。
ギルモアとリンクしている王女は、思考するだけで会話することが可能だった。
〈好きにすればぁ〉
ギルモアは気のない返事だ。
〈ギルッ!〉
ダリアはギルモアに、怒りのニュアンスを込めた念話を送る。
〈んな、怒るなって。俺様の戦闘力はダリアの意志に左右されるんだよ。お前が勝てないと感じたら、斬れ味が鈍るし、逆に斬れると思ったら、オリハルコンだろうがアダマンタイトだろうがスパッと斬れるんだよ。お誂え向きにタウロスらがいやがる。今のお前さんなら、あの技いけちゃうんじゃね?〉
〈分かったわよ。途中で、へばらないでよね。ギル〉
タウロス包囲網が完成する寸前、王女の剣がグリーンに光った。
「舞えっ! 白鳥の騎士――そは、ローエングリン!!」