二つの世界と二人と二匹 2
ダリアは攻撃を妨害したフロッグを視認する。
敵は一人では、なかったのだ。
巻きついたフロッグのベロから、何とか王女は剣を引き抜こうとする。
フロッグの舌は、かなり柔軟性があり、押しても引いても、その方向に力を逃がすよう、巧みにコントロールしていた。
「くっ! 放しなさい、この使い魔っ!」
思いっきり引っ張るダリアに、フロッグは意地悪な笑みを向け、悪魔的な素直さで、ベロを引き戻す。
「きゃあ!」
反動で尻もちをついたダリアは、そのまま頭を強打する。はずみで長剣は茂みの中へと飛んで行った。
「さて、ヤーク――この娘、どうしよう?」
しゃべるカエルは、困ったようにベロをひねった。
数分後――円形の大理石の噴水に寝かされていたダリアは、上半身を起こした。額からは、水で冷やしたタオルが滑り落ちる。
側には心配そうな顔のヤークと、使える使い魔が王女を見守っていた。
負けを察したダリアは、ひと息つく。
「してやられたわね。さぁ、殺せば!」
カエルと少年は、脱力する。
「あのね、お姫さん。オイラたちはアンタを、どうこうするつもりはないよ。ちょっと、話を聴いて欲しいだけなんだ」
ダリアはヤークのシャツの片袖が失くなっていることに気づいた。
どうやら、シャツを割いてタオル代わりにし、介抱してくれたらしい。
王女は自身の過ちを認め、頭を下げた。
「ごめんなさい。魔族との争いで、今、この国はピリピリしてるの」
「良いって。オイラたちも、フホー侵入して悪かったし」
頭があまり良くないヤーカート。
当然、王女みたいな高貴な人物と会話したことがないので、幾分変なしゃべり方となった。
ふと、ダリアが周囲をキョロキョロと見回す。
「ギルモアは? 私の剣は、どこ!?」
白刃の剣の名は、ギルモアらしい。
まるで、人の名前である。
ダリアの声に反応したのか、茂みから長剣が彼女目がけ襲いかかる!
「「危ないっ!」」
ヤークとフロッグが同時に叫ぶ。
白刃の長剣はダリアの頭部に刺さ――らずに、彼女の頭上を飾る銀色のティアラとなった。
「無事だったのね、ギルッ!」
「あたぼうよ!」
ティアラが明滅し、声が聴こえた。
「「どういうこと!?」」
ヤークは首を、フロッグは舌をひねった。
スマホ執筆で、バックアップ取れないので
短文掲載となります。




