二つの世界と二人と二匹 3
「彼の名は、ギルモア――寄生型進化獣、カーバンクルよ。大抵の物には、化けるわ」
ダリアの頭上のティアラは光を放ち、次の瞬間には彼女の右肩にカーバンクルと思しき生物が鎮座していた。
額にルビーの宝石を頂く、白いウサギ――それが不思議生物カーバンクルの印象だった。が、これはあくまで仮の姿であり、状況に応じて猫にも狼にも変身することができるらしい。
「いやぁ、驚いたぜ。ダリアに殺されそうになったくせに看病してやがるから、とんだマヌ――いや、お人好しがいたもんだと――」
((今、マヌケって言おうとした!!))
ギルモアのサプライズな登場シーンに驚かされ、マヌケとまで言われそうになったヤークとフロッグは、ギルモアに良い感情は持てなそうだった。
ダリアはクスリと笑い、
「ギルモアは口は悪いけど、態度もメチャクチャ悪いけど――どうしよう。良い所が見つからないわ――多分、良い奴よ!?」
不信感たっぷりのギルモアの評価に、疑心の目を向ける一人と一匹。
「コホン! あー、何だ。その、お前ら、ダリアを助けてくれてありがとな」
空咳しながら、カーバンクルのギルモアが礼を言う。
ツンデレ要素ありだな、とヤーク。
素直じゃないタイプか、とフロッグ。
悪い奴では、なさそうだ。
出会いは最悪だけど、最低じゃない。
ヤークはダリアに、この世界に来た事情を話し出した。
ヤークたち、ドリュアド一族が、魔道師ローグの呪いで、樹木状に変わってしまったこと。
選択肢として、ローグを殺すか時空を駆ける魔女レサルカを探し出し、呪いを解いてもらうかのどちらかということ。
「そう、魔道師ローグはあなたたちの世界にも、進出していたのね。私たちのダナン王国でも、魔道師ローグが魔族を解き放ったために日夜、戦っているの」
ダリアがため息をついた。
その時――
「ぎゃあああぁ!」
耳をつんざく絶叫が、ダナン城の城門近くで轟いたのだった!