二つの世界と二人と二匹 4
ダナン城の城門前には、後ろから敵の攻撃を受けた兵士の事切れた遺体があった。
念のためにダリアは首筋に指を当て、脈を量るが動かない。
苦悶の表情を浮かべていた兵士のまぶたを、王女は優しく閉じた。
「何て、ヒドい!」
兵士は背中を何か無骨な武器で、袈裟斬りにされていた。
フロッグは目を閉じて、黙祷する。
ヤークは目の前の惨状に憤りを隠せない。
「この世界では誰かが、魔族の手によって命を落とすことは珍しいことではないの」
悲しそうにダリアが言う。
その時、悲鳴を聴きつけてきたのか初老の兵士をリーダーとした集団が近づいて来た。
「アーネスト――伝令の兵士が死んだわ。誰の仕業?」
王女の声には怒りが含まれている。
「おそらく、ミノケンタウロスの仕業でしょう。斥候が、彼奴らを数体確認しております……」
「そう。この亡くなった兵士の遺族に、出来得る限りの便宜を図ってちょうだい」
「御意……」
片膝をつくアーネスト。肩には、兵士長の肩書きを示すエンブレムが付いている。
彼がふと、ヤークとフロッグが側にいることに気づく!
「魔族――こんなとこまで、入り込むとはっ!」
アーネストが抜剣し、ヤークに斬りかかる。
「ギルッ!」
ガキーン!
ティアラから剣へと姿を変えたギルモアと、アーネストの長剣が交差し、乾いた金属音を立てる。
「剣を引きなさい、アーネスト。彼らは、友人よ!」