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結果から書くと、別に丸く収まりはしなかった。
『深刻社』社員たちと俺の話し合いは、とりあえず問題の先延ばしという形で落ち着いた。落ち着いたと書くと、それも語弊を生みそうだが。
俺は当主としての学びをしてこなかったからテアマット家の管理もできないし、『深刻社』の経営に口を出すことも出来ない。なんだったら、どこかで不利益をもたらすかもしれないということを、極めて申し訳なさそうな口調で丁寧に語った。
だったら、そういう管理は問題を起こした兄に任せ、俺はその軌道修正を行う形で補佐、詰まる所、テアマット家の良心として動くという意思表明をしたわけだが、当然ながら、それで納得してくれる人と納得してくれない人は分かれる。
実利を取るか、信用を取るか、という話で、実際この場合に重要なのは信頼なのだろうと俺もわかっているつもりだ。兄貴のやらかしはそれほどに重く、だから俺は兄貴に全てを任せることにしたのだから。
一生を兄貴の補佐でい続けるつもりも毛頭ないので、今日の発言の何割かは嘘ということになるが、流石に数年経てば、兄貴も信頼を少しは取り戻しているだろうと考えての嘘。方便だ。
というか、俺があまり気にしてなかったせいで実感なかったと言うか、きちんと受け止められてなかったのだが、弟から婚約者寝取るって結構見ず知らずの相手からも嫌われる悪行らしい。
良識ある人が揃っているようで、社員の方々からかなり同情された。
学校の同級生を思い出して、やっぱり貴族って何気なく悪気なく性格悪いんだなと感じた。




