二つの世界と二人と二匹 5
「何ですとっ!? この者たちが友人であると、仰っしゃられるか?」
すかさず、ヤークが両手を上げ、敵意がないことを示す。
アーネストの部下たちは、成り行きを見守っている。ヤークらが魔族でなく、真にダリアの友人ならば下手をしたら、国際問題になると判断したからだ。
フロッグは、どこから持って来たのか白旗をベロで振っている。
「オイラはヤーク――魔術師見習い。そして、このカエルがお師匠のフロッグ。こんな姿なのは、魔道師ローグに呪いをかけられたから。オイラたちは王女様の助っ人に、アンタらの魔族の問題を解決するためにやって来たのさ」
すらすらと嘘をつくヤーク。
半分は本当のことなので、問題はない――はず。
「何と、そうでしたかっ!? では、ヤーク殿とフロッグ殿も、姫様と共に出陣なさるのですなっ!」
ヤークとフロッグは、魔族と積極的に戦うつもりはない。が、行きがかり上、魔族との戦に参戦することになってしまった。
ダリアに目線で助けを求めるも、自業自得でしょという顔をされる。
しかし、アーネストの手のひら返しが凄い。
それだけ、魔族との戦が膠着しているのだろう。
「ま、任せといてよ?」
自信なさげにヤーク。
フロッグとダリアは呆れている。ギルモアは今は剣なので、しゃべってはいない。
「誰かジョアンナと、もう一頭を!」
気を利かせたアーネストが、ダリアの愛馬とヤークたちのための馬を用意させる。
アーネストたちは帰還したばかりなので、ダリアたちとは別行動となる。
ジョアンナは白い駿馬だった。名前から察するに、牝馬だろう。
ヤークは恐る恐る黒駒に乗り、ダリアの後ろをついて行く。
ギルモアは白いウサギの姿で、ダリアの肩に乗っている。ウサギと言っても、カーバンクルなので額には赤いルビーが嵌っていた。
暗闇の中の行軍は、ヤーカートを不安にさせた。相棒のフロッグは、特に動じていない。
そんな中、ギルモアが敵の姿を視認する。
「ダリア、敵だっ!」
「わかってる。ヤークとフロッグは後方に下がってて!」
月の光に浮かび上がった敵の正体は、牛頭のケンタウロスであった。
ミノタウロスとケンタウロスの融合魔獣、ミノケンタウロスである。
手に手に得物を持ったタウロスが数騎駆けてくる。
「行くわよ、ギル。第一攻撃形態〈ソードフィッシュ〉!」
ダリアの肩から跳躍したギルモアが瞬時に長剣へと変わり、王女の右手に収まる。
死んで行った兵士のために、魔族を狩り尽くす。
人馬一体の風は、ミノケンタウロスら目がけ、突進する。
ソードフィッシュ――何か響きが良いので剣の
攻撃形態として採用。調べたら、メカジキ
のことだった。
洋画のソードフィッシュは、ジョン・トラボルタ
とヒュー・ジャックマンとハル・ベリーが出てた。